ルワンダ知るならまずこのnote〜生活・歴史・教育・ビジネス編〜
ルワンダ講座(概要)〜アフリカの中でもルワンダが注目される理由とは?〜
あなたがここにたどり着いたということは、「ルワンダ」という国について少なからず興味をお持ちだからだと思います。ルワンダについて、どんなイメージをお持ちですか?虐殺の起こった国、テクノロジーが発達している国、コーヒーが有名な国ーー。あるいは「ルワンダってそんな国なんだ!」と驚いた方もいるかもしれません。そんな方でも大丈夫。これさえ読めばあなたのお友達の誰よりもルワンダに詳しいレア人材になることが可能です(需要はさておき)。ではルワンダについて知る前に、まずはこの国が属する「アフリカ」という地域について見てみましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー著者:タケダノリヒロ (Africa Note Ltd. 代表, @NoReHero)
大手お菓子メーカー営業、青年海外協力隊での2年間のルワンダ派遣を経て同国で起業。スタディツアーやオンラインセミナーで約5000人にアフリカ・ルワンダの魅力や課題をお伝えしてきました。JICAルワンダ事務所でもNGOデスクコーディネーターとして勤務中。
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「アフリカ」という国はない
アジアやヨーロッパにある国のことはタイやフランスなどそれぞれの国名で呼ぶのに、アフリカのことは「アフリカ」とひとくくりに表現しがちですよね。それだけ日本人にとっては地理的にも精神的にも遠い地域なのでしょう。でも、「アフリカ」という国がないことはご存知のように、一カ国ずつが違った顔をもっているのです。
まず、アフリカについてよく語られるのが「サブサハラ・アフリカ」という地域(下図の緑色の地域)。
サハラ砂漠より南にある地域のことですね。地理的にも文化的にもヨーロッパに近く、比較的発展している北アフリカはここに含まれていません(スーダンは北アフリカ地域ですが、サブサハラ・アフリカに含まれます)。
サブサハラでは、話者数が多い言語はなく、小規模な言語が多数分布しています。多くの国では全土で通用する単一の民族言語が存在せず、旧宗主国の言語が共通語として使われています。しかしルワンダでは、ルワンダ語という共通で単一の言語があることが特徴のひとつとなっています。
画像出典:サブサハラアフリカ - Wikipedia
アフリカの別の区分では、東西南北と中部の5エリアに分けることもできます。
・北部(青)
・西部(緑)
・中部(ピンク)
・東部(オレンジ)
・南部(赤)
ルワンダが属しているのはオレンジ色の部分、東部アフリカですね(「東アフリカ」とも呼びます。でも「南アフリカ」って国があるから南部アフリカは「南部アフリカ」って呼ばなきゃややこしいですね)。
画像出典:Fichier:Régions d'Afrique.svg — Wikipédia
アフリカは近年「最後のフロンティア」とも呼ばれ経済成長を遂げてきていますが、そのなかでも豊かな国はどこか、ご存知ですか?
2018年のGDPランキングでは、1位ナイジェリア、2位南アフリカ、3位エジプトという順位になっています。ナイジェリアはアフリカ最大の人口2億人を誇り、世界でも7番目。南アフリカは、有望な新興国を表すBRICsの”s"として2011年4月に認められました(それまではBrazil, Russia, India, Chinaの4カ国で、複数形をあらわす”s”でした)。ルワンダは54カ国中34位。真ん中より少し下に位置しています。
【地理】不利な環境にある小国ルワンダ
GDP上位10カ国(左図ピンク色部分)を見てみると、そのほとんどが海に面している国だということがわかります。一方ルワンダ(左図青色部分)はまわりを他国に囲まれた内陸国です。沿岸部にあれば海の向こうにある他国との貿易もスムーズにできますが、内陸国は陸路で余計な輸送費がかかり輸出入の障壁となるのです。
ルワンダの国土は四国の約1.5倍。その中央にある首都キガリから各国境までは、車で4時間もあれば行けてしまうほど小さな国です。まわりはウガンダ(北)、タンザニア(東)、ブルンジ(南)、コンゴ民主共和国(西)に囲まれています。アフリカと言うと暑いイメージがありますが、ルワンダは標高が高いため年間通して20度前後。非常に過ごしやすい気候で、日本人のなかにはルワンダを「アフリカの軽井沢」という人も(「アフリカのスイス」とも呼ばれています)。
