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美しいと醜い

トニ・モリスンの「青い眼がほしい」を読んだ。

ノーベル文学賞を受賞した、アメリカの黒人女性作家の作品。大学の米文学の授業で少し読んだんだけど、そのときは鼻息の荒い周りの雰囲気に、こちらが拒絶されたような心持ちになって、興味はあったがちゃんと読む気になれなかった。芸術作品に出合うきっかけって大事。

主軸は黒人の少女が父親にレイプされる話で、その周りの人たちの生い立ちなどが語られることで、どうしてこの悲劇が起こってしまうのかを示す経緯と状況がつまびらかになっていく。暗い話だけど筆致はポップで、読みやすかった。

白人の男、白人の女、白人でない男、白人でない女で4分される地獄みたいな世の中で、最下層に位置づけられる黒人の女性という存在。少しでも肌や瞳の色が薄くて、髪がちぢれていないほうが容姿ひいては社会的地位が優れていて、自分や自分たちはお人形みたいじゃないから醜いと感じる子どもたち。なんだこの地獄はと思いつつ、僕自身も自分が非白人であることに当事者としてしっかり絶望できた。

この本がアメリカで出版されたのが1970年。作者のピュリッツァー賞受賞が1988年、ノーベル賞受賞が1993年。ついでに言うとオバマの大統領就任、ノーベル平和賞受賞が2009年。

日本はいい加減そろそろ、「美白」って言葉を国会でシュレッダーにかけたほうがいい。

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