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【50代の大学生日記 第14話】檸檬

 10月はスクーリングを固め打ちして、土日が埋まってしまったのと、大学の課題で短編小説を書くのが楽しすぎて、noteの更新が久しぶりになってしまいました。
 スクーリングの事前学習で京都を舞台にした文芸作品を読むというのがあり、川端康成の『古都』や梶井基次郎の『檸檬』、三島由紀夫の『金閣寺』やなんかを初めて読みました。ついでにこれらの作品の作者についてもいろいろと調べてみたのですが・・・
文豪の先生は人生もまともじゃない!
そのままの勢いで『眠れないほどおもしろい やばい文豪』(板野博行著 三笠書房王様文庫)という本まで買って爆笑していました。
今日は京都ゆかりの作家、梶井基次郎先生の青春について語りましょう。

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 梶井基次郎の代表作『檸檬』といえば、鋭敏繊細な感受性による詩のような表現で、特に女性に人気がある作品です。改めて読んでみると、丸善(本屋)の棚から重い画集を何冊も取り出して、色とりどりの城を作り、その上に檸檬を置いて何食わぬ顔で店を出て、あの檸檬が爆弾で十分後に丸善の美術の棚を中心に大爆発したらおもしろいだろうなぁ・・・・とニヤッと笑うような行為は今なら完全に「迷惑系」ですが・・・ まぁ、丸善さんも棚に檸檬を置けるキャンペーンをやっていたり、カフェで檸檬のスイーツを提供したりと、今ではすっかり基次郎を利用してますけどね。

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 そんな基次郎は旧制三高(今の京都大学)の学生だったときに、京都に住んでいたのですが、けっこう荒れた生活だったようで・・・
19歳のとき、休みのたびに宝塚少女歌劇を見に行き、寺町や新京極のカフェに入り浸って煙草と酒の味を覚え、モテたいために始めた(?)ビリヤードはプロ級の腕前だったようですが、顔がイマイチだったため、お気に入りの女給にも相手にされない、暗い青春だったようです。
今なら、AKBのCDを何枚も買って握手会に参加しているうえにメイドカフェでは常連の太客なのに、全然モテない残念な漢といったところでしょうか。まあありがちな話ですね。私もそうでした(笑)
20歳のときには、通学の汽車でよく見かける女学生に一目惚れし、イギリスのロマン派詩人の詩を破いて彼女の膝に叩きつけるという、女性からしたら「こわいこわい!」としか言いようがないようなことをして、後日「読んで下さいましたか?」と聞いて、「知らんわ!ぼけ!」と拒絶されたことがあったようです。
困った学生は基次郎ばかりではなかったようで、女性と同棲していた友人に、田舎から父親が出てくるから助けてくれと泣きつかれ、女性を基次郎の部屋で匿わされたうえ、勉強しているのを偽装するため基次郎の哲学書を友人の部屋へ貸し出すといった吉本新喜劇のようなことをしたとされています。ただその友人もたいがいな人で、基次郎の本を質に入れて女性との生活費にしてしまったというゲスの極みぶりだったようです。
 圧巻なのは、その年の10月(今からちょうど100年前の10月)、基次郎は酒に酔って、祇園八坂神社前の市電の線路で大の字になり、
「オレに童貞を捨てさせろ~!」と叫びまくったのだそうで、見かねた友人たち(うち1人は基次郎の哲学書を質に入れた人)が、基次郎を遊郭へ連れて行くと、彼は遊女を見るなりゲロを吐き・・・・・・  それでも無事に童貞を卒業したようですが、彼は日記に
『昨日は酒をのんだ、そしてソドムの徒となった』
という名言を残しています。ソドムとは旧約聖書に出てくる、性の乱れにより神に滅ぼされた、背徳の象徴とされている都市の名前であり・・・・・
なんか知らんけど、つらい初体験だったのでしょうか(笑)
ちなみにこのときの遊郭の代金は哲学書質流しの友人が立て替えていたようですが、返済を迫られ、基次郎は時計を質に入れて払ったとされています。やっぱりこの友人、ゲスの極みですな。このことが基次郎のソドム発言につながったのかもしれませんね。
 それより何より、驚くべきは、このような事件がいまだに記録となって残っていることです。若気の至りでこのような恥ずかしい事件を起こした人は私を含めて数多くいらっしゃるかと思いますが、100年経ってもWikipediaで語られるなんて、恥ずかしくて想像したくもないですよね(苦笑)
 童貞を卒業してからの基次郎は怖いものなしで、授業をさぼってカフェや遊郭へ入り浸り、家賃も払わず酒を飲みまくり、借金取りから逃れるため友人宅を転々とする生活。酔うと友人も引いてしまうぐらいの乱行ぶりで、出禁になった店も数えきれず。
 そんな生活をしながら24歳で『檸檬』のような繊細な作品を書くとは、まともな神経ではありませんね。私もまだまだ修行が足りない(笑)
ではまた、次回をお楽しみに!

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