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【50代の大学生日記 第24話】丘もあれば池もある一度はまると抜け出せない硯(すずり)の世界

 春爛漫、こんな多くの観光客 久しぶりに見た! そんな京都からこんにちは。嵐山を歩くと、サンダル履きで歩いてる「近所のおっさん」の私でも人力車の兄ちゃんから声をかけられることがあるのですが、今度声をかけられたら、やおら人力車に乗り込み、「京都駅までやってんか~ 新幹線の時間があるから急いでな~」と言うてやろうと思ってます(笑) ほんまに走ってくれたら嬉しいです。そんなわけで、今回も本文の話題とは関係なく、京都の春の風景写真を載せてます。

 さて、書道用品店のパートのおっさんをしている私にとって、紙も墨も筆も商品の違いや良し悪しがわかりにくいものですが、硯(すずり)もこれらに輪をかけてわかりにくい。紙は厚さや色合いや触感が違うし、墨や筆は商品そのものに商品名が彫ってあるので、まぁそういう商品なんだとわかりますが、観賞用ではない実用の石の硯にいたっては、色は同じように見えるし、大きさは種類がやたらとあり似たような大きさもあるので見た目では区別が難しいし、同じ商品の在庫の中に1面だけ石の種類が違う硯が混じっていても私にはわからない・・・・・・
ということで、今日は第22話で紹介した私の硯『宋坑端渓硯7吋』がどれぐらいの高級硯なのか、「7吋」ってどれぐらいの大きさなのかを切り口に硯の勉強をして、備忘録のつもりで書いていきます。

宋坑端渓硯7吋

 硯には陶器製のもの(陶硯)や、子どもお習字用の軽いプラスチック製のものもありますが、一般に石製が多く用いられます。硯石としては、唐硯(中国産硯)では広東省で産出される端渓硯(たんけいけん)や南京近郊で産出される歙州硯(きゅうしゅうけん・きゅうじゅうけん)などが有名です。和硯(日本産硯)では、宮城県雄勝(現在は石巻市)で産出される雄勝石(おがついし)や三重県熊野市産出の那智黒石(なちぐろいし)などにが有名です。那智黒石製品や銘菓「黒飴那智黒」(私が子どもの頃、外人さんとおばあさんが「イエィイエィ、ナチグ~ロ」と言いながらゴーゴーダンスを踊っているCMがしょっちゅう流れていましたね、関西だけ?)は和歌山県の那智の滝のあたりで売られているので和歌山産と間違えられがちですが、正しくは三重県で採掘されているそうです。知らんかった。
端渓硯は中国が宋王朝だった時代(10~13世紀あたり)から量産されており、採掘された坑によっていろんな名前があります。私の硯「宋坑端渓」「宋坑」は宋の時代からある歴史のある坑ですが、つまりは10世紀の技術でも採掘できたような掘りやすい坑なので、生産量も多く比較的安価なようです。一方「老坑(ろうこう)」「坑仔巌(こうしがん)」「麻仔坑(ましこう)」と呼ばれる坑の石は流通量も少なく、品質的にも高級なのだそうで、たしかに、うちの店でも私の硯とは値段が1桁違いますね~、私の目には違いがわからないので「宋坑」でももったいないぐらいですが。
歙州硯は生産量が端渓に比べて5%ほどしかないため、流通量も少ないのだそうで、たしかに店の在庫もほとんどありません。

車折神社(4月2日朝)

 さて、私の硯の大きさを示す「7吋」って何なの?ということですが、「吋」「インチ」と読みます、そうアメリカで長さを表す単位のインチです。私が会社に入った頃は、まだ工場にアメリカ製のインチサイズのマシンがあり、「インチネジ」を手配することもあったので、1インチ=25.4mmだと知ってますが、メートル法全盛のこの時代にインチなんて知らない人も多いですよね。それにいまだに「尺貫法」が幅をきかせている「昭和な世界」の書道業界で、いきなりインチって何やねん! ということですが、実態はさらに複雑で・・・・・・
唐硯(中国製)は硯の前後方向の長さが5吋とか6吋というようにインチサイズの規格で作られており、私の硯の「7吋」は175mm(約7インチ)×115mmです。一方、和硯(日本製)は「五三寸(ごさんずん)」=150mm(約5寸)×90mm(約3寸)や「四二寸(しにすん)」=120mm(約4寸)×60mm(約2寸)と呼ばれる尺貫法サイズに、「三五度(さんごたび)」=100mm×45mmとか「四五平(しごひら)」=135mm(約4.5寸)×75mm(約2.5寸)とか「小四六(しょうしろく)」=167mm×106mmというような名前から大きさを想像できないような謎だらけのサイズもありわけがわかりません。ちなみに、書道セットに入っているような一般的な硯は、たいてい「五三寸(ごさんずん)」=150mm(約5寸)×90mm(約3寸)か「6吋」=150mm(約6インチ)×100mmだそうです。日本製でもインチサイズ。ますますわからん。

祇園白川の夜桜

 結局のところ、硯の世界はわけがわからんということを再確認しただけの備忘録でした。職場の先輩(師匠)は硯を見ただけでどの石のどの大きさかを言い当てます。私も何年かすればこのレベルになるのでしょうか。
書道用品ネタだけで当分いろいろ書けそうです。では次回をお楽しみに。

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