【歴史】100万人が亡くなったルワンダ虐殺
ルワンダでもっとも知られた出来事と言えば、1994年に起きたルワンダ虐殺(ジェノサイド)です。ツチ族とフツ族の民族対立に端を発し、100日間で約100万人(※諸説あり)が亡くなったと言われています。これによって国は壊滅的なダメージを受けましたが、現在では「アフリカの奇跡」と言われるほどの復興、経済発展を遂げています。
その立役者となったのが、RPF(Rwandan Patriotic Front, ルワンダ愛国戦線)を率いて争いを収めた現大統領のポール・カガメ氏。
独裁的と言われるほどのリーダーシップのもと、20年以上にわたって世界最速水準の高度経済成長(GDP年平均成長率約7%)を維持してきました。
いまでは虐殺という悲惨なできごとがあったことが嘘のように、平和な国になったルワンダ。世界経済フォーラムの実施した安全度ランキングではアフリカで1位(世界でも9位)となっています。
とは言え虐殺からはまだ20年余り。多くの国民が当事者であり、生存者であるため、その記憶を抱えたまま生きています。
ルワンダ虐殺の様子は、映画『ルワンダの涙』や『ホテル・ルワンダ』にも描かれていて、歴史理解の一助になるはずです。人間の残酷さに胸が苦しくなる作品ですが、ぜひご覧ください。
【経済】ITの力で知識基盤型経済へ
ルワンダのおもな輸出品はコーヒーと紅茶です。資源に関しては「3T」と呼ばれる鉱物(タンタル、錫、タングステン)が取れるものの、経済全体の5%程度に過ぎません。これらは土地に依存することになるので、内陸国で資源にも恵まれないルワンダには不向き。そこでルワンダはサービス業を中心とした「知識基盤型経済」への移行を目指しています。
現在最大の収入源となっているのが観光です。国際会議を誘致したり、世界的にも希少なマウンテンゴリラのトレッキングツアーで富裕層の観光客を招いたりして外貨を獲得しています。
ほかに注力しているのがIT分野です。「IT立国」を目指して、学校でひとりの子どもに1台のラップトップ(通称「100ドルPC」)を与える「One Laptop Per Child(OLPC)」などIT教育も推進されています。
ビジネスにおいてはドローンで輸血用の血液を運ぶZipline社を始め、ITの力で社会課題を解決するような取組が進められています。
画像出典: Zipline to start assembling drones in Rwanda
【社会】女性議員の割合世界一!言語、宗教、食事
ルワンダの特筆すべき点としては、国会議員に占める女性の割合が世界一(2018年は61.3%)であることが挙げられます。議員だけでなく会社や団体のリーダーとしても多くの女性が活躍しているのです。こういった状況が評価され、世界経済フォーラム(WEF)の発表している「男女格差(ジェンダーギャップ)指数ランキング」では常に世界トップクラス(2022は6位)。これらの背景にもやはり虐殺の影響があり、男性が多く亡くなったことにより、女性の社会進出を促進する機運が高まったと言われています。
公用語はなんと4つもあり、ルワンダ語、フランス語、英語、スワヒリ語が登録されています。ルワンダ語は母国語として日常的に使われており、フランス語はベルギーの植民地であった名残です。しかし2009年から英語が公用語に追加され、政府や教育機関でもおもに英語が使用されるようになりました。スワヒリ語は東アフリカ共同体の共通言語として2017年に追加されたもので、日常的にはそれほど使われてはいません。
宗教はキリスト教が9割以上(カトリック43.7%, プロテスタント37.7%, セブンスデー・アドベンチスト教会11.8%)で、無宗教2.5%、イスラム教2%, エホバの証人0.7%となっています(2012年)。
ルワンダの主食としては食用バナナ(プランテーン)、米、いも、豆、ウガリなどがよく食べられます。ウガリ(下写真)とはトウモロコシかキャッサバの粉をお湯で練ってお餅のようにしたものです。
手でこねて弾力を出して食べるのが一般的です。肉はヤギ肉や牛肉が比較的安く手に入り、豚肉、鶏肉が高価なのも日本と異なるところですね。
ルワンダ講座(生活)〜ルワンダの暮らしってどう?アフリカ=貧困?〜
多くの日本人が「アフリカ=貧しい」「貧しい=不幸せ」というイメージをもっているのではないでしょうか?実際のルワンダの暮らしはどうなのか、いっしょに見てみましょう。
平均月収3,000円で生きていけるの?
