見出し画像

官能小説家も大変だ! 【めざせ確定申告! 職業文筆家への道 ! 第1話】

 「技術者としてノーベル賞は取れなかったが、ノーベル文学賞ならまだ間に合うぜ!」と、一部の親族に見得を切って京都芸術大学通信部芸術学部芸術学科文芸コースに入学して早3年あまり、文筆家としてやっていける自信も実力もないままに今春卒業してしまいました。 
 卒業に伴い、これまで連載していた「50代の大学生日記」シリーズも終了し、4月から新シリーズを始めようと思っていたら、もう5月半ば。今年度の目標として、「無職」or「フリーター」になってしまった私の職業を「文筆家」とか「小説家」と名乗れるようにしたいところですが、一般に「職業」として名乗れるかどうかは収入が年間20万円を超えて確定申告をするかどうかがボーダーらしいので、まずは文筆家収入で確定申告することを目標にしたいと思います。
 ほなあんた、何を書いて20万円の収入を得るねん! ということですが、今年度に取り組みたいと思っているのは次の3つです。

①官能小説執筆 目指せ! フランス書院文庫官能大賞!!
②卒業制作作品をブラッシュアップして何かの賞に応募する
③上方落語台本大賞に応募する

 今日はまず①の官能小説家への道について語ります。
 以前にもちらりと書きましたが、私の大学の担任の先生(小説家)と「ジュブナイルポルノの女王」の異名で知られるわかつきひかる先生がYouTubeで対談しており、そこで紹介された、わかつき先生の『文章を仕事にするなら、まずはポルノ小説を書きなさい』(雷鳥社 2017年)という本の、「ポルノ小説はツボが押さえられていないと、小説がいくら上手でも、いくらセックスシーンがあっても、新人賞を受賞することができないのです。逆に言うと、ツボさえ押さえられたらデビューは簡単。高い文章力もいりません。童貞でも処女でも書けます」という内容に、老い先が短く、せいぜい残り10年ぐらいしか活動できそうにない私は「爪痕を残すにはこれしかねえ!」と食いついてしまい、まずは官能小説にチャレンジすることにしました。
 しかし、実際に官能小説を書いてみると、思いのほか大変でした。エロいストーリーを妄想して、『官能小説用語表現辞典』(筑摩書房 2006年)を参考に、過去の名作で使われたエロエロな表現から妄想を膨らませて執筆しているのですが、なかなか納得できる文章が書けません。ノリノリになるとエロさ全開で筆が進むのですが、ダメな日は全然ノリません。

愛読書


 登場人物の女子大生の若くてピチピチのカラダを表現しようとしても、大学時代は工学部の中でも特に男子しかいなかった機械工学科で、童貞をこじらせた非モテの王道を歩んできた私の頭にはその情景が赤裸々に浮かんでくるわけではなく、59歳になって通勤の電車で、キューっと締まったウエストを露わにヘソを出して、そこから美しい曲線で連なるヒップラインを強調した出で立ちで立っている若い女子を観察しながら、文章表現をああでもないこうでもないと妄想したり、人妻との不倫を描くために、今まではあまり興味がなかった奥様方の髪型やファッションの流行を観察してみたりしているわけで、決してエロいことを考えてムラムラしているわけではないのですが、客観的に見て私は「かなり危険なおっさん」に成り下がっており、そのうち捕まりかねません。

文豪 谷崎潤一郎


 二度めの大学時代、谷崎潤一郎研究者の先生の授業で、同級生のおばさんが「谷崎はレズとかSMとか変な小説ばっかり書いてますが、やっぱり変な人だったんですか?」と禁断の質問をしてしまい、先生が「松本清張は作品の中でたくさんの人を殺していますが、彼は決して殺人鬼ではありません! 小説はあくまでも創作の世界なんです!  小説の内容と作者の人生は全く別物なんですっ!」と半分キレていたことがありました。とはいえ、文豪 大谷崎あれだけの表現はSMの道を相当極めないとできるものではありませ・・・・・・。いや失礼、あれだけいろいろなテーマについて、あれだけ多様な文章表現ができるとは、やはり谷崎潤一郎は天才なのだ! と思わざるを得ません。私など足元にも及びません。
 閑話休題、結局のところ、私の妄想をいくら繰り広げても、読者のエロ心を掻き立てる表現ができないことを思い知らされたので、まずは勉強をしようと、アダルトショップで官能小説を買ってきては、「うぉ~、この表現は攻めてるな~」とか「く~、なんて痺れる表現なんだ!」とか「うゎ~、この比喩表現は秀逸やなぁ~」などと、気に入ったところを蛍光ペンでマーキングしながら熟読しています。童貞をこじらせていた頃の私は、かなりムラムラしながら官能小説を読んでいた「自称文学青年」だったのですが、さすがに59歳ともなると、官能小説を熟読しても、それは純粋に自分の文学修行の一環なので、いくら作品の世界に没入しても全然ムラムラしません。(いや、単に老化して枯れてるだけやがな!)
 しかし、実際に読んでみると、正直なところ、官能小説は人間臭さを煮詰めたようなドロドロしたものではありませんでした。現在ヒットしている作品で描かれている世界観はかなりムチャで、もはやファンタジーといえるようなものでした。
 私が最初に読んだのは、フランス書院文庫官能大賞新人賞を受賞した作品なのですが、

ここから先は

1,443字 / 3画像

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?