フィンランドの夏至祭の過ごし方

        (リンゴの木のそばで赤スグリを摘む次男)

 夏です、白夜の季節です!

 フィンランドのみならず、北欧では冬至が過ぎて、一日数分ずつ日が長くなると夏を心待ちにする人が増えます。春分の3月の頃には南部ではかなり雪も解け、来る春を予感させますし、4,5月には新緑が芽吹き、毎日のように草花の成長はもう目を見張る程、北国の短くいい季節を目いっぱい享受しようとしているのが感じられます。

       (サウナのある湖畔のサマーコテージ)

 この季節になるとアウトドア派もさらに活発に。もともと寒い冬でも家の中に閉じこもらず、新鮮な空気を吸いにしっかり着込んで散歩に出たり、クロスカントリーやウィンタースポーツに興じる人たちですから夏はその活発度が更に増します。フィンランドはサウナ(saunaはフィンランド語なのです、ご存知でしたか?)の戸数が国民一人当たりでも、世界はもとより北欧でももっとも高い国です。他の北欧でもたとえばホテルやプールなどにサウナが併設されていたりしますが、フィンランド人ほど「サウナがないと」という愛、いや強迫観念は無いように感じます。自宅にサウナは当たり前、企業の最上階にも来客もてなし用のサウナと、社員用のサウナがあるのも普通ですし、例えば息子の高校にもジム+サウナがあります。

           (サウナの内部)

 フィンランド人が夢見る夏の生活は、仕事などを終えプライベートにしっかり切り替えること。従って法律で定めらた4週間の休みをきっちりとり、できれば人里離れた湖畔のコテージで毎日自然とたわむれます。具体的にはボートを漕いだり、魚釣りをしたり、薪を割ってその薪でストーブを熱して一日の疲れを薪ストーブのサウナで汗をかいてじっくり取る。熱くなったら裸で湖にドボンと飛び込み、という事を繰り返し(ビールもつきものですが)静寂さと一体となり、真夜中に沈むかどうかのぎりぎりのやわらかな太陽光を楽しみつつ波にたゆたって空を見上げる。こんなところでしょうか。

      (真夏の夕日。これは夏至を過ぎた23時頃のもの)

 夏至祭はもっとも日が長くなる頃で、今年は6月21日(金)~23日(日)がその週末に当たります。ラップランドでは陽が沈まない本当の白夜となりますが、南部ではさすがに夜中過ぎはぼんやり薄暗い感じです。この週末は特に木曜ぐらいから街中はもぬけの空となり、家族の、もしくは親戚か友人のサマーコテージにおよばれして、リラックスした週末を過ごします。

ブルーベリー(正確にはブルーベリーの原種で、ビルベリーと言います)

 この頃にはフィンランドの露地栽培のイチゴも旬を迎えるので、不ぞろいながらも真っ赤に熟したイチゴを、指を赤く染めてつまむのは毎年格別の美味しさです(日本で売られる美しく包装されたイチゴたちより絶対美味しいと私も断言します!)。新じゃがも最高の風味で、一番いいのはその日の朝堀りたてで指でこすれば皮がはがれるほど、新鮮な土付きを市場で買って、バケツに水を入れ、ジャガイモブラシでこすって泥をおとし、塩とディル(魚料理にもよく使われるハーブ。これを一束どーんと使います)を入れた鍋で茹でます。素材の味を楽しむのはこういう事かとしみじみ思える味の良さです。じゃがいもに、この季節ならではの天然の鮭に塩をして薄くスライスした刺身に近いものを添えれば夏らしいフィンランドの食事の出来上がり。パンはライ麦と、ブラウン・シロップ入りのアーキぺラーゴ(群島)地域のパンというものがあり、魚料理によく供されるのが定番です。アウトドアを楽しみ、自然の恵みでおなかを満たし、夜はじっくり熱したサウナに入り、暑くなったら泳いで汗を流し、またサウナへと、数回繰り返せば、もうぐっすり眠れる事間違いなし。

 ただ、大人はお酒に飲まれちゃう人が多いので、クリスマスや夏至といった年間行事の頃にはアルコール飲料の売り上げがかなりのものですし、休み明けに仕事に出てこない(来られない?)人も増えるように思うのは私だけではないでしょう。これがなければとってもいい人たちなのですが...

     (湖畔で魚釣りをする夫と小さかった息子たち)

 また、夏至には悪霊を遠ざける意味があるようで1800年代後半にかけて徐々に各地に広まったかがり火が各地で水辺に焚かれます(※全国ではありません。)。

 子どもたちは6月初めから2か月半の夏休みを多かれ少なかれこのような環境で過ごします。年度をまたぐ休みなので、宿題もありません。成績表を貰う時に先生から「本をたくさん読みなさいね!」と言われてそんな事をすっかり忘れて過ごす夏は最高だろうなとおもいます。親は大変ですが、こうしてしっかり充電してまた8月半ばの学校に戻っていくのです。

(セルボ貴子)

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 セルボさんの記事を読みながら、「フィンランドの夏至祭ではメイポールを立て、その周りでダンスをしないのね!」とか「かがり火は、スウェーデンではヴァルボリ(4月30日)の象徴だなあ」など、バルト海両岸での違いを感じました。アルコールの消費量は同じかもしれませんが……。
 来週は、多言語で原書を読む数学教授、服部久美子さんがスウェーデン語で本を読みはじめたきっかけをお話しします。どうぞお楽しみに! 
(羽根)


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