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女性や子どもの誘拐・売買と、中国の二元論社会ーー”鎖で繋がれた、8児の母親”事件

中国での子ども・女性の誘拐・売買事件

1年で20万件の誘拐事件

20年前、中国のとある都市に遊びに行った際に、せっかくなので、チャイナ服を作ろうかなと、中国人の友人に話したところ、「絶対に1人で行ってはダメ」と言われ、友人の友人・・・・というお店に、一緒についてきてくれました。その時に「危ない店に行くと、試着室に入った途端、連れ去られるんだよ」と、言われ、その時には、「そんな都市伝説みたいなことを」と、思っていたのですが・・・。

その友人をはじめ、何人かの友人には、長距離バスも乗ってはダメだと言われていました。途中下車できないような山奥を走行するようになってから、”事件”が起きることもあるものの、犯人が集団だったり、刃物を持っていたりすると、バスの運転手や他の乗客も、見て見ぬ振りしかできないというのです。

中華圏での生活が長くなり、いろいろなことを知るにつれ、あの時、止めてくれた友人に心から感謝するようになりました。
では、どうしたら誘拐の危険を回避できるのか?と言えば、厳重なセキュリティーを施してそうな富豪が自宅にいる場合にも、事件は起こるようです。

中国の空調・家電メーカー、美的(Midea)グループの創業者で、「中国で最も目立とうとしない富豪」として知られる何享健(ホー・シアンジエン)氏(77)の誘拐未遂事件があり、容疑者5人が逮捕された。
中国メディアの毎日経済新聞や新聞晨報などによると、何享健氏は14日午後5時半(日本時間同6時)ごろ、広東省仏山市にある自宅で襲われ人質になった。何氏の息子の何剣鋒(ホー・ジエンフォン)氏(55)が敷地から抜け出し、近くの川を泳いで渡って警察に通報した。警察が現場に出動し、15日午前5時ごろに容疑者5人を逮捕した。何享健氏は無事で、現在捜査が行われているという。
(2020年6月、レコードチャイナ)

https://www.recordchina.co.jp/b814655-s0-c100-d0054.html

数年前には、香港で下校中の日本人のお子さんが一緒にいたドメスティック・ヘルパー(住み込みの家政婦兼ベビージッターのような職業)さんとともに連れ去られ、コンテナに閉じ込められているところ、救助されたという事件もありました。

中国全土では毎年20万人の子どもが行方不明となっていると言われています。相手は”プロ”。親との関係を築いておいた上で、頃合いを見て子どもを誘拐するという長期的なものや、子ども同士を遊ばせる中で、親の目の届かないところに子どもを連れて行くという子どもを共犯者に仕立てた誘拐まで、”まさか”というシチュエーションでも事件が起こるようです。

”鎖で繋がれた、8児の母親”事件が、オリンピックよりも中国市民の関心を集めたのには、他人事ではないという事情もあると思います。

”仕入れ”感覚で行われる子どもの誘拐

香港の富豪や子息が誘拐される場合、身代金が目的であることがほとんどですが、このような事件はリスクも大きくなります。それよりも頻繁に起こるのが、富豪に比べれば、セキュリティが緩い、一般人の誘拐。目的は、身代金ではなく、人身売買業者に売ることです。人身売買ビジネスは本来、買い手がいなければ成り立たないものですが、中国では、人身売買が組織化され、ビジネス化していると言われています。

逮捕された人身売買業者のインタビューを聞いたことがあるのですが、誘拐をあたかも他の販売業と同じビジネスと言わんばかりの話ぶりで、”誘拐は、子どもという商品の仕入れ”であるくらいにしか思っていないようでした。女性や子どもを、とにかく業者に引き渡しさえすれば、お金になるというのです。
「子どもを失った親の気持ちを考えたことはあるのか?」という問いには、「(誘拐された子どもの親は)また産めばいい」と。そういった罪悪感のない犯罪者に誘拐された子どもたちがどうなるかというと、悲惨な末路しかありません。

”人間を買う”目的

  • 跡取り

  • 強制的な結婚

    • 子どもの出産

    • 数人で共同所有

    • 売春

    • 監禁、虐待、暴行、殺人、薬漬け

    • 冥婚

  • 強制的労働

    • 物乞い、虐待を加えた上での物乞い

    • 売春

    • 農業、炭鉱、製造業

    • 他国へ輸出

  • 臓器売買

    • 生きたまま臓器の摘出

    • 臓器摘出用の子どもを出産

    • 他国へ輸出

子どもを持つ親なら誰しも、「例え自分と一緒にいられなくても、どこかで幸せに暮らして欲しい」と願うものですが、誘拐された子どもが、新しい家庭の子どもとして幸せに暮らすというのは、かなりレアなケースであるようです。

