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ノルディックトークスジャパン 「民主主義をより平等に:女性の政治的エンパワーメント」

北欧諸国が何十年にもわたりジェンダー平等を推進してきたのは、健全な政府による政策の策定、雇用、家庭の福祉に寄与し、より強固なビジネスの醸成になるからです。政治の場において男女平等を達成することは、平等な社会を形成し、民主主義を真に機能させることにもあります。若い世代の参加も重要です。

日本、北欧、そして世界中でよりジェンダー平等な民主主義が機能するために、私たちは何をすべきなのでしょうか?

このテーマを深堀するために、日本と北欧、それぞれの地でこのテーマに第一線で取り組むスピーカーをお招きして、2022年4月7日ノルディックトークスジャパン「民主主義をより平等に:女性の政治的エンパワーメント」を開催。会場は、パートナーであるUNIVERSITY of CREATIVITYの施設で、Mandalaと呼ばれる円形でコルク状のユニークな空間。現地、オンライン合わせ200人以上に参加いただきました。

※写真は全てNordic Talks Japan / UNIVERSITY of CREATIVITY より提供

開会の挨拶:駐日アイスランド大使より


開会にあたり、まずステファン・ホイクル・ヨハンソン駐日アイスランド大使が挨拶。挨拶の中で大使は、ジェンダー平等は人権であり、SDGsの達成に必要不可欠であることを強調。続いて登壇者が紹介され、対話が始まりました。

セッション1 日本の政治とジェンダー平等の状況


セッション1には、宮路拓馬内閣府大臣政務官が登壇。モデレーター役のPIVOTチーフグローバルエディター、竹下隆一郎氏が、日本の政治とジェンダー平等の状況について同氏に聞きました。

日本の女性議員の割合は、先進国の半数以下

竹下:日本の政治現場でジェンダー平等が実現しない理由は何故でしょうか?課題は?

宮路:議会で女性議員が占める比率は、日本では衆、参、地方ともに14%前後と、欧米の半数以下。これは、現状の政治の仕組みが家庭との両立が難しい、また政治は男性が行うものというステレオタイプが健在しているからでしょう。女性議員は、ハラスメントを受けたり足を引っ張られる現状もあります。

平成30年には政治分野での男女共同参画を目指す法律が超党派の取り組みの結果として成立したが、現状では仏作って魂入れずの状態です。

フェムテック議連:よりフェアな状態へ

女性は、女性特有の生理や更年期、妊娠出産に関わる体調の変化などで、身体的にフル稼働できる日や時期が限られているというデータを見て、衝撃を受けたのが、フェムテック議連を立ち上げたきっかけです。フェムテック議連では、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決できるように規制緩和等に取り組むことで、よりフェアな社会、政治現場を作っていこうというのが狙い。機会の平等は既に与えられているという認識が憚っていますが、実はそうではありません。

ダイバーシティはイノベーションの源泉

竹下:大使が開会の挨拶で指摘した通り、私はジェンダー平等は基本的人権であるのでメリットがあろうが無かろうが達成しなければならないと考えています。一方で、ジェンダー平等を実現することでイノベーションを起こしやすい社会になるといった、戦略的な側面もあるともいえます。ジェンダー平等を達成することで、どのような社会が実現すると考えるか?

宮路:まさに仰る通りだと思います。イノベーションの源泉はダイバーシティにあることは、紛れもない事実です。超人口減少社会でどう国力を保持するかを考えた時に、日本に最も欠けているのが、ダイバーシティです。多様性がない社会には、イノベーションが起きづらい。海外から人や投資を呼び込みたいですが、閉鎖的で画一的な社会に誰が魅力を感じるでしょうか。人権問題として当然である上に、社会経済的な意味でも、ジェンダー平等は日本にこそ最も求められています。

若い政治家を意識は変わりつつある

竹下:あまり世代論にはしたくないのですが、若い世代の政治家の意識は変わってきて今ますか

宮路:私と同世代の政治家の意識は、確実に変わってきています。加えて、有権者、社会の意識も変わってきていると感じています。例えば、私は最も伝統的な価値観が色濃く残る地域の一つ、鹿児島から当選していますが、妻は東京で働いているため選挙には一切関わっていません。また自民党候補ならば政治、外交、経済の政策を訴えるべきと仰る支援者もいる中で、フェムテックを第一に掲げて当選したこと自体が、社会の意識が変わりつつあることの証拠の一つだと思っています。

