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ウエルシアの24年2月期1Q決算を分析

ドラッグストア最大手のウエルシアHDは、7月10日に24年2月期の第1四半期決算を発表しました。どんな内容だったのか分析していきます。


3-5月期経常は19%減益で着地

1Q実績

増収減益での着地になりました。売上11.4%増の2982億円、営業利益4.3%減の73.8億円、経常利益18.8%減の85.2億円、最終利益18.9%減の51.2億円。経常利益の通期計画525億円に対する進捗率は16.2%でした。

出典:株探

今期予想

業績予想に変更はありません。売上7.5%増の1兆2300億円、営業利益5.2%増の480億円、経常利益0.7%増の525億円、最終利益3.6%増の280億円

出典:株探

既存店売上高は堅調もコスト増が響いて減益

二桁増収も営業利益・経常利益ともに計画未達

ウエルシアの1Q決算は今期増収増益の予想に対して、減益での着地となり、出鼻をくじかれた印象です。

売上こそ二桁の増収とほぼ会社計画通りでしたが、売上総利益が伸び悩んだことと販管費が増加したことで、営業利益・経常利益・当期純利益ともに計画未達になりました。ウエルシアの計画未達はよくあることとはいえ、10p超下回っているのはマイナスインパクトです。

出典:決算説明資料

なお経常利益の減益幅が大きいのは、前期に補助金収入18.7億円を計上した反動の影響が大きく、一過性の要因です。

出典:決算短信

売上は4四半期連続で二桁増収で着実に伸びていて、こちらは好印象です。

出典:株探

販管費増が重荷で利益率が低下

損益計算書を見ていきます。

売上総利益率 29.3%→29.4%
販管費率   26.4%→26.9%
営業利益率  2.9%→2.5%

粗利率(売上総利益率)は少しだけ改善も、光熱費(前期比125%)とWAON POINT導⼊コスト増が響いて販管費率が上昇し、営業利益率を押し下げたことが分かります。人件費や電気代の上昇でコスト増はある程度仕方ありませんが、もともと高い販管費率がさらに上昇しているのが気になります。

販管費そのものも前年比113.7%、1年前の105%から伸びが加速しています。高コスト体質に変わりつつあるなら、どれだけ売上が伸びても利益は増えにくくなります。

具体的にどのコストが増えているのか説明資料を見ると、

人件費 111.5%(107.5%)
広告費 131.7%(24%)
貸借料 117.5%(113.6%)
その他 114.6%(117.5%)
()は23年2月期1Q

インフレで時給が上がっているので人件費の1割増は妥当、水道光熱費の増加が継続していることでその他の14.6%増も妥当でしょう。その他については前年よりも伸び率が鈍化しているので、節電などで電気代の上昇をある程度抑えていることが窺えます。

広告費は3割増、金額ベースでは1年前の11.58億円→15.25億円に3.67億円増えています。 約418億円かかっている人件費に比べて小さく見えますが、広告費の3.67億円増がなければ営業利益は77.47億円でわずかですが増益で着地していたことになります。

出典:決算説明資料

WAON POINT導⼊コストは広告費に入ります。ウエルシアでもWAON POINTが付与されるようになったことは客数増に繋がっているはずですが、Tポイントも従来通り付与しています。ポイントの二重取りが可能になったことで、ウエルシアの負担は確実に増えているはずです。ポイントばらまきで広告費が嵩んでいるのでしょうか?

既存店売上高は堅調に推移、客数も減っていない

既存店売上高は前期比プラスが続いていて、客数も減っていません。月次は堅調そのものという印象です。

なお既存店売上高は23年5月まで15ヶ月連続でプラスが続いています。客数も12ヶ月連続でプラスが続いています。多くの小売が物価高で売上は伸びていても客数は減少傾向にあるのに、ウエルシアは客数が逆に増えているのは好印象です。

出典:決算説明資料

1Qの出店数は計画33に対して38、総店舗数は2791になりました。引き続き積極的な出店を続けていることで店舗数は右肩上がりに増えていますが、出店が計画よりも多かったことも販管費増に繋がっているように見えます。

出典:決算補足資料

調剤と化粧品の伸びが目立つ

商品カテゴリー別では粗利率が高い調剤と化粧品の伸びが目立ちます。

調剤は処方箋枚数の増加が寄与して+17.6%と堅調に推移、化粧品は外出機会の増加で+12.7%、前期の10.7%増から伸びが加速しています。コロナの5類引き下げによる好影響のほか、決算短信によるとインバウンド需要には回復の兆しがあり、化粧品の売上が順調に戻っているのは安心材料です。

出典:決算短信

また粗利率は医薬品と化粧品がやや悪化も、雑貨と食品は改善しています。

ただし食品の粗利率は19%と低いうえ、0.3p改善したとはいえ販管費率は0.5p悪化しているので、利益はむしろ減っていることになります。完全に販管費負けしているので食品は赤字の可能性もあります。ドラッグストアは安価な食品で客寄せして、粗利率の高い医薬品や化粧品をついでに買ってもらうことで利益を出すビジネスです。


出典:決算説明資料

広告費3割増で営業減益、一過性で終わるか?

ウエルシアHDの24年2月期第1四半期決算を分析すると、月次が堅調だったことで売上は順調に推移も、販管費増が重荷で減益になったことが分かりました。

販管費の内訳は人件費が11.5%増、水道光熱費を含むその他が14.6%増、広告費が31.7%増、このうち前期から伸びが大きく加速しているのが広告費でした。増えた理由はWAON POINT導⼊コストで、Tポイントと併用することでポイント負担が増していることが想像できます。また金額で見ると広告費は前期から3.67億円増えていて、これがなければ1Qの営業利益は増益だったことになります。WAON POINT導⼊コストは一過性要因ですが、広告費が今後も伸びていかないか気になるところです。

ほかに計画よりも出店数が多くなったことも販管費増に繋がったように見えました。とはいえまだ1年の1/4が終わったばかり、進捗率は低めですがウエルシアは2Qと4Qに利益が伸びる傾向にあるので、今後の巻き返しに期待したいところです。

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