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読書記録

『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』


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Twitterでゲラ読み書店員を募集していてこの本が刊行されることを知った。

機を逸してゲラ読み応募はできなかったが、入荷してさっそく読んだ。

全盲の白鳥さんと著者とその友人が様々なアートを鑑賞する。目に見えるままに作品を言葉にして白鳥さんに伝えるというシンプルなやりとりが書かれている。

昨年の今頃、わたしは点字講座に通っていた。

講師は全盲の人。

毎回宿題が出され、打刻したものを見てもらうのだが、ある日のお題は好きな詩を刻んでくること。

わたしが選んだのは「死と炎」という谷川俊太郎の詩。これはクレーの絵本の中に綴られている。

この詩を提出した時に、講師の方が少し驚かれていた。谷川俊太郎はもちろん知っているがこんな詩を詠んでいるのは知らなかったと。

そこで、ふと目の見えない方は絵を見ることがないんだなと改めて考えた。

伝えるとしても、途中から見えなくなった人はそれまでの経験である程度の知識はあると思うが、先天的に見えない人に、色や形をどう伝える?

本を読んだ時に想像する世界をどのように構築しているのだろう?

という疑問があった。

しかし、どこまでの質問を投げかけて良いのかわからず何も聞くことはできなかった。

そういった疑問がこの本にも書いてある。

わたしが失礼かなと思って聞けなかったことを、衒いもなく聞いている。

この本では視覚障害者と健常者という境界がなく、ただ友だちとアートを鑑賞している楽しげな会話がある。

とかくこの世界では違うものに線を引きたがる。

事実、そうすることで制度上得られない支援もあってそのジレンマを白鳥さんも自認されている。

そういったことをこの映画で話されていた。

【ドキュメンタリー映画】白い鳥

https://theatreforall.net/movie/awhitebird/


この映画の上映会があり、トークイベント付きで白鳥さんと著者、監督が来場された。

白鳥さんはロックな人だった。

うまく文章にできないけれど、この映画を見たら、白鳥さんの思いが伝わってくる。

✏余談

帰りのエレベーターでの出来事。

わたしが乗ったら、誰かが近づいてくるのがわかったので開くボタンを押して待っていた。

乗り込んできたのはドン小西のようなクリエイター風の中年男性。携帯で話ながら来て、話に夢中なのか開けててくれてありがとう。のペコリもない。

エレベーターが降下する間も、いかにもな口調で誰かを説き伏せるようなことを喋っていた。

エレベーターが開き、二人しかいないので開くボタンを押すつもりはなかったが、扉の近くにいるわたしよりも先に、ズカズカと喋りながら出て行った。

そういうとこだよ。

この世界。

同じ映画を見てきたとは思えない、余韻のない人だった。