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線状降水帯と上層寒冷低気圧(UCL)

こんばんは、nooooon(@nooooon_met)です。


昨日(8/13)朝、岩手県の内陸で大雨が降り、「顕著な大雨に関する気象情報」が発表されました。

顕著な大雨に関する岩手県気象情報 第1号
2023年08月12日07時50分 盛岡地方気象台発表

岩手県内陸では、線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いています。命に危険が及ぶ土砂災害や洪水による災害発生の危険度が急激に高まっています。

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解析雨量で3時間降水量を確認すると、岩手県大槌町では150[mm/3h]の降水が解析されており、顕著な大雨に関する気象情報の発表基準のひとつを満たしていたことが分かります。

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地上天気図を見てみると、この大雨が降った際、三陸沖に低気圧があったことが分かります。

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この低気圧、8/12の3時から地上天気図上で解析され始めていました。一方で、気象衛星の水蒸気画像を見てみると・・・

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8/11の時点で、日本の東に反時計回りの低気圧性循環があり、三陸沖の方へ進んでいく様子が伺えます。

高層天気図で300hPa面の図を見てみると、8/11の21時の時点で日本の東に低圧部が解析されていて、周囲よりも低温であることを示す「C」印も描かれています。

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このような中心ほど気温が低い低気圧は「寒冷低気圧」や「寒冷渦」と呼ばれ、地上に低気圧を伴わない寒冷低気圧は「上層寒冷低気圧UCL:Upper Cold Low)」とも呼ばれます。

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/expert/pdf/yougo_senmon.pdf


8/12の3時台に発表された「短期予報解説資料」でも、UCLについて言及されていました。

1.実況上の着目点
③日本の東には 300hPa -30℃以下の寒気を伴った上層寒冷低気圧(UCL)があって北西進。衛星水蒸気画像や赤外画像では循環が明瞭で、周辺では対流雲が発達し、雷を検知している。

2.主要じょう乱の予想根拠と解説上の留意点
③ 1 項③のUCL 直下に、12 日朝までに地上の低気圧として顕在化し、12 日夜にかけて東北地方日本海側へ進む。低気圧に向かって太平洋高気圧縁辺の下層暖湿気が流入し、大気の状態が非常に不安定と なり、雷を伴った激しい雨の降る所がある。EHI等の突風関連指数が大きいことに留意。12 日は、落雷や竜巻などの激しい突風、降ひょうに注意。

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UCLの場合、地上天気図だけを見てもその存在を認識できないので、天気予報等で「上空の寒気の影響で〜〜」などといったキーワードが出てこないか、注意が必要です。
一方で、今回のUCLの場合、8/12の3時からは地上でも低気圧が解析されていましたが、この低気圧の顕在化前から、天気図上では気圧の谷として表現されているように見受けられました。天気図を作成された方のメッセージのようなものを感じます。


ちなみに、寒冷渦については、これまでにも何度か記事を書いています。よろしければご覧ください。



そんな、今日このごろ


1:気象庁HPから引用(2023.8.13閲覧)→https://www.jma.go.jp/bosai/information/#area_type=offices&info_id=20230811225001_0_VPFJ50_030000&format=text&area_code=030000

2:画像は気象庁HPから→https://www.jma.go.jp/bosai/kaikotan

3:画像は気象庁HPから→https://www.jma.go.jp/bosai/weather_map/

4:画像は気象庁HPから→https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#5/34.5/137/&elem=vap&contents=himawari

5:2023.8.11,00UTCのアジア500hPa・300hPa高度・気温・風・等風速線天気図から抜粋(300hPa高度面の図)→https://www.jma.go.jp/bosai/numericmap/data/nwpmap/aupq35_00.pdf

6:2023年8月12日03時40分、気象庁発表資料から抜粋→https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/data/jishin/kaisetsu_tanki_latest.pdf