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【読書と感想】#感想っぽ シャーデンフロイデ〜他人を引きずり下ろす快感

中野信子/著
『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』
幻冬舎

シャーデンフロイデとは、ドイツ語の単語
「シャーデン」が損失、「フロイデ」が喜び
つまり「他人の不幸を喜ぶ感情」
この説明を読んだ時点で、
「ウッヒョ〜(汗」となるわたし

「誰かが失敗した時や、不幸になったときに、巻き起こってしまう喜びの感情」
という説明…読み始めからキョーレツ!

もしそんな感情が湧いてしまったら
「他人の不幸を喜ぶ自分は、なんて嫌な奴なんだろう」
と、きっと多くの人が思うだろう

こんな不要に思える感情 なんで?
なくすことはできる?
そもそも
なぜこの感情は起きるの?

そんな読み手の疑問に答えるようにこの本は進んでいく

実は、この無くしたいと思えるような感情は
オキシトシン
あの「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンと
とても深い関わりを持っているというのだ

家族や子へ愛情を感じたり
仲間を大切にしたり
子供をかわいいと言う気持ち幸福感をもたらしてくれる
心理的に良い影響があると言われるホルモン
オキシトシン…となんの関わりが?!

身体の成長や回復を促したり
免疫を高めるなど、肉体的にも望ましい
喜ばしいホルモンだと言う印象がある

そんなオキシトシン
なんと、これらの効果と同時に
他人を「妬む」と言う感情も
強める働きがあることがわかっているそうだ

なんと、愛情ホルモンであるオキシトシンが
「シャーデンフロイデ」という感情を強めてしまうそうなのだ

おーまいっがっっ!

オキシトシンといえば有名なのが
女性は出産や授乳の際に
大量に分泌されるものだということ
オキシトシンの働きによって
母親は子どもに対して強い愛情を抱くようになる
そのほか、入浴やマッサージ
ヨガをしている最中にも多く分泌されることがわかっている

ちなみに本書には
オキシトシンが人と人の繋がりを強める働きがある
それを証明する実験結果なども多数、掲載されていた

誰かとの間に、情緒的な特別な絆ができる
つまり、「愛着形成」がされる際
オキシトシンが大きな役割を担っている
ということがわかっているそうだ

「私から離れないで」
「私たちの邪魔するものは許さない」
など、オキシトシンのバランスが崩れている人も
現代には多く見られるそう…

「あなたのためを思って」
「あなたのことを理解してるのは私だけ」

そのような発言をする人は
オキシトシンのバランスが悪い
つまり不安定型の愛を持つ人

こう考えると、わたしが真っ先に思い浮かべたのは
毒親という言葉だった

この本の中には妬み感情の例として出てくるのは


「同僚に恋人ができ、その恋人に実際に会ってみたところ
外見も容姿もよく性格は穏やかそうで、頭も良さそう
どうしてあの同僚が、こんな素敵な人とお付き合いできているのだろうか」
こんな悔しい気持ちのことを「妬み」と言う
そして、この同僚が恋人と別れてしまったときに湧いてくる感情
それが「喜び」だった場合
その感情を「シャーデンフロイデ」と言う

シャーデンフロイデ:中野信子

そこで著者はこう問いかけてくる

「そんな感情が、なぜ人類の長い歴史の中で残り続けているのか?」
妬みや、シャーデンフロイデと言う感情には
何か重要な役割があるのではないか、と


ここからは著者の見解を参考に
わたしの主観で、感想を織り込んでみる


日本を含め多くの国では一夫一妻制がとられているが
その中で時に「乱婚型」の行動をとってしまう人がいる

それは、一夫一妻制のルールを守っている人や
現状のシステムから利益を得ている人にとっては非常に脅威である

浮気性の人たちによって
自分たちの家族や共同体が脅かされるから!

芸能人の不倫や浮気が
週刊誌やワイドショーで大きく取り上げられ
長期間にわたって報道される

ちなみに…
「直接自分には関係ないのに、なぜそこまで関心を示し
そこまで怒るの??」
少なくとも、テレビを見ない、芸能ニュースに疎い
ほぼ時差がある状態でこういった情報を見聞きするわたしには
これはなかなか不思議な光景だ


特にそれまで良いイメージを抱いていた芸能人ほど
強い批判を浴びることになる

シャーデンフロイデは、
このように共同体にとって
都合の悪い個体を発見し追放するために生まれたと考えられる

シャーデンフロイデ:中野信子


あの人だけ目立っている
あの人は、今までのやり方を守ろうとしないなど
そのような「異端児」を発見し、排除しよう
という感情が無意識に働き、その人を排除したときに湧き上がる喜び
これがまさに「シャーデンフロイデ」
この感情には、既存の集団や社会組織を守る働きがあるのだ

なんと、ほとんどの人間の脳は
「目立つ人が失敗すること」を社会正義だと本能的に感じ
そこに喜びが沸き上がる

なんとっ!!

