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If…

neeさんご無沙汰です。お元気でいらっしゃいますか?
お返事遅くなりました。

宮古島でダニエルズの新作を観たという感想を読んで嬉しかったです。
人が人生の中の数時間を映画を観るために時間を作るって、俯瞰で思うとそこに生じる小さなドラマがあったりするんだろうかって、スリリングだなあってちょっとドキドキします。
私はダニエルズを最初はカナダで見ました。シネコンで。精神的にも肉体的にもちょっとばかり疲弊してた時だったせいか、字幕なしの情報量の多いカオスについてゆけず気づくと居眠りしました。

ある日、仕事場でスタッフやキャストがアレ面白かったという話題で盛り上がっているのを小耳にしました。またある時は、ちょっとついてけなかったという声も聞きました。私は感想が分かれる映画は興味深いのでもう一度日本で字幕付きを見ようと思いましたがそこまで時間がかかった、かかった。

で、私の感想は一言では難しいですが、「諦めない」という言葉がまず浮かびました。そしてとにかくあの映画を見ている間は抱腹絶倒だったということも。久々に大いに笑った作品で、こんなに面白かったんだ、カナダで見た時は本当に疲弊してたんだなって、人の生命体としての起伏の激しさに、苦笑です。脚本ってどんなだったんだろうなと想像すると、いつのひか私にもああいう作品の脚本が来た場合、70歳くらいでもついて行けるんだろうか、その時まで諦めずにキープオンできるんだろうか、いや、していたいなとか。すみません、素敵な感想をここで述べられずに。

さて。ご質問ですが。

質問その1 洞口さんは近作『終点は海』、今秋公開予定の『白鍵と黒鍵の間に』で、母親役を演じられました。エブエブのミシェル・ヨーは母親母親した役柄でしたが、洞口さんは母親役を演じるときに影響を受けた俳優さんや、近しい人物はいらっしゃいますか。

自慢じゃないんですが、私がダメな母親をやった子供たちは皆出世?しています。
デビルマンやパンドラの箱では染谷将太さんが、ノースポイントというテレビドラマで宮崎あおいちゃんがまだ大ブレイクする前でしたが、打ち上げで彼女にぽつり一言「あおいちゃんはそのままでいていいんだよ」とだけ言った記憶があります。20年位前のTBSドラマで岡田准一さんのどうしようもないお母さんも演じましたが、彼もその後は演技者として素晴らしい存在になられました。まあ共演したみんながみんなではないですが、私が母親をやらせていただいた方々のほとんどは日本を代表する演技者たちになりました。そして、『終点は海』の清水尚弥さんもきっとそうなるでしょうし、『白鍵と黒鍵の間に』の池松壮亮さんに関してはもう言わずもがな。息子を見守るちょっと不思議なお母さんでしたが。彼は日本を代表する演技者として世界中の監督と仕事してほしい、するはずです。みなさんの共通点は自然体でいらっしゃる、ということでしょうか。もう本当に演技してるとかじゃないんです。自然に、吹いてくる風と一緒に存在するような、揺れる草花のような、道の石ころのような、その自然のままでいられること。そうそう、『沈黙』のキチジローの母も光栄な役でした。ある人が洞口は天草四郎のお母さんを演るのか!と感心しましたし、それを言うなら、シン仮面ライダーの本郷猛のお母さんだって、って、素晴らしい役を演じてきた俳優の母役は光栄の至り、19歳の小娘だった私も立派に成長したものです。

母親を演じるのに影響を受けたといえば、テレビ出演で最初に母子役でご一緒させていただいた加藤治子さん。19歳の小娘の時から大人になってもずっとずっとよくしてくださいましたし、マルサの女2でご一緒した際には、「このすべた」とセリフを吐き捨てられ、アッパーカットされたような破壊力がありました。治子さんは私にとって永遠の女優であり女のひと。心の支えになっていました。
母子共演者として印象深いのは、市原悦子さん、樹木希林さん。先輩たちの演技は間近で見ているのですごいなあと尊敬していますが、畏れ多くてマネなどできるものでもないので何も参考にはなっていません。今まで見てきた映画の中で、ああこんな感じをやってみたいなあという場面や演技はあります。そういうものを粉々に粉砕して干したり、戻したり、煮たり焼いたり、まるで調理するみたいに自分の体で演じてみることも挑戦したりしますが、大抵実際は到達できてません。結局、その時感じた相手とのノリでしかないのかもしれませんって、それも曖昧ですが。個人的には、京塚昌子さんや東山千栄子さんを目標にしたいと思っておりますってこれもまるでかけ離れておりますので、せめて体型だけでも、お尻とかね。丸くて鏡餅みたいなお尻の着物姿で割烹着が似合うちょっとダメなお母さん。そういう意味では、『白鍵と黒鍵の間に』のお母さんはちょっといい感じかも。ふっくらホワンとして。息子には褒められましたし。秋の公開を楽しみにしていてください。

質問その2 洞口さんは映画『エンパイア・オブ・ライト』の主人公を演じてみたかったと過日ツイートしておられましたが、同じようにこれまでに「この映画(ドラマ)のこの役は、私が演じたかった!」と感じるような作品はありましたか。もしリメイクするなら演りたい映画なども含めて。

あったと思うんですが、もう忘れました。
私は早くおばあさんを演じたいです。
関係ないんですが、先日、仕事関係で早くにクローネンバーグ新作を試写で観ました。ふと思ったのが、日本でこれできないのかなあって。全く届きませんが、『他人の顔』いう映画があって勅使河原監督の作品をふと思い出しました。あれは人工皮膚でしたが。同じような医療もんばかりやってないで、クローネンバーグばりのものが観たいなあとか思ってしまいました。日本には優れた特殊メイクや、造形アーティストもいますからね。

質問その3 もし女優という仕事を選んでいなかったら、今頃どんなことをされていたと思いますか。

ふと考えること多々です。
実は、こないだも佐島の海を眺めながら似たようなことを考えてました。
今の時代に16歳だったら私はどうしてるんだろうか。
流行り物に飛びついているだろうか。アイドルになりたくているだろうか。
はたまた、転落した人生を早々に送ってたちんぼなんかしてるんだろうか。
それか、真面目に勉強にハマってるだろうか。または田舎のどこかで畑耕したりしてる旦那におにぎり届けてる赤ん坊背負ったお母さんになってるだろうか。
もし、今の人生じゃなかったら。女優にもなっておらず、結婚もせず、何をしてるだろう。または子宮がんの時に、死んでいたら、いや、こないだの蜂窩織炎で命を落としてたら、今私はどこを彷徨っているんだろうか。

もしも、という問いはふとしたときに考えます。

でも生きて女優をやっているんです。だから、今を楽しみたいです、よね。

沖縄は空梅雨ですか?こちらは気象が不安定で体調を崩しがち。お互いゆったりのんびりするひと時を大事に、私がやらねば誰がやる!くらいユーモアふんだんに、時に、シーラナイ!ってすっとぼけているすっとこどっこい猫になったり、
生きている残り少ない時間を楽しみましょう。
では、またね。

依子より


上の写真は、19歳で初めてドラマに出演した際のショット。演出の久世さんとお母さんは加藤治子さん。ちなみにお姉ちゃんは田中裕子さん。

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