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足助のおばさん 田舎暮らし 234

今は夫とおばあさんの3人暮らしですが、そのおばあさんが入院して長期に留守だった時期があります。おばあさんは胃癌患者の先輩です。
おばあさんが癌を宣告されたのは、まだ息子が私のおなかにいる時でしたので、それを口実に私はおばあさんに付き添うことはもちろんお見舞いに行くこともしませんでした。(その代わり、その後何年もおばあさんの通院に付き合うことになります)。そのおばあさんが不在の3カ月ほどが、私が足助で暮らした間での最高に幸せな日々でした。
とりわけ記憶に残っているその景色は、庭に植えられた白菜にうっすらと雪が積もっています。北海道生まれの私から見ると「積もっている」と言うほどの量ではありません。洗濯物を干している私のそばで、娘が赤いジャケットを着て雪をかぶった白菜畑を行ったり来たりを繰り返していました。青空を見上げて、こんな時間が続けばいいのに、と不埒なことを考えていました。(絵になるでしょ。)
おばあさんは自分でお葬式の段取りまでして入院しましたが、手術から30年余り我が家の権力を握り続けています。胃癌の予後がよいという見本として頼もしいですが、自分の老後はお一人様がいいな、と、ひそかに思っています。(2020年11月24日 記)

(元ブログ 幸せだった頃: Here Come the 足助のおばさん (asukenoobasann.com)

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