ルワンダでは貧富の差が激しいので平均月収の統計にはかなりばらつきがあり、4000円とする情報から13万円とする情報まで存在しています。タケダが約100軒の農村家庭で行った調査では約3000円という結果になりました。
「月に3000円では生きていけないのでは?」と思うかもしれませんが、ルワンダ(特に農村部)では自給自足や物々交換の習慣がまだ残っているため低収入でも暮らしていけるのです。とは言え低収入による弊害は、決して少なくはありません。
↑農村部の貧困家庭
↑農村部の中流家庭
暮らしに関する統計〜食、栄養、医療、保険〜
【食】食の安全と貧困に関する複数の分析によると、ルワンダ国民の81.3%は食の安全が保障されており、近年大幅に改善されました。しかし、残りの18.7%(467,000世帯)は食の安全が保障されていないことが課題となっています。
【栄養】保健省の統計によると、ルワンダの子どもの35%が発育不良。動物性タンパク質の摂取量の低さが原因とされています。ルワンダ人の卵の年間消費量は約13個。推奨消費量の年間一人当たり4.5kgをはるかに下回っています。5歳以下の子どもの貧血の割合が37%という課題も。ルワンダ政府は2024年までに発育不良の割合を19%まで減らすことを目標としています。
【医療】ルワンダでは、2026年ごろまでに各自治体に最低1つの診療所を設置することを目標としています。現在,国内2148の自治体のうち、診療所は831箇所(38.7%)に設置されています。
【保険】全国民に健康保険(mutuelles desanté)への加入が義務付けられています。保険料は収入に応じて段階的に変わり、最貧困層は無料、最富裕層はひとり8USドル。2014年時点で人口の90%以上がこの制度の対象となっています。
課題の多いライフライン
生活に直結するライフラインの整備も、ルワンダにおける課題のひとつです。
【水】ルワンダでは水へのアクセスがある状態を、都市部で200m、農村部で500m以内としており、この定義でのアクセス率は62%です。
しかし水道が引かれていない家庭も多く、有料の公共水栓や無料の保護湧水も多く利用されています。保護湧水は谷底にあり、ジェリカンと呼ばれるタンクを頭の上に載せて運ぶのは大抵子どもたちです。雨水を貯めて利用している家庭も多く存在しています。
【火】調理にガスを使っている家庭はまだ少数派。2018年の調査によると、都市部では65%が炭、26%が薪、5%がガスを利用。農村部では93%が木、6%が炭、ガスは0.2%しか利用されていません。
↑インバブラと呼ばれるかまど
しかし、薪燃料への依存により、1990年から2010年の間に、ルワンダの森林面積の37%が失われるなど環境への影響が拡大。バイオマスエネルギーなどの利用により、まきや木炭の使用量削減が目指されています。
【電気】ルワンダの電化率は51%(37%が送電網と接続、14%がオフグリッド)です。2024年までに100%にすることが目標となっています。しかし電気代が高いことも問題のひとつ。タケダ家では2人暮らしで月2500円ほど。日本の電気代とほとんど変わらないのではないでしょうか。そのため暗くなっても電気をつけない家庭や、あまり明るくないちいさな豆電球で過ごしている家庭も多いです。
ルワンダ講座(歴史)〜虐殺とは?背景と民族和解〜
ルワンダ虐殺とは?
1994年4月、フツ族とツチ族の民族対立に端を発するルワンダ虐殺(ジェノサイド)が発生しました。きっかけとなったのは、フツ族系大統領ハビャリマナ氏の飛行機が何者かに撃墜された事件。これを皮切りにツチ族に対する虐殺が開始されました。詳細な数字はわかっていませんが、約100日間で100万人ほどが亡くなったと言われています。この混乱に終止符を打ったのが、現大統領であるポール・カガメ氏率いるRPF(ルワンダ愛国戦線)でした。
ツチ族は「ゴキブリ(Inyenzi)」と呼ばれ残虐な暴力行為を受けただけではなく、強姦やトラウマ、障害といったあらゆる傷跡を国民と社会に残したのです。未成年の少女を含む25万〜50万の女性が強姦され、2000人〜5000人が妊娠させられました。また、ユニセフの調査によると、80%の子どもが家族の死を経験、70%の子どもが誰かが殺されたり危害を加えられるのを見た、90%の子どもが自分は死ぬと思っていたそうです。
ルワンダ虐殺の背景
虐殺が引き起こされた背景には、ドイツ、ベルギーによる植民地支配がありました。ルワンダは1899年からルワンダ・ウルンディとしてドイツに支配されます。ここでドイツはツチ族を優遇し、その下にフツ族を置く間接統治をおこなったのです。この間にフツ族は虐げられ、ツチ族に対する不平不満が溜まっていったと考えられます。
1919年からはベルギーが支配。1932年にIDカードが導入されて、両民族の区分が確立します(それまでは牧畜系のツチ族と農耕系のフツ族という違いはあったものの、両者に明確な区分はなかった)。第二次世界大戦後に各国で植民地からの独立の気運が高まり、ベルギーは独立を求めていたツチ族よりもフツ族を支持するようになります。