上記にあげたどれもが、どちらの方がマシだというような比較ができないような悲惨なものではありますが・・・。強制結婚の事例として、最近、増えているとされているのが、”冥婚”の際に、生き埋めにされるケースです。冥婚とは、死者が結婚適齢期かそれよりも若かった場合、この世でできなかった結婚をあの世で実現させてあげるというものです。中国では従来、すでに亡くなった女性の遺体をお墓から掘り起こして、夫となる人の遺体と一緒に埋めるというものだったかと思います。とは言え相手探しがなかなか難しいということで・・・。
また、臓器摘出の際には、コスト削減のため、麻酔は使わないそうです。この件は、アメリカに亡命した看護師(元夫が医師)の話が数年前に出ていました。

”仕入れ”感覚で誘拐し、”自分に所有権があるモノ”という感覚で、人間と接する購入者・・・。感覚が麻痺すると、こんなこともできるのかと・・・。

知らないうちに、中国の人身売買に加担!?

とは言え、日本人も知らないうちに加担する側に入ってしまう危険があります。

ある日本の報道番組で、”中国の医療は、日本よりも優れている!”と強調したいがために、”臓器移植の希望者が数週間程度で、手術を受けることができる”と放送してしまったようなのですが・・・。私は日本のテレビが見られる環境にいませんでしたので、その放送を批判する記事で知ったのですが、批判記事が言う通り、この報道は、臓器狩りが横行している中国の現状を、無自覚にも暴露してしまっています。

”全工程オートメーション化導入で、短期納入が可能になりました!”というような、工業製品とは違います。臓器移植は、あくまで提供してくれる人がいて、さらに提供者が”不幸な状況”になって初めて可能になるものです。

全住民対象とした健康検査や、全住民対象とした遺伝子検査は、集めた情報をどうするのか?を考えるとゾッとします。子どもや、タブー食材のある宗教信者等、本来の臓器移植のウエイティングリストではなかなか順番が回ってこないような臓器も、中国では数週間で、移植手術ができてしまう・・・。それはこう言った住民の健康情報を把握できていてこそ可能になると言われています。

また、明らかに安すぎる商品にも注意が必要です。どんなに”企業努力が重要”と言っても、材料の原価や人件費を削減するのには限界があります。成長促進剤が打たれた家畜や農作物を口にしてしまうだけでなく、強制労働者が本来受け取るべきだった給与分、安くなった商品を購入してしまう危険があるからです。

強制労働を強いられるのは、大人だけではありません。

子どもたちは国内各地で誘拐され、レンガ工場に500元(約8,000円)で売られ、1日14時間労働に従事。十分な食事も与えられず、怠けると監視役から暴行を受けた。また、24時間監視下に置かれ、逃げ出してもすぐに連れ戻されていた。なかには暴行を受けて死亡した子どももいた(2007年、朝日新聞の記事を同サイトが転載)。

