スクリーンショット_2020-03-12_12.02.00

株式会社なつやすみは、月の半分を休みにします。

漫画家かっぴーの「株式会社なつやすみ」は2020年4月1日から、月の半分を休みにする「半月休制度」をはじめます。

土日休みの場合、おおよそ「8日/30日」がお休みになるので、株式会社なつやすみは、その倍程度が休みになります。これまで「働く日数」と「年商」は比例すると思っていたのですが、去年辺りから実験を繰り返し、そうとも限らないと確信が持てたので「働く日数は大幅に減らし、仕事の価値を高めて、年商も上げる」という事にチャレンジしようと思っています。

この辺の話は、先日の記事でも書きました。

そもそも「株式会社なつやすみ」という社名は「夏休みの自由研究の様に、のびのびと熱心に取り組んだ仕事が、何よりも良いものだ」という想いで命名しました。ですので「健やかに休む」という事が仕事に対しマイナスになるはずも無く、むしろ「休むことで、より良いものを作れる」と信じています。

もう少し具体的に言うと、ぼくの漫画「左ききのエレン」で「才能の正体は集中力の質である」という台詞があるのですが、まさしく「心と身体が健やかな時に、集中力の質が発揮される」と考えているためです。そして、この「心と身体が健やかである状態」のために、絶対に大事に守らないといけない事があります。

それは、家族も同じ様に心と身体が健やかである事です。

ぼくには妻と1歳の娘がいて、彼女達の健やかさのために、もっと出来る事が無いか日々考える様にしています。例えば「育児」は大前提で、娘が生まれた直後は「少しでも多く貢献しよう」と自分なりに頑張っていたつもりでしたが、それは母親からするとスタンスから違うと。「貢献」とか「協力」じゃなく、父親という当事者に心を切り替えて欲しいと叱られました。今では少しは父親になれてきたかなと思っています。また、娘との時間だけじゃなく「妻が仕事できる時間」「妻が一人になれる時間」そして「妻と一緒に過ごせる時間」も大事にしたいと思っています。

共働きの夫婦間で育児にかける時間に偏りがある場合、母親あるいは父親のどちらかが育児の大変さをパートナーに訴える事があると思います。それは「育児が大変だ」とか「育児がツラい」とか、そういう趣旨の話じゃなく「あなたがやるはずの事を、私がやってる」という点に不満があるんだと思いました。その不満の解消方法が「ちゃんと公平にやる」なのか「もっと日々感謝しろ、褒め称えよ」なのか「第三者の手を借りる」なのかは、ご家庭毎によって違うとは思いますが。

ぼくは、仕事に集中している時は全てを忘れてしまいます。家族の事を想いながら「家族のために」なんて働けていませんでした。今もそうです。でも、誤解を恐れずに言うなら仕事中に家族の事を思い出す必要なんて全然無くて、目の前の仕事に全てを捧げて良いと思うんです。その代わり、オフになる時は完璧にオフになる。

これは人によって考え方が違う所だと思います。「オンもオフも無い。常に仕事のアンテナが〜」みたいな考え方は当然あるかと思いますが、ぼくの場合は放っておくと作品の事ばかり考えてしまって止め処が無いのです。集中力の話で言うと「集中の浅瀬にずーっといて消耗するくらいなら、しっかりと陸に上がり、潜るべき時に深海まで一気に潜る。」というイメージを目指しています。

ただ、誤解して欲しく無いのは、ぼくは独身時代は馬鹿みたいに働きました。20時間漫画を描き続け、指が痙攣し始めて頭痛薬が効かなくなったら仮眠をとる、でも頭の中で物語が勝手に再生されていて眠れずにベットで何時間もメモを取っている…みたいな生活をしていました。これは、自分がやりたくてやった事です。作家に限らず、どんな働き手にも「今やるべき事」があると思っていて、全ての人に「半月休制度」をオススメするつもりは毛頭ございません。個人的な好みで言えば、ぼくは馬鹿みたいに働いた事が無い人はあまり信用できないです。ただ、その働き方を一生続ける必要は無いとも思っています。少なくとも今は「ぼくと家族の心と身体が健やかである事」が良い作品をつくるために必要な事で、最優先事項です。

また、この「半月休制度」の具体的な影響ですが、少年ジャンプ+のリメイク版「左ききのエレン」は、4回に1度は番外編にさせて頂きます。本編の更新を月一で休む。言い訳がましいですけど、エレンはジャンプラの週刊連載の中で一番の長寿連載なんですが、休んだ回数は一番少ないそうです。これはぼくの頑張ってるアピールでは無く、作画のnifuniさんが偉いです。イレギュラーな出張版とか広告案件があっても、本編を休まなかったのは本当にnifuniさんの努力のお陰。この4回に1回番外編なりの息抜きをさせて頂く事で、nifuniさんも「普段できない作画の研究ができる」と前向きに仰っています。

cakesの原作版「左ききのエレン」は、同じく4回に1度程度はお休みにするつもりですが、こっちは週に2話描ける時も結構あるので、それを翌週に回すなどして何だかんだ毎週に近い頻度で更新できる、かも知れません。ちょっとお約束は出来ませんが、ただでさえHYPEは物語の進みが亀なので(笑)読者にとっていい形で連載できたらと思っています。

また、先日終了したクラウドファンディングのリターンに関しては、当然ですが予定通り進めております!支援して良かったと思って頂ける様、お届けるするまで全身全霊で頑張ります!この様な「連載以外のお仕事」は、元から連載の合間の時間を捻出して取り組んでいたので、変わらず出来るはずです。

長くなってしまいましたが、これまで以上の熱量を集中させる事で「左ききのエレン」をもっと良い作品にしてゆきます。第二部HYPEで描こうとしている「現代の働き方」へのリアルなアプローチでもあるので、ぼくの「半月休制度」が上手くいったら、きっと朝倉光一も一皮剥けてくれるんじゃないかと期待しております。

それでは、今後とも宜しくお願い致します!

かっぴー


サポートも嬉しいですが、よかったら単行本を買ってください!