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Virtual Music Introduction:幽夏レイ「プレイバック・ハイライト」

火薬と海

花火のような一瞬のきらめきと影
海のようなどこまでも広がっていく未来
あの夏は期待と不安が入り混じったそんなにおいがして

Vtuber・VRChatの音楽を紹介するシリーズ Virtual Music Introduction
第3回は幽夏レイ「プレイバック・ハイライト」

あなたはどんな夏を思い浮かべますか?


今回ご紹介する「プレイバック・ハイライト」は幽夏レイさんの3rd single、
1st EP 「moratorium」収録楽曲です。

幽夏レイさんは2020年4月より配信アプリ「REALITY」で活動を開始。
REALITYでの毎日配信やYouTubeでの歌枠配信などを行っています。


「プレイバック・ハイライト」の作詞作曲はbuzzGさん

buzzGさんはロックバンドでのギターボーカルの経験もあるボカロP
しわ」「アヤカシ」はニコニコ動画でミリオン再生、そのほか「アルビノ」「Notebook」など多数の人気楽曲をリリース。

そのほか、バンド、歌い手、Vtuberなど多数のアーティストに楽曲を提供しています。

掻き鳴らすようなギター中心のバンドサウンドを中心に、ピアノなども組み合わせ様々な曲を展開。
キャッチーなメロディと大きな緩急の差が、聴き手の心をつかみ大きく揺り動かします。

さらに、歌詞は1曲1曲の世界観が作りこまれており、聴く小説のような楽曲も少なくないです。
特に人気のある「しわ」は書籍化されました。


「プレイバック・ハイライト」もbuzzGさんらしいキャッチーかつエモーショナルなナンバーになっています。

イントロは短いドラムの後にベース・ギターが4回掻き鳴らされてメロディーに突入していきます。このわずか5秒でワッと期待感が煽られ、続けざまにキャッチーなメロディでグググっとひきつけます。

そして歌い出し、水面に水滴が落ちるようにスッと音が引いて幽夏レイさんの歌声が聞こえてくるのです。

この引き付けた後に、一度フッと離されることで引き立てられた歌声が耳に流れ込んできます。

そしてベースとドラムが戻ってきて再加速かと思えば、またベース・ギターが掻き鳴らされ、音数が減り音が止まり、サビで一気に音が戻ってくる。

この「引き付ける」「離す」「魅せる」緩急を何度も繰り返し曲を盛り上げていくのです。
特に最後のサビ前は、キーを下げて戻すことでさらに強い緩急になっています。

「離す」タイミングでしっかり聴かせて、「魅せる」タイミングの強いバンドサウンドにも負けないのは幽夏レイさんの淡くも芯がある歌唱あってのものでしょう。

炎天下で揺らめいた秘密基地に 拙い指文字で未来を描いてる

歌い出し、もうこの歌詞からエモーショナルですよね。
揺らめいているので淡い情景なのですが、歌に芯があるのではっきりとシーンを思い浮かべられます。

もう一度プレイバック 鼻唄には あの日の青 あの日の影 宿して歌うよ 透明な僕らには怖いものなんてなかった

曲全体を通して基本的に清々しい煌めいた青春を歌った歌なのですが、ここで「あの日の影」というワードが出てきます。

西陽が砕いた夢の終わり 暮れる空に 泥む空に 何度でも言うよ 迷いも後悔も間違いなんかじゃなかった

近しいワードはこの部分ではっきりと使われています。
決して明るく楽しいだけだったじゃなく、「迷い」「後悔」が影としてある青春なんですね。その点がこの歌をリアリティがあり愛おしいものにしているのです。

弧を描くように 燃え尽きるように 駆け巡って 青い夏を

そして「燃え尽きるように」というワードが青春が終わるその時まで煌めく意志を感じます。徹頭徹尾まばゆい、影も含めてまばゆい青春の歌なのです。


「プレイバック・ハイライト」
この曲は、いま青春を駆け抜けている若人だけでなく、花火帰りの火薬の匂いや夜の潮の匂いに懐かしさを感じる大人にこそ聴いてもらいたい1曲。

あなたはどんな夏を思い浮かべますか?

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