霞ヶ関の職員を啓蒙していきたい

竹下:最後に、ジェンダー平等実現に向けてこれからどのようなアクションを起こしていこうと考えているか、お聞かせください。

宮路:現在、政府の一員としてこの課題に取り組める立場にいます。まずは直近、内閣府の新人研修の場で、新入職員全員に、フェムテックの話をします。。そこからひいては管理職、霞ヶ関全体も啓蒙していきたいと考えています。

セッション2 北欧のジェンダー平等への軌跡

セッション2では、オンラインでアイスランドからハンナ・ビルナ・クリスチャンスドッティル氏(レイキャビックグローバルフォーラム議長、UN Women上級アドバイザー、元レイキャビク市長、元アイスランド内務大臣、以下ハンナ)と、スウェーデンからアイーダ・ハジアリッチ氏(スウェーデンの地方議会(財政委員会の社会民主党リーダー)議員で元高校教育・職業訓練校担当大臣(2014-2016年、当時最年少で大臣就任)、以下アイーダ)を迎え、北欧における女性の社会進出の軌跡をたどるとともに、今の日本への助言をいただきました。

ジェンダー平等は自然発生的には達成できない

竹下:政治の世界でジェンダー平等を達成するために最も大切な要素は何だと思いますか?

ハンナ:統計を見ると、政治とリーダーシップの分野でギャップが最も大きいことが明らかです。国会議員の女性比率は25%前後ですが国家元首となると7%に下がります。世界の93%の国、そして90%以上の大企業は、男性がリーダーシップを持っています。ジェンダー平等は自然に任せておけば達成されるものではなく、意思決定の問題です。だから私は、セッション1で政務官がジェンダー平等に対して「解決されなければならない問題がある」という認識を示したことを非常に嬉しく思っています。

アイーダ:国会議員の数がジェンダー平等にならない限り、真の民主主義は達成できないことを声高に訴える必要があります。北欧の小国であるスウェーデンが経済成長を続けグローバルプレーヤーでいられる大きな理由の一つが、ジェンダーに関わらず全ての人口を貴重な人材、労働力として捉えているからです。スウェーデンでのベストプラクティスを一つ紹介するとしたら、スウェーデンではいくつかの政党が30年前に、候補者リストをジェンダー平等にすると決めたことです。私が所属する党は具体的に、候補者のジェンダー比率を完全に1:1にすると決めたのです。これが今では全ての政党に普遍的な基準となっています。育児休暇も、男女ともに受け入けられています。また、各政策がジェンダー平等にどのようなインパクトを与えるかという観点からの検証も行うフェミニスト政治、フェミニスト外交、フェミニスト予算という言葉もあります。

ただ、ハンナが指摘するように、スウェーデンも決してジェンダー平等を完全に成し遂げた訳ではありません。政治や民主主義の観点ではよくやっていますが、ビジネス界では、例えば取締役会におけるジェンダー平等達成など、課題はたくさんあります。マネージメントクラスでジェンダー平等が達成されていればいるほど、業績が上がるというデータも存在します。

統計に基づいた意思決定が鍵

竹下:アイスランドそしてスウェーデンにおいて、ジェンダー平等に関してどのような政策が成功し、逆に失敗したのでしょうか?

ハンナ:アイスランドは12年連続で、WBFが発表する「女性が生きやすい国」第一位に選ばれています。もちろん課題はありますが、意志であり、コンセンサス同意、私たちの社会の基盤の一つであることに同意形成が成されているので。ジェンダー平等が経済的効果をもたらし健康度も増すことは、既に私たちは統計で知ってます。だからと言って、アイスランドがジェンダー平等に関して天国のようである訳ではありません。道のりはまだ長い。代表、女性に対する暴行、私は20年間アイスランドで政治家をやり、10年前に政治の世界からは退きましたが、アイスランドでさえ、政治の世界で女である私は「ゲスト」のような感覚でした。どんな会議やイベントに行っても常に私はマイノリティであり、男性が考えた男性のためのゲームのなかに、身を置いている感覚でした。アイスランドの政治文化は長年、男性主体だったのです。人々は、男性がリーダーとして大衆の前で低い声で演説することにあまりに慣れてしまっています。「目を閉じてリーダーを想像してみて」と聞いたら、おそらくほとんどの人が男性を思い浮かべるでしょう。