つまりシャーデンフロイデは
共同体運営には不可欠だったと考えられるのだ

共同体には、ルールがあり
そのルールが個人の行動を統制し
一体感が生じさせるという性質がある

生物学的には、共同体に対する愛情の度合いは
オキシトシンの分泌量が多いほど強くなると考えられ
人は、共同体を作ることで生存の確立を高めてきた

ということは、生存の確率を下げる要因は
「共同体の崩壊」につながるということになる

共同体が崩壊する要因となるのは
「外部の敵と、内部の敵」
共同体の結束力を高める外部の敵と違い
内部の敵ほど厄介なものはない

共同体は、そこにいるメンバーが
時間や労働、金銭的または心理的負担など
何かしらのリソースを提供することによって成立している
そのメリットをみんなで享受するのが共同体


そこに何のリソースも提供しない人
「異端者」が現れた場合
その人は「ただ」でメリットを享受しているということになる

それを放っておくと
同じように考える人が出てきてしまい
共同体は崩壊してしまうと言える


だから
そうなる前に、ルールを破った人に対して制裁を加える

制裁を加えることで、「反撃される」と言う危険が生じるが
そのリスクを下げることが叶う
つまり多数側に属して
ルール違反を制裁することで快感が得られる脳内物質が
わたしたちの脳内で分泌されるようになった

そこから得られる快感は、非常に大きなもので
「制裁を加えられる相手を探し出す」
と言う事までさせてしまう力があるのだ
(ヒョエーーー!)

子供から大人までほとんどの人が
集団(多数)側に回ってしまうのは、人間の宿命と言えるかもしれない

オキシトシンの作用は
仲間意識を高め、愛情深める良いものだと考えられてきたが
一方で、妬みの感情を高めることもわかってきている
仲間意識や愛情が強くなり、オキシトシンの分泌量が増えると、共同体や人との関係性を守ろうとする本能が働く
そのため、妬みの感情が高ぶり、異端者を排除しようとするシステムが発動
結果として、その異端者が不幸になった時、私たち人間は快感を得てしまう

シャーデンフロイデ:中野信子

シャーデンフロイデという他人の不幸を喜んでしまう恥ずかしい感情は
私たち人類が共同体を運営していく上で
やむを得ず必要だったということがわかってきているのだ

人は生まれ育った環境がそれぞれ異なるため
シャーデンフロイデという感情が
強く出る人と、そうではない人がいる

どのような人がシャーデンフロイデという感情が強く出るのか

「最後通牒ゲーム」と呼ばれる実験(詳細な説明は割愛)
この実験で分かったことは
拒否権の発動という「合理的ではない決断をした人」は
『相手が得をし、そんなに多く取るならば
たとえ自分の取り分が0になったとしても
相手に良い思いはさせたくない』
という感情を抱き、合理的判断ができなくなっているということ

もう一つ、この実験で分かったこと
それは、実験で拒否権を発動しがちな人と
拒否権はあまり発動しない人が明確に別れたということ

性格検査の結果で、「協調性の高い」被験者の方が
拒否権を発動する確率が高いことがわかったのだ

協調性の高い人は、共同体の利益
つまり、公平性を重んじる傾向があり
不正に利益を得を得ようとしている相手を許すことができない
つまり、「自分が損をしても、相手を許さない」
という行動をとる傾向があるという

合理的ではない判断
つまり拒否権を発動しやすい人たちの脳内では
「セロトニントランスポーター」という
タンパク質の密度が他の人たちと比べて低いということがわかったのだ

このセロトニントランスポーターというのは
セロトニンを動かすポンプのような役割を持ったタンパク質

セロトニンは不安を感じにくくする物質で
セロトニンの働きが活発な人は不安を感じにくく
楽観的な判断をしやすい

セロトニントランスポーターの密度が低ければ
セロトニンの働きが弱くなり
物事をいい加減に考えることができない神経質な性格になりやすい

そのような人は、自分が少しでも傷つけられたと感じたりすると
自分が損をしてでも復讐をせずにはいられない

このセロトニントランスポーターの密度は
遺伝的に決まっていると考えられ
日本は他の国々の中でも飛び抜けて密度が低いと言うことがわかっている

つまり合理的ではなく、神経質でいい加減な人を許せない人が多い
つまり、「シャーデンフロイデを感じやすい人種」であるといえる

これは日本が島国で
自然災害が多いということが大きな理由の1つと考えられている
周りを海に囲まれた島国であり
心配性な方が自然災害に対する対策をうまく講じられる

一方で、アフリカ、アメリカ、ユーラシアなど大陸の人たちは
このセロトニントランスポーターの密度が高いことがわかっている

その理由は、リスクを取っても新天地に向かい
外部との接触をも恐れないという
楽観的なタイプの人が多く生き延びたため
そのような遺伝子が引き継がれている


つまり、私たちの現在は、過去によって作られており
努力で変えることは難しい部分も多くあるということ

日本人の国民性について、「几帳面すぎる」
「日本の常識は、世界の非常識」と批判する人もいるが
それはいいとか悪いとかの問題ではなく
私たちの祖先が
災害が多いこの国において生き延びていくために獲得したものなのだ

シャーデンフロイデが湧き上がったときに
この感情をなくしてしまい!となるだろう
それは変わらない感覚

それはなくすことはできないということがわかった今
大切なのは、これからどうするか
その感情とどう付き合っていくか

「日本人はセロトニントランスポーターが特に低く
神経質で妬みの感情が強い傾向にある」
そう知った今
まずはその日本人の一人であるということを
自覚してみるところからはじめてみようと思う


読みながら飲んだ珈琲
トリプルエスプレッソラテ/スターバックスコーヒー
(カスタマイズ・・・ソイに変更、ノンシロップ)


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