見出し画像

重みづけ

前回の話の続きです。この流れの話はそろそろ終わりにしたいと思っています。

前回は、環境影響を評価するには様々な観点からの評価が必要というお話をしました。

そして、この複雑で数の多い観点の評価を、総合的に判断しようというツールも多数開発されています。この分野ではかなりの努力がされているのです。

ただ、総合的に判断しようとする時には、それぞれの値に何らかの重みづけをして評価する手法を取られることが多いです。例えばエネルギー消費と材料消費は全く違う単位のものですから、どちらの値がどのぐらい重要か決めておかないといけません。

まだ、エネルギー消費と材料消費ならそれなりに判断ができそうですが、これが伐採する森の面積と、そこに設置するソーラーパネルで得られるエネルギー量というような値だったらどうでしょう?(エネルギー量と森の面積を普通は直接比較しないでしょうが。)

森を伐採すると、森が失うCO2吸収量、生態系への影響、地盤への影響、小気候の変化などなど、いろいろな影響がありそうです。どの要素がどのくらい重要かなんて、よく分かりませんよね。

開発されているツールでは、人間の健康に与える影響、使われる地下資源、エネルギー消費、CO2排出量、排出されるゴミの量、有毒物質の量、空気や水への影響などを総合的に評価して指標を出しています。ツールによって評価する項目や手法は違いますが、重みづけをして評価をしていることが多いです。でも、こちらもどの項目がどのくらい重要かなんて、本当は分からないですよね。

こういう数字の本質を理解していたら、本当はツールを使った環境評価を元に、何かが大丈夫とかダメとか言い切れないと思うのです。どんなに注意深く調整した値だったとしても…です。せいぜい言えても、「この調査とツールではこういう評価だけど、大体合ってるかな…?それほど影響はなくて大丈夫な気がする。大事な項目を網羅しているといいのだけど…。」という感じでしょうか。

そのように考えているので、私の場合は、誰かが何かの数字を提示して環境評価を語っていたら、警戒フラグが立ちます(笑)。これがブラックボックス的なツールが出した値だったらさらに警戒レベルが上がります。

このようなツールを作った方達や評価の努力をされている方々はリスペクトしているのですが、評価ツールは使う人の資質が求められるものだと思うのです。専門家がツールで出した数字を見せて何かを主張したら、一般人にそのまま信じさせる力があるというか。ある意味、危険だと思います。

評価ツールは、とても複雑で把握するのが難しい環境への影響を分かりやすく評価していて、使いようによってはよい指針になるはずです。でも残念ながら、あれれ??と思う使い方がされているのもけっこう見かけるのですよ。信頼がおけると言われているドイツのメディアでも。


この記事は別ブログに書いたものを移行したものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?