また、数は大変重要です。ゲームチェンジを起こすには、多くの女性政治家がいる必要があります。

前進するためのクオーター制

竹下:クオーター制は必要だと思いますか?日本では、男性の枠が奪われるという理由から反対意見も多いです。数を増やすために、

ハンナ:アイスランドでクオーター制を導入している政党もあればしていない政党もあります。大学入学した頃、自分には同級の男子生徒と同等の機会が与えられていることを信じていたころは、特に必要と思いませんでしたが、30年を経て、あまりに状況の改善が遅いことを目の当たりにしている今は、クオーター制の必要を強く感じています。男性の枠が奪われるという解釈はおかしいです。女性は人口の50%なのですから、代表も50%を閉めるべきなのは当然です。最終的には国家が決めることなのでUNとしては口を出せませんが、それでも、クオーター制の導入によりジェンダー平等の達成を早めることができると言っています。

アイーダ:私もハンナに同感です。数は大変重要ですし、政治、ビジネスの両方において、ジェンダー平等するための構造的な変化が必要です。政府は、改善がなければ企業の取締役会においてもクオーター制を導入するとしていましたが、この方向性を政府が示しただけでも多くの企業に変化をもたらしました。

竹下:ビジネス界はどのような変化?変わっていってるのでしょうか?

ハンナ:ビジネス界も政治と全く同じで、全ては意思決定です。アイスランドは意思決定によって、育児休暇が男女平等に適用されることや、男女同一賃金が法制化されました。企業はこのことにもっと敏感になり、伝統的なロールモデルのイメージを変えていく必要があります。

アイーダ:IKEAジャパンのマネジメント層も、日本で成功した秘訣の一つは、女性の従業員に日本企業では提供が珍しい手厚い育児休暇などの福利厚生を提供できたからだと言っていました。

女性首脳誕生は次世代に大きなインパクトを与える

竹下:日本ではまだ女性首相は誕生していませんが、国家元首が女性であることのインパクトは?

ハンナ:絶大なインパクトがあります。アイスランドがジェンダー平等先進国である一つの要因として、世界で初めて民主的に選ばれた女性の国家リーダーが生まれたことです。私はその時10代前半で、その後の私の人格形成に多大なる影響を与えました。

”Why?”から”How?”への転換

竹下:日本が変わるためにはどうすれば良いのでしょうか?

ハンナ:WhyからHowに移ることが重要です。女性は人口の半分を占めています。なぜジェンダー平等が必要なのかを議論する必要はもうありません。また、伝統的な規範や固定観念に縛られず、ジェンダー平等に形成された議会を実現することが重要です。ロールモデルも非常に重要です。ジェンダー平等について、社会全体のコンセンサスを構築することも必要です。もし日本で、ジェンダー平等によって自分が不利になると心配している男性がいたら、ジェンダー平等が実現すれば、男性もより長生きできることと教えてあげてください。ジェンダー平等は、男性にとっても女性にとってもWin-Winなのです。

アイーダ:ジェンダー平等は女性だけで実現できるものではないことを認識することが大切です。例えば、30年前にスウェーデンの政党がジェンダー平等を実現するために活動したとき、元来男性が支配的だった労働組合とも手を組みました。データや統計に基づいて行動することも重要です。

セッション3 若者の声、メディアの役割

セッション3は、ジェンダー平等達成に向けたメディアと若者の役割について、タウンホール形式のディスカッションを開催しました。登壇者は五十音順に以下の通り:岡野恵(東京大学法科大学院生)、佐座まな(一般社団法人SWiTCH 代表理事), 大門小百合 (元ジャパンタイムズ 編集長), 能条桃子 (一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN 代表理事), 室橋祐貴 (日本若者協議会 代表理事), 本橋彩(UNIVERSITY of CREATIVITY プロデューサー) 

幼少期から形成される潜在的バイアス
佐座:現在、数年ぶりに日本に住んでいますが、女の子はピンク、男の子は青など、幼い頃からのジェンダーバイアスがまだ存在していることにショックを受けています。低年齢教育での取り組みが重要だと思います。

