謙虚と傲慢

僕の勤務先に手作りのお菓子を卸している方がいる。その方はこちらが辟易する程のネガティヴタイプ。故・立川談志師匠が言っていた

「行き過ぎた謙虚は傲慢」

を体現したような人で、納品の際いつも売れ残ったお菓子を見ては「やっぱり売れませんね…」等と呟いている。

正直、こちらとしては商品を「置かせてあげている」立場。勿論マージンも手数料も取らない。売れようが売れまいが、うちの利益は無しである。なので、上記のようなネガティヴな事を言われても、基本何も言わないのだが、今回は違った。要は

「イラッ」としてしまったのだ。

売ろうとする努力も熱意も無く、ただ惰性で納品し、商品が売れない事を卑屈に言う。そんな人間が作った商品が売れる訳無かろう。自分が作った商品によくそこまでネガティヴになれるものだ。いや、内心では

「なんで私が作ったお菓子がこんなにも売れないの?」と、思っているのかも知れない。しかし、それこそ傲慢である。

どんなに作り手が良いと思う物、拘り抜いた物でも、売れなければ、支持されなければ無価値なのだ。それでも自分の我を貫くならば販売などしなければ良いのだ。

というような事を割とマイルドに(早口で)伝えたのだが、果たしてどれ程届いたであろうか。

-納得して考え抜いた改良品を持ってくるか。

-自尊心を傷付けられて、商品を引き下げるのか。

はたまた今まで通り、何の工夫も無い商品を謙虚に卑屈に納品し続けるのか…。