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フィンランド・ヴァーサ周辺の旅--フィンランドのスウェーデン語と日本庭園

2023年8月上旬にフィンランドを旅行してきた。

22:39 ストックホルム発ウメオ(Umeå)行の夜行
コンパートメント内。2段ベッド。右端にトイレ・シャワーあり。

翌朝8時、ウメオ到着。そして12:00、船に乗ってフィンランドへ!

ウメオのターミナルにて

4時間の船旅のあと、着いたのはフィンランドのヴァーサ(Vaasa)。

1)フィンランドのスウェーデン語の発音

ヴァーサ周辺はフィンランドでスウェーデン語話者の多い地域。
実は同様の別の地域に行ったことがあり、その時は「それほどスウェーデン語は通じないな」と思ったので、ヴァーサもそうかと思いきや。
通じます、通じます! 若い人でも普通にスウェーデン語を話してます。おお~。

耳に心地よい Finlandssvenska(フィンランドのスウェーデン語)。夫は語彙の違いを見つけて喜び、私は発音の違いが楽しかった。

ヴァーサには4泊し、レンタカーであちこち回った。
昔の建物を保存している、ミニ・スカンセンともいうべき屋外博物館Stundars(ストゥンダルス) にも行ってみた。

古い建物を移築・保存している。
古い住宅の内部。写真を撮ろうとしたら、どこからともなく猫がやってきて、ベッドの上に鎮座。あとでガイドさんに聞くと、近所の猫だがこの博物館のアイドルになっているらしい。
サウナ本翻訳中だった私の関心事はスモークサウナ。煙突は向こうの建物のもので、スモークサウナ小屋には煙突はない。
スモークサウナの内部。煤で壁は黒い。排煙口以外の窓がないので暗い。暖炉の熾火が照明代わりだったんだろうな。

民族衣装を着たガイドさんに「ヂュールがなんとかかんとか…」と言われ、とっさには意味がわからず、数秒後に気づいた。Djur のことだ! 「この辺の動物は…」とガイドさんは話しているのだ。
スウェーデンのスウェーデン語だと djur は「ユール」に聞こえる。でも綴りが示すとおり、昔は「ヂュール」と発音されていたのだろう。

ガイドさんの数字の70も聞き取りやすい。ストックホルムでは sjuttio を「フッティオ」と発音する人が多く、私は40とよく聞き間違える。40は fyrtio と綴り、私の耳には「フッティオ」とか「フォッティオ」に聞こえる。
ちなみにストックホルムでは「アッパーミドルクラスと北部出身者は70 sjuttio をシュッティオと発音する」と言われている。古い発音を維持しているからだ。フィンランドのスウェーデン語話者のあいだでも、もちろん。

ふたつのスウェーデン語の発音の違い、語彙の違いを書き出すとキリがないのでこの辺で。文学に詳しい人によると、現代フィンランドのスウェーデン語文学には、本家スウェーデンのスウェーデン語には残っていない古い表現が散見され、優雅に聞こえるそうだ。

私たちが旅行中に接するのはもっぱらサービス業の人たち。そこで感じたのは「フィンランド語、スウェーデン語、英語が話せないと就職できないんだな」ということ。移住してきた人はたいへんだ。私なんか1言語学習するだけでヒーヒーなのに……。

2)個人がつくった日本庭園

Kristinestad の観光ウェブサイトを見ていた夫が、「個人で日本庭園をつくった人がいるらしいよ。夏は公開しているから行ってみよう」ということでドライブの途中にお邪魔した。

自宅のお庭を日本庭園風にしたのは Gösta Sjöqvist(ヨスタ・シェークヴィスト)さん。
私たちがお庭でパシャパシャ写真を撮っていると、家の中から出てきて「庭を案内するよ。フィンランド語、スウェーデン語、英語のどれがいい?」

池と金閣寺
この金閣寺も手づくり。
禅モチーフの庭。
この富士山はときどき噴火するらしい。頂上に焼けた炭があった。ヨスタさんの遊び心。
桜の木もある。

ヨスタさんは現在87歳で、20年前から日本庭園をつくりはじめたそう。木製品はすべて手づくり。しかも日本に行ったことはなく、写真を見ながら製作したとのこと。日本人の庭師さんが造園したわけではないので、ちょっとヘンな感じはするが、それでも個人が想像力を駆使して楽しみながらつくった庭ならではの味わいがある。

鳥居もあります。

ところでみなさん、この鳥居にかかっている文字が読めるだろうか?
私はなんとヨスタさん本人に、「この文字の意味はなに?」と聞かれました! えっ、ご自分で鳥居を建てたのに、知らなかったの?
「木材もこのサインも買ってきたもの」だそうだ。

「え~と、最初の文字は『清い』ってことですね。ふたつめは……わかりません」
とヨスタさんには伝えたのだが、あとから後者の文字はフィンランドの漢字表記かな、という気がしてきた。

さらに後日、英語翻訳者の友人から
「このことかな? "清芬":清らかに香り高いさま。フィンランドの中国語表記とかけているのかも。
https://kotobank.jp/word/%E6%B8%85%E8%8A%AC-2054661
と教えてもらった。
な、なるほど、そうかも!

ヨスタさんの奥さんは2年ほど前に亡くなったそう。60代から庭を日本風に改造していく夫を暖かく見守っていたのだろうな。
庭の様子を正確に伝えると、日本風だけでなく、イタリア風、ノルウェー・ロフォーテン諸島風の一角もあるし、バーベキューができる小屋もある。お子さんやお孫さんとも楽しい時間を過ごせたことだろう。定年退職後の趣味としては理想的ではないか。

庭のテーブルにはゲストブックがあり、その記載によると2,3日に1組は訪問客がいるようだ。
私が日本人でふたりめの訪問客らしい。
次に訪問された方は、ヨスタさんに「清芬」の意味を教えてあげてください。

おまけ 地元テレビ局のインタビューの様子が YouTube にありました。
5分42秒ごろから。


(文責:羽根 由









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