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そのコラボ、足し算になってない?

「コラボしました!」

などと言いながら、コラボレ―ションと呼ぶに値しない取り組みになっていないでしょうか。2社や3社で意気投合しながら、ただの足し算になってはいませんか。

これは自戒を込めて言うのですが、真のコラボレーションとは「お互いの一番いいところを掛け合わせること」だと思うのです。足し算ではなく、掛け算。

お互いの足りない部分を補い合うことで、1社では生み出せなかった付加価値を生み出すこと。そこまで実現できて、初めてコラボレ―ションと胸を張って言えるのではないかと。

その意味で、最近「これぞコラボだなあ」と思ったのが、BYGGLEK(ビッグレク)という商品です。



これは組み立て家具販売大手の IKEA が販売している LEGO の収納ボックス。

一見すると何の変哲もない白い箱ですが、一番の特長はフタにいくつもの突起がついていること。ここに LEGO ブロックをくっつけることで、ただの箱の天面が「ディスプレイできるステージ」になるんですね。

詳しくはこちらの動画をご覧ください。




「自分だったら何を作ろうかな」って考えちゃいますよね。

ステージに何を飾るか考えるのも楽しいですし、中に何が入ってるかを示すタイトルのようなものを LEGO で作るのも楽しいです。

そう、「フタにタイトルをつけられる」という点を考えれば、中身は LEGO じゃなくてもいいわけです。

実際、LEGO の公式インスタグラムでは、フタに「TEA」とブロックで書いて、ティーバッグ入れにする例を紹介しています。アイデアが広がりますよね。


▲3枚目の写真をご覧ください



個人的に今回のコラボレーションが素晴らしいなと思ったのは「IKEAで販売している」という点です。

LEGO ショップで実際に販売しているかどうかは未確認ですが、たとえ LEGO ショップで販売したとしても、あまり売れない気がするんです。というより、あんまり売ってほしくない。

なぜなら LEGO というのは夢の世界だからです。妄想を拡張していって、自分だけの世界を創り出せる夢のフィールドで、子供たちにとって無限大であるはずです。

そんなワクワク感に包まれている中で「この箱で片づけられるよ」なんて言われたら興ざめじゃないですか。水を差された気分になって、あんまりいい気はしません。「制限」を感じさせないでほしい。

その点、「暮らしを良くしたい」というマインドで出かける IKEA でこの商品を見つけたら「そうそう、LEGO って散らかるんだよな」と気づかされ、「これなら片づくし、片づけるのが楽しくなりそう」とポジティブにとらえられる。

実際、LEGO って散らかりますからね。部屋に落ちているのを足の裏で踏んでこそ LEGO みたいなところもありますし。

(そういえば映画『マイ・インターン』で、アン・ハサウェイの家に来たロバート・デニーロに「落ちてるレゴに注意して」と話しかけるシーンもありました)


LEGO の文脈で売るのではなく、IKEA の文脈で売る。ここがこの企画の肝ですし、だからこそ真のコラボレーションだと思うわけです。

デンマークの LEGO と、スウェーデンの IKEA。ありそうでなかった北欧の国同士の満を持した取り組みに、改めて「コラボレーションとは何か」を気づかされました。

2社どころか3社、4社を巻き込んで企画の規模や期待感をふくらませる取り組みが珍しくなくなった昨今。「ただの足し算になっていないか」と日々点検したいものです。


この note は下記の Podcast 書き起こしを受けて執筆しました▼


【松岡厚志 PROFILE】

ハイモジモジ代表。書類収納の決定版「WORKERS'BOX」ほか、思わず膝を打つアイデア・プロダクトを発信している。フリーライター、ネーム・デザイナー(ネーミングの専門家)、モノづくりするラジオ局「Quest FM」のDJ Atsushi、御茶の水美術専門学校非常勤講師などの顔を持つ。

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