乗越たかおダンスマガジン評論集 【お試し版】 16
本書は2013年11月号から、2023年3月号までダンスマガジン誌(株式会社新書館発行 https://www.shinshokan.co.jp)に掲載された乗越たかおの舞踊評論をまとめた「集成版」のお試し版です。
1パックに評論が4本入って各300円とお値打ち価格で、気になる演目だけ読むのも可。第一弾は全21+1パックのラインナップで約10年間の流れがわかります。
※無断複写・転載を禁じます。この資料は、許可なく公開、書き換え、または再配布することはできません。
田中泯 『村のドン・キホーテ』
(初出 ダンスマガジン 2021年3月号 約1300字)
田中は自分のダンスを「場踊り」と呼び、演じる場所と観客との間に生まれるものだといっている。屋外や即興など様々な場所で踊ってきたが、舞台美術を組んだ「作品」として踊るのは久しぶりのことだ。
舞台上には直径3メートルの白い花輪が置かれ、おかめの面をつけた村の若者のような連中が四人でてきて棺桶を運ぶ。遠くから『グリーン・スリーブス』のかすかな歌声。馬の背に乗せられてきた老人(田中)は、白く伸びた髪と髭で杖にすがって立ち、棺の上に横たわる。女(石原淋)がやってきて、鳥が鳴くように「く、く、く、くる…… ど、ど、どこ!?」等と繰り返す。本作は、田中の盟友である編集工学者・松岡正剛が言語演出として関わっており、様々な発語が効果的に使われていた。
轟音とともに後ろの黒い幕が上がり、あばら家が現れると、
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