本橋:バイアスは誰にでもあるもので、自分のバイアスを気づかせることがメディアの大きな役割のひとつです。セッション1、2を聞いて、バイアスを認識することの大切さをより一層感じています。

政治家にも定年を導入?
能条:政治やメディアで活躍する年配の男性リーダーに、一定年齢を超えたら引退していただく仕組みが必要かもしれません。

岡野:日本の問題点は、将来に責任を持てない年齢層がリーダーであることです。そういう方はリーダーではなく、別の形で社会と関わって欲しいと思います。

大門:日本の政界は参入障壁が高く、新陳代謝が遅い。まずは被選挙権の年齢を下げることから始めるのも一案だと思います。

室橋:北欧は比例代表制ですが、日本は小選挙区制で終身雇用になりやすい現実があります。この違いをどう克服するかが課題です。

女性ジャーナリストの増加、報道内容にも変化や多様性を及ぼす
大門:マスコミの現場では、女性記者も管理職も少ない。政治とメディアに共通する悪しき習慣として、長時間労働をする人が昇進しやすいことがあります。一気に変えるのは難しいですが、少しずつ女性記者も増えてきていますし、組織を超えた連携も進んでいます。

能条:昨年、森喜朗議員の女性蔑視発言の際に陳情を集める活動をした際、ロイター通信が真っ先に取材をしてくれました。そレから2、3日おいて日本のメディアにも取り上げていただきました。でも、一人を除いて全員女性記者だったことは嬉しかったです。

室橋:メディアは、そうした良い事例を可視化していくべきです。女性記者が増えれば、放送内容も変わってきます。例えば、NHKの貧困問題の特集は女性がリードしていました。

ストーリー偏重な報道
能条:若者や女性活動家に関する報道は、多くの場合、個人に焦点を当てます。社会問題に取り組んでいるユニークな女性の話をしたいのです。その活動内容や成果、社会全体で取り組むべき課題については、あまり報道されません。

室橋:すぐに選挙制度を変えることは難しいですが、日本には良いロールモデルがあります。例えば、女性初の東京都知事となった小池百合子氏や、東京都や広島県の初女性教育委員長などです。また、山形県は若者の投票率が高いのですが、そのために山形県がどのような取り組みをしたかをメディアは報じないため、他の自治体にその取り組みが浸透していません。女性や若者がリーダーになることの重要性や、どうすればそれを実現できるかを、もっとマスコミは報道すべきです。

“Why?” から”How?” への移行の実現に向けて
佐座:若者をディスカッションのテーブルに招くだけで、実際にアクションを起こさないというのは、もうやめなければなりません。例えば、ユーザーアドバイザリー制度を国会に導入して、若者の意見を取り入れるなどは一案です。セッション2にもありましたが、”Why?”から”How?”への移行に取り組まなければなりません。

岡野:本日のような場に招かれるメンバーが、いつも同じになりつつあります。私たちはゲストであって、テーブルの一員として迎え入れられていない感覚があります。

佐座:Z世代の2.5人に1人が「社会に良い影響を与えたい」と考えています。企業が彼らのニーズに応えられなければ、若者は日本から出ていってしまうと思います。企業には、長期的なプランと行動が必要です。

室橋:今、大学を卒業して就職活動をしている世代は、給料よりもワークライフバランスを優先しています。企業はこの価値観に応えられるようシフトしていくべきです。また、北欧では、社会を変えようとする若い活動家が支援されていますね。しかし、日本では企業から煙たがれたりSNSで批判されたりすることが多いです。全ての世代が集結してこのような空気を変えていくべきだと思います。

閉会の挨拶:駐日スウェーデン大使より


議論は尽きない様子でしたが、閉会の時間を迎えました。最後に、駐日スウェーデン大使ペールエリック・ヘーグべリ氏が閉会の辞を述べました。大使は、ジェンダー平等のために男性ができることとして、今度、男性ばかりの会議に出会した際は、この会議は本当に意味があるのかを自問して欲しい。更に勇気を出して、出席者のジェンダー平等を調整した上で会議を再設定して欲しい」と提案しました。「Nordics Talks Japanは今後も継続していきます。取り上げてほしいトピックがあれば、ぜひお寄せください。ありがとうございました。」

最後までお読みいただきありがとうございました。録画もこちらからご覧いただけます。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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