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(内容には触れずに)シンエヴァを観て、いま思っていること。

漫画家のかっぴーです。「左ききのエレン」を描いています。

つい先程、シンエヴァを映画館で観てきました。これから書く事は本当に「感想」ですので、正しいとか間違ってるとかそういうモノでは無く、エヴァを観て育った漫画家がシンエヴァを観た直後に「思っている事」に過ぎません。予めご了承下さい。内容には触れませんが、何も余計なインプットしないで観た方が良いと思うので、映画を観てから読んで下さい。また何がネタバレになるかも他人には分からないため、便宜上「ネタバレ注意」とします。

また「左ききのエレン」という漫画を描いている漫画家としての感想となるため、私の作品を知らない方からすると、よく分からない文章になるかと思います。

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以下、ネタバレ注意

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まず、新劇場版が始まって「序」を観た時には気が付けなかったんだけれど「破」を観た時に「エヴァを終わらせるために始まったシリーズ」だと思いました。難解なプロットのせいで終わった感が足りず(アニメ最終回なんてまさにそう)、続きを求められてしまったと見る事も出来ますが、私は近年似た作品を観たんです。内容が似てるんじゃなくて、存在理由が似てると感じた作品がディズニーにあります。

「アナ雪2」を観た時に、私はこれを「続編を作るという事」そのものがテーマになっている様に感じました。つまり、ディズニースタジオのクリエイター達や、世の創作に関わる人々のための作品の様に思いました。アナは人間のクリエイティビティの象徴で、孤立し他人に迷惑をかけながらも、誰も見た事も無い世界を作り出す事が出来る魔女だと。「アナ雪2」の冒頭、遠くから声が聞こえてテーマソングを歌い始めるシーンがあります。「イントゥ・ジ・アンノウン」は、アナ雪という世界的大ヒット作品を生み出した後、それでも聞こえてしまった創作の神による囁きかも知れないと。あのシーン、めちゃくちゃ泣きました。

ここまで書いてみて「何言ってんだ??」と思われるかも知れません。それは百も承知で、あくまで私の「感想」なので、アナ雪にそういうメッセージが込められているのだと提唱するものではありません。私が勝手にそう思って、勝手に泣いたのです。

どうしてそういう見方をしたのかという理由の一つに、私が今描いてる「左ききのエレン」の続編「HYPE」は、まさにそれがテーマだったからです。「作品の続きを描く」という事が、HYPEのテーマです。というのも「左ききのエレン」は常に何かに対するカウンターで描き続けています。例えば「少年漫画」です。劇中に「漫画じゃあるまいし」と言う様な言い回しが、ここぞという時に何度か出てきます。これは「少年漫画からの卒業」を目指しているからです。よくエレンは「広告代理店パートはリアル志向の青年漫画の様だし、ニューヨークのエレンパートはフィクションらしい少年漫画の様だ。」と言われますが、当然の事ながら書き分けています。

少年漫画は夢を見せてくれるし、仲間が助けてくれるし、ライバルに勝つ事が出来ます。でも、そんな都合の良い事が現実にあるはずが無いと。それに抗う物語として「左ききのエレン」を描き始めたので「漫画」というキーワードを何度も何度も登場させています。しかし、自分はそうでも、世の中には本当に漫画の様に劇的な人生を送っている人がいます。劇中では、そういった天才達がラスボスとして主人公に立ち塞がるのですが、これはエレンだけの話ではありません。インスタとかフェイスブックで眺める知人の人生が、まるで漫画(漫画は言い過ぎでも、映画とか、プロフェッショナルとか、情熱大陸とか)に見えた事はありませんか?彼はどうして自分とは違う世界に居るんだろうと。エレンで描きたかったのは、というか、少なくとも描きながら気がついた事は「他人の人生は劇的に見える。」という事です。自分の人生が全然漫画の様に面白くなかったとしても、他人の人生が漫画の様に面白そうに見えたとしても、結局は他人だからです。天才にも、天才の「劇的じゃ無い、地味で苦しいだけの、何の学びも無いクソみたいな日」があるんだと思いました。

「左ききのエレン」を描き終えた時に、多くの人に認めてもらって、漫画家として生きてゆく未来も開かれて、自分にとってもとても素晴らしい最終回を迎える事が出来ました。でも、エレンは本当に良い所で終わります。漫画だからしょうがないのだけれど、皮肉な事ですが、漫画へのカウンターとして描き続けてた作品が最終回を迎えて完結すると、漫画になってしまった。それが悪い事だと思っていませんが、やっぱり「左ききのエレンを描いた事そのものに対するカウンター」をやってみないことには、前に進めないと思いました。つまり「HYPE」は直訳で「誇大広告」とか「やり過ぎ・言い過ぎ・過剰」とかそういう意味なんですが、第二部HYPEは「漫画・左ききのエレン」という気持ちなんです。漫画になってしまった左ききのエレンへのカウンターです。だから、過剰な漫画的演出を多様してます。

そういう事に挑戦しているクリエイターの端くれとして、シンエヴァは勇気が湧きました。庵野監督が多用する「シン」も「アンチ・フィクション」だと思うんです。シンゴジラの広告に使われていた「現実VS虚構」だと思うんです。それが合ってるか間違ってるかは分かりませんが、そう思いました。

だから、誠に勝手ながら、と言うか「一人で勝手に思った」事に過ぎませんが、庵野監督がやろうとしている「シン〜」という作品群を観る事で、HYPEという「VS漫画」を頑張って描かないといけないなと思いました。

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