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【ひとりごと】 切る!絶対!


ワタシの家はねえ。

ベランダからアレが見えるんですよー。

アレですよアレ。

夏の風物詩の。

みんなありたがって出かけていき
人混みに揉まれて
ギュウギュウ詰めになっても
でもどうしても見たいと切望して止まない

あの花火ってやつが。

ワタシの住んでる街の夏祭りで
毎年上がるんですがね。

ワタシは出かけなくていいんです。
だってベランダから見えるんだから。
ええ、自宅のね。

風呂上がりの良い気分で
缶ビール片手に二階への階段をトントンと登り
サッシと網戸を開けてベランダに出れば
そこが貸切の花火会場です。

涼やかな風が洗い立ての髪をくすぐり
冷たいビールが日中の火照りを心地良く冷まして

そして。
どこか懐かしい、あのドーンという音に誘われて眼を上げると‥‥。

そこに見えるのは‥‥木だ。

木。
木?
木だ。
木しか見えない。

いや、そんなことはない。
見えるじゃないか花火が。
ほら、木々の間から。
葉や枝や幹の隙間に。
赤や黄色や青や。
煌めく光が確かに見えるぞ!

ほんのちょっとだけ‥‥。


く、くそう。
よりによってなんでそんなトコに生えてんだ。


いつか必ず切り倒してやる。


あの木め。



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