見出し画像

オロオロ月

まっくらな なつのよる 

そらのうえで たいくつ していた おつきさまは 

ちじょうに おりてきました


いけの まわりを かぜの ように

ぐるぐる びゅんびゅん さんぽして いると 

からだが きのえだに ひっかかって しまいました 


なんども からだを ゆすって みても 

まったく ぜんぜん とれません 

おつきさまは こわくなって 

わんわん ぽたぽた なみだを ながしました 


おつきさまの なみだで いけは きいろく そまり 

ゆらゆら かがやく おつきさまの ひかりで 

もりの きぎや とりたちも めを さましました 


ゆめを みていたはずの おんなのこも 

いつのまにか もりの いけに やってきました 


おんなのこは ないている おつきさまを みつけると 

あっというまに からだを ひょい と つかまえました


おんなのこは まだ はんぶん ゆめをみていたので 

おつきさまが おりて きていることを 

まったく ちっとも ふしぎに おもいませんでした


おんなのこは うでを ちからいっぱい ぶん! ぶん! とふりまわすと 

おつきさまを おそらに なげて かえして あげました


おつきさまは すっかり げんきになって 

いつもの よぞらに かがやいています


おつきさまは おれいに つきのいろの くつを 

おんなのこに プレゼントしました


つぎのあさ おんなのこが めをさますと 

つきのいろの くつが あしもとで 

きらきら きらきら かがやいて いました

 

「ゆめで みた おつきさまは ほんとう だったのね!」


おんなのこは つきのいろの くつを 

ずっと ずっと たいせつにして くらしました


(おしまい)

ーーーーー

今日は、こどもたちといっしょに水彩やクレヨンで絵を描いてあそびました。描いているうちに私もたのしくなって、ちぎったり貼ったりしながらお話を考えました。それでも、こどもたちの想像力にはまったくもって追いつきません。

こどもたちは、描いたそばからハサミできって、人形のようにしながら、ひとりでに物語をはじめていきます。そこには、無数のバリエーションと終わらないほどのエピソードが、瞬間瞬間にあふれてくるようです。

私もそんなふうに描いてみたい。とは思うけれど、どうやらそうはいかず、いつもうまくまとめようとしたり、賢くみせようとしてしまうのです。大人になるにつれ、いらないものまで知りすぎてしまったのかもしれません。

もしかしたら、純粋な人間としての創造力は、産まれた瞬間がピークなのかもしれないなと、きらきらしているこどもたちを見ながら思うのです。私は、木の枝に引っかかったお月様みたいにオロオロしながら、それでも何かを残していければいいな。

この記事が参加している募集

#子どもに教えられたこと

32,927件

いつも見てくださったり、イラストを使ってくださってありがとうございます。いただいたサポートは、子どもたちのおやつになります。