その後フツ系政権が誕生して、ツチ族への迫害が行われるようになりました。1980年代にはツチ難民は60万人に。その難民たちがウガンダで組織した反政府勢力がRPF(ルワンダ愛国戦線)で、1990年からルワンダ政府とRPFの間で内戦が勃発。1994年4月に大統領機が撃墜され、虐殺につながっていきました。虐殺を主導したのは、与党MRND(開発国民革命運動)のインテラハムウェと呼ばれる民兵組織です。多くの市民が虐殺に駆り立てられた背景には、ラジオや雑誌によるプロパガンダの影響や、経済状況悪化による失業率増加、人口増加による土地を巡る対立、食糧不足などが指摘されています。
ルワンダ虐殺からの復興・民族和解
虐殺によってルワンダは壊滅的な被害を受けましたが、復興のためのさまざまな取組みがおこなわれてきました。その代表的なものがガチャチャ裁判です。「ガチャチャ」は「草」、つまり草の根、地域共同体でおこなう裁判という意味です。当時1万人ほどしか収容できない刑務所に10万人以上の虐殺容疑者が詰め込まれており、劣悪な環境のために数千人の死亡者が出る事態となりました。そこで裁判を迅速におこなうための措置としてガチャチャ裁判が取り入れられたのです。2001年から2012年の間に全国で約100万人が裁かれました。
分断された民族が融和するために設けられた「和解の村」という場所が、全国に8箇所あります。ここでは、虐殺の加害者と被害者の家が隣り合うように作られました。全国統一和解委員会の発表した「和解指数」は、2010年82.3%から2015年92.5%に。自分の家族を殺害した人とともに暮らしていくことはとても受け入れがたい現実のように思われますが、表面上は和解が進んでいるように見えます。このような悲劇を二度と繰り返さないための教育と、国民の心のケアは今後もルワンダにとって大きな課題であり続けることでしょう。
【参考】
・ルワンダ虐殺 - Wikipedia
・論考:ガチャチャ裁判が命じた賠償をめぐる当事者の交渉――ルワンダ・ジェノサイドに関連する罪の赦しと和解―― - ジェトロ・アジア経済研究所
・大虐殺から25年、和解へ歩み=被害者と加害者共生の村-80万人犠牲のルワンダ 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
・隣人は家族のかたき、大虐殺から20年 ルワンダ 和解への道 写真14枚 国際ニュース:AFPBB News
ルワンダ講座(教育)〜現状と課題〜
ルワンダの学校ってどんなところ?
ルワンダの教育システムは、日本とおなじく6-3-3-4制です。
小学校6年間と中学校3年間が義務教育となっており、公立校であれば学費は無償。日本との違いは、中学と高校が「セカンダリースクール(Secondary School)」としてひとくくりになっているところですね。
2018年のデータでは、全国の学習者が360万人、職員9.5万人、学校数は1.3万校となっています。就学率は4~6歳(幼稚園)で31.8%、7~12歳(小学校)で98.6%、13~18歳(中高)で72.4%、19~23歳(大学)で9.8%となっています。
特筆すべき科目は「One Laptop Per Child(OLPC)」でしょう。「ひとりのこどもに1台のラップトップを」という政策で、もとはアメリカのNPOが始めた取組みです。「IT立国」を目指してIT教育を推進しているルワンダでは、2007年から導入されています。
↑OLPCが描かれた500ルワンダ・フラン札
ルワンダ教育の課題
高等教育の就学率はまだまだ低いですが、小学校に関してはほぼ100%の子どもが学校に通うことができている状態です。しかし「修了率」では67%となっているので、3割以上の子どもたちが卒業できていないことになります。「学費は無償なのにどうして?」と思ってしまいますが、ペンやノート、制服などの学用品にはお金がかかるのです。そのため収入の低い家庭では、子どもたちが通学を諦めざるを得ないという課題が残っています。
その他の課題としては、教師の待遇および質と人数の向上があげられます。ルワンダの公立小学校で導入されている制度が「ダブルシフト制」です(2021/2022年度に廃止されました!)。教室数・教師数に対して生徒数が多すぎるため、午前と午後の二部に分けて授業をしているのです。午前の生徒たちは朝7時過ぎに登校して12時前に下校、午後の生徒たちは12時過ぎに登校して17時に下校します。そのため先生は朝早くから夕方まで授業をしなければなりませんが、ルワンダにおける教師の給料は必ずしも高くありません。それによって教師のモチベーションや質の低下という問題が起こっているのです。
さらには教科書が足りないため先生が黒板に書いたものをただただノートに書き写すための時間があったり、トイレの衛生面やプライバシーが確保されていなかったりと、環境面の課題も多く残っています。
しかし2019年には3000以上の教室増築、約12億円をかけた教室、トイレ、洗面所の建設、世界銀行による教育部門への200億円の投入、教師の給与10%アップといった改善がなされました。今後も教育環境の改善が期待されます。
ルワンダ講座(ビジネス)〜「アフリカの奇跡」これまでとこれから〜
不利な要素の多いルワンダ
ルワンダは2018年のGDPランキングでは、アフリカ54カ国中34位。決して経済的に豊かな国ではありません。その背景には、内陸国で貿易に不利だということ、資源が少ないこと、それゆえに国民の購買力が低く人口も少ないため市場自体も小さいことなどが挙げられます。
毎年7%前後の経済成長!
