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自己紹介

はじめまして。
のらいぬ、と申します。
博物館やまち歩き、読書、映画、石拾いなどに関心があり、一応関東にある小さな博物館の中の人をやっています。

これまではTwitter(X)で色々なことを呟いていたのですが、元々文章を書くのが好きということもあり、何だか140字だと足りないな…と感じるようになってきました。
そこで、notoでは140字では足りないような展覧会の感想や、書評、映画の考察などについて書いていきたいと思います。
 
今回は自己紹介がわりに、最近観た映画について記します。


映画『オオカミの家』+短編『骨』感想

モデルとなったコロニア・ディグニダ

映画『オオカミの家』は、チリ発のストップモーションアニメ映画で、クリストバル・レオン&ホキアン・コシーニャという二人の監督の作品です。
特設サイトも、手がなかなか手が込んでいます。
ホラー映画ということになっています。

この映画は、『ミッドサマー』などで著名なアリ・アスター監督(私も大好きです)の賛辞や、ストップモーションによる挑戦的な表現手法によって注目されていますが、私が関心を持ったのはコロニア・ディグダという実際のカルト宗教コロニーをモデルにしている点でした。

コロニア・ディグダは、キリスト教パプテスト派のパウル・シェーファーという指導者が戦後に設立したドイツ系移民によるコロニーです。
パウル・シェーファーは元ナチス党員で、「労働」「秩序」「規律」などをお題目に、コロニーでは暴力・拷問・児童性的虐待も行われる、文字通りの無法地帯だったようです。
また驚くべきことに、現在もビジャ・バビエラと名を変えて観光施設として営業しているようで、まさに狂っているとしか言えません。

コロニア・ディグニダについては、これまでにも映画の題材にされていたりと、存在自体は知っていたのですが、チリの政治史については全く不勉強だったので、見る前にはwikipediaなどで調べたりもしました。

映画『オオカミの家』の感想

※ここからネタバレ含みます

まず鑑賞体験という点から言うと、1時間ちょっとの映画ですが、正直少し苦痛でした。
ストップモーションという技法の特性上、画面がガクガク揺れるので、眼の周りの筋肉がとても疲れます。
しかし、ただ疲れるだけという訳でもなく、例えばマリアが家にたどり着いてから、黒塗りの部屋にだんだんと家具が描き足されていくシーンなどは、「暗闇に目が慣れてきて(あるいは精神的緊張が解けてきて)、部屋の様子を観察し始めたんだな」と分かり、見事だなと感じました。
表現については、「挑戦的」という評価が正しく、それによる面白さも確かにあります。

肝心の主題については、モチーフ程度かと思いきや、「コロニー作成のPRフィルム」という体で話が進むなど、かなり直接的でした。
はじめは黒髪であったアナとペドロが、マリアによる「教育」を経て金髪碧眼に生まれ変わるシーンなどは、マリアに内面化されたゲルマン至上主義が克明に表現されていると感じました。

ただ、ここには真の作者である監督から観客側へ向けた教訓・強いメッセージは感じませんでした。
おそらく、「不安定な精神状態の連続」という状況について試してみたい表現手法が先にあり、カルト宗教コロニーからの脱出というモチーフを選択したのはそのようなシーンを描くのに自然だったからではないでしょうか。
もちろん「カルト宗教の洗脳は怖い!」という一般的な見解には落ち着くのですが、期待したほどの衝撃的なストーリー展開ではありませんでした。

短編『骨』の感想

『オオカミの家』と同時上映された、短編アニメで、こちらも同じ監督によるストップモーションアニメです。
こちらも設定がひと癖あり、「近年発見された1900年代初頭のフィルム」という設定になっています。

短い作品でストーリーという程のモノも無いのですが、個人的にはこちらの方が好みでした。
のっぺりとした人形の顔と、繊細な指先の動きのコントラストが大変心地よく、文楽の美に近いようなものを感じました。
ポスターも、どことなくメスキータっぽくて好きです。

ミニシアターの磁場

結論として、個人的には『オオカミの家』は期待したほどではなく、『骨』は好きでした、ということになります。

最後にこれは少し謎なのですが…
今回は上映館が少なく、都内のミニシアターで鑑賞しました。
(あえて名前は書きません。調べればすぐ分かると思うので。)
が、ミニシアターというのはなぜ高確率で受付の人の態度が悪いんでしょうか。

これまで4箇所くらいミニシアターを利用したことがありますが、たいていどこも態度が悪い。
横柄というべきか、素っ気ないというべきか。
あるいは声が小さすぎて何を言っているのか本当に分からない。

しかし、対応が悪いと分かっていても、「ここを逃したら観られない!」という作品のためにまた行ってしまうから不思議なものです。
大手の映画館とは異なる場の雰囲気が、たしかにあります。

「頑固親父が営む美味しい焼鳥屋」とかと同じジャンルだと思って付き合う必要があるのかもしれません。

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