https://acejapan.org/info/2007/06/2525

子どもや女性の人権、宗教の自由について、普段声をあげている人ーーWOKE企業は特に、”ビジネスの皮をかぶった犯罪”に加担するべきではないと思います。

人身売買が横行する原因

徐州女性鎖骨事件の裏にある深い理由

2月22日付け大紀元にあった、徐州女性鎖骨事件の裏にある深い理由 からの一部(って言っても長いですが)、引用です。

農村社会がどのように一歩一歩進化して、今の姿になったのか。
経済や政治の面では、中国共産党独特の”二元論”社会が70年以上にわたり、農村を搾取し続けてきた。 思想的にも文化的にも、共産党が”貧下中農(*極貧、下、中農民。貧しければ貧しいほど、毛沢東への忠誠心にあつい革命派)”と”ならず者”に指示し、農村の鄉紳階層(*科挙に失敗した学者や、教養のある地方の中小地主、故郷に隠棲したり病気療養のために長く休養していた中小役人)と伝統宗教を一掃したことは、農村の知識階級の消滅を意味するだけでなく、古来から農村で続けられてきた”教育”の喪失を意味した。 民俗や風習は大きく損なわれ、世の中のモラルは低下し、本来の宗族(*血縁共同体、同祖意識)は黒い悪の勢力に変質してしまった。
それは、女性や子どもの誘拐や人身売買の事例からも明らかだ。 女性が逃げ出すと、村では追いかけられ、殴られ、隣人が見ている前で女性は強姦され踏みつけにされた。
共産党が発表したデータでは、全国の20〜29歳の男女比は120:100を超えているが、実態はもっと悪い。 女性は、結婚による上昇志向が強いため、結婚適齢期の農村女性は必然と、都市部や裕福な地域に移動し、貧しい農村には結婚する女性がいなくなる。
しかし、これも中国共産党による資源略奪の結果である。 北部、広州、深圳地域が受けた投資と移転の規模は、国境のない貧しい地域に匹敵しますか?貧しい地域に鉱物資源があっても、まず都市部の企業に取られてしまい、地元の農民たちは、わずかな雇用とわずかな地方税しか得られず、その上、災害や公害が発生する。 これだけの独身者が残っていれば、社会に影響を与えるに違いない。これが、現在の徐州などの地域で女性の人身売買が横行している深い理由である。

大紀元

ゲームの勝者は?

共産主義というのは、みんなが平等の社会だと思い込んでいる、米国リベラル・エリートが少なくないのですが、現実はこれです。中共は色々な形で、国内外に対立構造を作り出します。貧しい農民を唆し、暴徒化し、中小地主の土地や、知識階級の資産を奪うように仕向けました。このベースにあるのは、”自分たちはかわいそうな人たち”であり、それは”良い想いをしてきた奴ら”の責任であり、”知識階級や資産階級は悪人だ”という考え方です。正しいことをしているのだから、暴力を振るうのも正義ですし、”悪い奴ら”の資産を奪うのも正義です。

社会に対する不満というのは、人間であれば誰しも、多かれ少なかれ持っているものです。不満を口にすることは問題ではありませんし、そのような世の中を変えようとするのはポジティブなことだとは思います。ただし、だからといって、何をやっても許されるわけではありません。無秩序になれば、誰しも生きづらくなります。それに、不満に支配された人は、どんなに素敵な生活を手に入れたとしても、そこで新たな不満に悩まされます。こうして社会は、ある種の”無限地獄(無間道)”に成り果ててしまいます。

これにより、得するのは誰か?それはこのゲームを仕掛けた人です。

資産階級から取り上げた土地は、一見、農民に分配されたかのように思われましたが、それは見せかけだけで、結局は、党が全て自分たちのものに。抵抗した資産階級がどんな目にあったのか、間近で見ていた農民らは、抵抗する気持ちにはならなかったと言います。中国は”戦わずして勝つ”の兵法の国。中共にとっては、これは理に適った政策なのです。しかし、闘わされる市民にとっては・・・。

闘わされ続ける市民

コラムには、鄧小平時代の中国についても少し触れられていました。”富める者からまず富む”という先富論により、中国経済が急成長を遂げていた時代です。当時は、全体で富もう(発展しよう)とするインドと比較して、中国の先富論の方が正しかったという論調もあったかと思います。

しかし、現実の中国では、”富める者”を作り出すために、”虐げられる者”からの搾取があったということです。移動を制限するための”戸籍”もありましたから、”能力や意欲がある人が(から)富むことができる”というわけでもありません。それだけに地方農民の、都市部の人に対する気持ちというのは、決して良いものではなかったと推測できます。都会から誘拐されてきた女性に対し、人間とは思えない扱いをしたことに関して、”搾取され続けてきた都市部”に対する気持ちがなかったとは言い切れないかと思います。

ここでも、闘わずして勝つという兵法が生きています。本来ならば、農村部に対する搾取を支持・許可している中共に向かうべき不満を、都市部の市民に向けさせているのです。

では、都市部の人はこの件で、全く問題がないか?とは、そうも言い切れない事件も起きています。そのベースにある考え方は、”富めた者が正しい”ということです。15年前くらいの中国では、少数民族・優遇政策として、貧しくても優秀な学生を大学に入学させる”枠”のようなものを作っていました。ところがせっかく入学した大学に通うことができないという少数民族(地方から)の学生は少なくないという話もありました。支援が中途半端なのです。

当時、聞いた話での”貧しさ”というのが、「片方の靴が履けなくなったものの、1つ(一足ではなく1つ)の靴が買えないため、大学に通えない」というレベルでの貧困。これに対し、貧しい学生をバカにする富裕層もいたようです。これは中国に限らず、どの国でも一定層、存在するかものだと思いますが・・・。彼らの見下し方も酷かったようで、学食で、富裕層の学生の中には、いつも食べきれなかったものをわざと床に落としていたということがあったようです。

何のために?

