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ヴァランダー警部のイースタ

 ヘニング・マンケルの警部ヴァランダー・シリーズは、日本での北欧ミステリー・ブームの火付け役ともいえるでしょう。本格ミステリーとは言えないのですが、主人公の心理と市民の目線で見た社会問題がみごとに描かれています。ヴァランダー警部はごく普通の中年男性。不摂生がたたって糖尿病持ちです。自分の老いに対する不安、時代に取り残されるのではないかという不安が繰り返し描かれています。それでも警部としては優秀です。警部42歳から始まるシリーズの中で、認知症の父親や反抗的な娘との関係、そして遠くにいながら互いに惹かれあうリトアニアの女性バイバとの関係がそれぞれのペースで発展していき、シリーズ最終巻の『苦悩する男』に至ります。『苦悩する男』はこれまでほかのミステリーにみられなかった終わり方をしますが(先に最終巻を読まないで!)、私はマンケルらしくて好きです。

 物語の舞台となるイースタ(Ystad)を、2013年9月にスウェーデン在住の友人に案内してもらいました。スウェーデン第2の都市マルメから電車で50分のところにあります。その時に撮った写真でイースタをご案内したいと思います。物語の中でヴァランダーはマリア通り10番に住んでいて、フリードルフ・カフェによく立ち寄りますが、どちらも実在します。

 

画像1ヴァランダーが住んだとされるマリア通り10番


画像2ヴァランダーが仲間とよく立ち寄るフリードルフ・カフェ。イースタの駅前の広場にあります。

画像3店内の様子です。ケーキ、飲み物のほかに軽食もとれます。

画像4ここで「カエル (groda)」という名前のケーキをいただきました。

画像5カフェにはシリーズで時系列として最後になる作品『苦悩する男』の映画のポスターもありました。

画像6イースタの静かな住宅街です。訪れたのは9月の日曜日でした。夏の観光客は去ったあとで、日曜日のため店もほとんど閉っていて、落ち着いて散策ができました。

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画像9こんな可愛らしい平和な町で12巻分の殺人事件が起こるなんて想像できませんね。

画像10 古いレンガのたてものにサブウェイが入っていました。

画像11イースタの駅です。電車の本数が少ないので、最初に帰りの時間を決めておきました。

画像12駅のすぐ裏はフェリー発着所です。スウェーデンの南端でバルト海に面していることから、イースタ経由で多くの外国人労働者が入国します。外国人労働者は第1巻『顔のない殺人者』の主要テーマのひとつになっています。

 警部ヴァランダー・シリーズは、少なくとも35言語(Wikipedia)に翻訳され、日本でも柳沢由実子訳で創元推理文庫から出版されています。


(文責:服部久美子

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