そんな不利な環境にある当国ですが、虐殺以降は毎年7%前後の経済成長を遂げています。
その成長を牽引してきたのは紅茶とコーヒー。輸出収入の1割ほどを占めています。それ以外に外貨獲得に貢献しているのは、近年伸びてきている観光や鉱物資源です。しかしながら、現在でも国際援助への依存度が大きいことが懸念となっており、国内の産業強化が課題となっています。
知識基盤型社会とは?
そこでキーワードとなるのが「知識基盤型社会(Knowledge Based Society)」。これまでのように一次産業に頼っていては国を大きく発展させるのが難しいので、知識・情報・技術などによって経済を成長させていこうという考え方です。そこで特に重視されている分野が観光とIT。
ルワンダは「MICE戦略」を採用しています。MICEとは、Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行)、Convention / Conference(大会・学会・国際会議)、Exhibition /Event(展示会)の略。国際会議を開催することによって他国・他地域から人を呼び込む戦略のことです。これによってキガリは国際会議の開催数がアフリカで2番目に多い都市となっています(1位は南アフリカのケープタウン)。
旅行においてはマウンテンゴリラの観察ができるトレッキングツアーや、BIG5(ライオン、ヒョウ、サイ、ゾウ、バッファロー)の揃うアカゲラ国立公園のサファリなど、豊かな自然を活かしたアクティビティが人気です。
ITに関しても成長が見込まれています。日本のJICAなども支援している起業家育成施設、kLabやFABLABでは、若手起業家たちが日々研鑽を積んでいます。
現在首都キガリ市内のバスに導入されている決済システム「Tap & Go」も、kLab出身のACグループによって開発されました。他にも、以下のようなIT関連サービスが誕生、普及してきています。
【ルワンダの主なIT関連サービス】
・Tap & Go カード:バスカード。ルワンダ版Suica
・vuba vuba:ルワンダ版Uber Eats
・H Mart:商品配送サービス。運営会社は日本のDMMが買収したDMM.HeHe。
・YEGO CABS:電話によるタクシー配車サービス
・MOVE:フォルクスワーゲンの配車サービス。ルワンダ版Uber
・Mara Phone:アフリカ初の国産スマホ。製造会社はUAEのMara Corporationで、ルワンダに工場あり。
・Mobile Money(Airtel Money):各通信会社が展開している携帯電話を利用した送金システム。ケニアでは「M-Pesa」と呼ばれている。
・zipline:ドローンによる血液輸送システム。米国企業が母体。
・Charis UAS:ルワンダ発のドローン企業。マラリア予防薬の散布など。
しかしこれらのほとんどがまだ、スマートフォンをもつ一部の富裕層や外国人しか利用できない状態に留まっています。そのため高価値、高品質なサービスであっても顧客が少なく収益化が困難で、経営維持が難しいのが「IT立国」ルワンダの現状です。経済全体を底上げし、2050年までに高所得国の仲間入りをすることが目標とされています。
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このnoteは当社スタディツアー(START、オンラインSTART)の教科書として作成した文書を一般公開したものです。ここでは各カテゴリについて、さわりの部分だけざっくりご説明しましたが、スタディツアーでは私が現地で直接聞いたルワンダ人の声や、肌で感じた体験、文章には描けない裏側などをお伝えしています。
このnoteを読んで「もっと詳しく知りたい!」と思っていただけた方は、当社のツアーに参加いただければうれしいです。それから、もしサポートをいただけるようなことがあれば、ルワンダの大地に花が咲き、空を小鳥が舞い踊ります。感想や疑問などあれば、ツイッターで@norehero までお気軽にお寄せください(シェアも大歓迎)!最後までお読みいただきありがとうございました!