学食に来ても食事代のない、お腹を空かせた貧しい学生に拾わせて、食べさせるため・・・。このような陰湿ないじめが重なり、最終的にこの貧しい学生が裕福な学生の1人を殺めてしまった事件まで起こってしまったと言います。人を殺めるくらいなら、地方に帰ればよかったじゃないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、地方から、例えば、北京大学に入学するということは、輝かしい未来を約束されたも同然のことです。親や村の期待を一身に背負った学生が故郷に帰るというのは、なかなかできない選択だったのかもしれません。もちろん、人殺しを肯定するつもりは一切ありませんが、こういった対立がその当時も続いていたのは事実です。

トライバル・メンタリティから抜け出す

ここで思い出したのが、生物学的には男性である、トランスジェンダーのコリーナ・コーンさんがインディアナ州議会が1月24日に行ったヒアリングで表明した、女性スポーツを守る法案に賛成するスピーチです。

女性スポーツを破壊する過激派と、権利放棄した女性団体に、生物学的男性が切り込む

「私はトランスとして平和に暮らし、幅広い市民権を享受できる特権を有しています」と、コーンさん。彼女が体験したように、自覚する性と生まれたときの性が異なる人にはサポートが必要であることには変わりません。しかし、それと女子競技への参加は別問題です。彼女の意見は、トランスジェンダーの権利を制限しようというものではありません。女性から権利を奪ってはいけないというものです。

「女性が苦労して勝ち取った権利について、それを譲り渡すことを期待するのは不公平です」。

「トランスは私たちらしく生きるための特権を享受しているが、女性の権利を食い荒らすようなことをし続ければ、その反動は深刻になるでしょう。私たち全員がトライバル・メンタリティ(tribal mentality:部族主義、自分の所属するグループのことしか考えられないメンタリティ)から脱却できればと思います 」。

女性スポーツを破壊する過激派と、権利放棄した女性団体に、生物学的男性が切り込む

自分たちの権利を主張することは、重要なことだけれども、それは、”他人の権利を食い荒らすようなこと”ではないというのです。

中共の政策の失敗の影響を受け、女性の数が男性よりも圧倒的に少ないために、結婚できない男性がいること。そのことは構造的な問題ですので、社会的な解決策が必要なことです。

”家族を作る権利がある!”
”お金を払っただけの権利がある!”

だからと言って、誘拐してきて良いわけありませんし、ましてや女性を物のように扱って良い理由にもなりません。それは、他人の権利どころか、人間としての尊厳をも食い荒らす行為です。

そして、最も残念なのが、このことに対して、「あなたのやろうとすることは犯罪です」と、教えてくれる人が身近に全くいないという現在の状況です。文革時代に、地域の教育者的な位置付けの人々を排除した影響が、今もなお続いてしまっているといえます。

それどころか、”鎖で繋がれた、8児の母親”事件を見ると、地方政府や警察も、犯罪者グループの一員。もともと善悪が何かという教育を受けていない人にとって、子ども・女性の誘拐、そして売買がどれだけ残酷なことなのか?なかなか理解できないものなのかもしれません(だからと言って、仕方がないと言っているわけではありません)。

このような背景を知った上で、「(この事件は)共産党が悪い」というネットのコメントを見ると、このコメントが「アベガー」的な単なる政府批判ではなく、きちんとした根拠のある批判であることがわかります。

北京オリンピック開始時よりも、人権問題への批判はさらなる高まりを見せています。さらに、その批判は国外だけではなく、むしろ、国内からの批判が強くなっています。
今週、金曜日からは、パラリンピックが予定されていますが、果たしてIOCはこれらの声を再び無視をして、続行するのでしょうか?

アメリカの下院の超党派議員は1月19日、IOCが中国当局による人権侵害を無視しているとして、対抗措置となる”無責任なオリンピック協力法案(Irresponsible Olympic Collaboration Act、IOC Act)”を議会に提出しています。これは、IOCがアメリカ国内で享受している免税優遇資格のはく奪を目的としたものです。2018年の免税申請額は20億ドル。(米議員が新法案提出 IOCの免税資格はく奪求める 「人権弾圧で中国当局と共謀」

中国国内で爆弾が飛びかっているわけではありませんが、中共での人権侵害問題でも、大量の死者や負傷者を出しています。暴走している国家というのは、なかなか止めることができません。そのため、それをサポートするような組織、企業に対しての、このような対抗措置が必要だと思います。

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