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全球数値予報モデルの高解像度化

おはようございます、nooooon(@nooooon_met)です。


11月11日(チンアナゴの日!)、気象庁からとある『配信資料に関する技術情報』が発行されました。今回は、これについて少しまとめてみたいと思います。

配信資料に関する技術情報第 601 号
全球数値予報モデルGPV(日本域)の高解像度化について ~
https://www.data.jma.go.jp/suishin/jyouhou/pdf/601.pdf


1.数値予報とは

現代の天気予報の根幹をなしているものは何なのか、ご存じでしょうか?
「下駄を飛ばして天気を占う」?
「空を見て天気を読む」(いわゆる「観天望気」。もちろん、これはこれで重要ではあるのですが・・・)?

答えは「数値予報」です。

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数値予報では、電子計算機(大規模な数値予報では、いわゆるスパコン)の中に仮想的に地球を作り出します。この地球を細かな格子で分けて気温などの情報(物理量)を与え、様々な方程式をもとにシミュレーションを行って、未来の天気について予測します。

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普段は聞きなれない言葉だと思いますが、天気予報等でよく「今後の天気の移り変わりです~~」という感じで紹介される3時間毎の天気予報なんかも、おおもとはこの数値予報の結果を参考に作られているもの(のはず)です。

2.多様な数値予報モデル

ところで、今回冒頭で言及した技術情報では「数値予報モデル」という言葉が出てきました。

これまでの記事でご紹介したこともありますが、気象現象は、その持続時間(時間スケール)と空間的広がり(空間スケール)に正の相関がある、すなわち、持続時間が長いほど大規模な現象となる傾向があります。例えば、台風や高・低気圧は数日~10日程度の寿命ですが、夏場にザっと夕立をもたらすような個々の積乱雲は30分~1時間程度の寿命しかありません。

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数値予報において、これらの様々な現象を適切に表現(予測)できるかどうかは、数値予報の解像度(格子の間隔)に依存しています。規模の小さな現象を予測するには、より解像度を高くしなければなりません。

「じゃあ、思いっきり細かい解像度で予想すればいいのでは?」という考えに至るかもしれませんが、解像度を高くすればするほど、行わなければならないシミュレーションが増えてしまい、その結果が出るまでに時間がかかってしまいます。予測結果が出たときには、もうその予測対象の時間を過ぎていた・・・なんてことになっては意味がありません(ほかにも色々と制約あり)。

そこで、気象庁では、異なる解像度を持った『数値予報モデル』を運用していて、予測したい現象毎に使い分けています。主に気象現象の予測に使用されている数値予報モデルは、おおまかには、解像度が高いものから「局地数値予報モデル」(LFM)・「メソ数値予報モデル」(MSM)・「全球数値予報モデル」(GSM)の3種類に分けられます。


3.全球数値予報モデル

令和5年3月頃から高解像度化される予定となっているのは、「全球数値予報モデル」。高気圧や低気圧、前線などといった、規模の大きい現象の動向を予測するのに使用されるモデルで、日常的な天気予報に利用されるものです。

海外機関では、既にそれと同等以上の格子間隔で全球数値予報モデルが運用されていたりもするので、今後の予測精度の向上を期待したいところです。

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また、中長期的には、水平解像度を10km 以下まで強化しようと計画されていたりもするようです。

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/npdc/r03/npdc_annual_report_r03_2.pdf

より正確に気象現象が予測され、それがより的確な気象防災に活かされることを願います。


さて、季節の移り変わりも早いもので、もうずいぶんと寒くなってきました。そして今日は雨天・・・。風邪やインフルエンザ等に気を付けながら過ごしていこうと思います。

そんな、今日このごろ


1:気象庁情報基盤部,2022:令和3年度数値予報解説資料集.https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nwpkaisetu/R3/1_1.pdfから引用(2022.11.23閲覧)。

2:気象庁情報基盤部,2022:令和3年度数値予報解説資料集.https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nwpkaisetu/R3/1_7_2.pdfから引用(2022.11.23閲覧)。


<2023.3.11,追記>
高解像度化されるタイミングが決まったので、新しい記事を投稿しました。