見出し画像

2021年5月20日から21日にかけての枚方での大雨 ~②淀川チャネル型大雨~

こんばんは、nooooon(@nooooon_met)です。


もう1ヶ月以上経ってしまいましたが、以前、今年5月に(私の地元である)枚方で大雨となったことについて、記事を書いていました。


「まだ書き足りないことがある~~~」と書いてそのままだったんですが、ようやく続きを書きます。



ということで、何を書きたかったのかというと、ずばりタイトルにあるとおり、『淀川チャネル型大雨』についてです。


1.『淀川チャネル型大雨』とは

淀川チャネル型大雨』というのは、(主に)琵琶湖から大阪湾へと流れる「淀川」沿いで発生する線状降水帯による大雨のことを言います。風上側で積乱雲が次々と発生し、それらが発達しながら移動する「バックビルディング型」等の過程によって線状降水帯が形成されるもので、京阪神地域では防災上重要な現象とされてきました(※1)。

ここで、2007年の天気予報研究連絡会による報告で示されている、淀川チャネル型降水現象の概念図を引用しておきます(ほかにも参考となる文献がたくさんあるのですが、ここで書き出すとキリがないので、記事末尾で記載します)。

2021-07-13 18_58_39-WTENK11-5_42713.pdf および他 13 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge

※1

2021-07-13 19_00_28-WTENK11-5_42713.pdf および他 13 ページ - 個人 - Microsoft​ Edge

※1


2.2021年5月20日から21日にかけての大雨に関する考察

『淀川チャネル型大雨』の概要について示したところで、5月に発生していた大雨について、あらためて振り返ってみます。


まずは『雨雲の動き』。

以前の記事でも触れましたが、21日明け方から朝にかけて、大阪湾あたりを起源に南西~北東走行の強いエコーが見られます。

リアルタイムレーダー

※2

そして、『今後の雨』で24時間降水量について見てみると、大阪湾や兵庫県の東端あたりから南西~北東走行に、線状に降水量の多い地域があったことが分かります。

画像4

※3

これらのことから、線状降水帯が形成されて、周囲より降水量が多くなった地域があったと考えられます。


また、以前の事例解析では、総観場について下記のとおりまとめていました。

〇地上
 大阪府付近では、
 ・20日夕方から夜のはじめ頃:温暖前線通過。
 ・21日朝から昼過ぎ:寒冷前線通過。
  →この間、暖域内。

〇500hPa
 ・20日21時:ボッ海に切離低気圧、東シナ海にトラフあり。
 ・21日09時:切離低気圧は日本海へ、トラフもそれを回る形で東北東進。

〇850hPa
 ・20日夜には、紀伊水道にθe≧336Kの暖湿気が流入すると解析。
 ・実測でも、21日朝に潮岬でθe≒341Kを観測。

〇上空1km以下
 ・瀬戸内にある高松で、西南西風を観測。
 ・紀伊水道にある美浜では、非常に強い西南西風を観測。

これらは、1項で示した概念図の内容と概ね一致していると考えています。

局地的なところを見てみると、淀川沿いに形成されるとされている冷気層の存在については、今回の事例では明瞭ではありませんでしたが、風系などは積乱雲を発生させやすいような環境(風の収束等)にはなっていたようです。


ということで、今回の事例も淀川チャネル型大雨の一例と言えると思います。


淀川チャネル型大雨として思い入れ深いのは、平成24年8月に発生した前線による大雨

アメダス枚方で、最大1時間降水量91.0ミリの猛烈な雨が観測されました。このときはまだ枚方に住んでいて、雨の音で起こされた記憶があります(ただ、すぐ二度寝したような気がする・・・)。


単純に「淀川チャネル」と呼ばれたりもするこの現象、枚方にも関わる現象としていつか情報をまとめたいと考えていて、ようやく少しできたように思います。


気象予報士として、ご当地現象のようなものについての知識は、頭に入れておきたいところです。



そんな、今日このごろ


1:天気予報研究連絡会,2007:第4回天気予報研究会の報告.天気.54.974-975.(https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2007/2007_11_0047.pdf

2:国土交通省HPから取得(2021.5.21閲覧)→https://www.jma.go.jp/bosai/realtimerad/

3:気象庁HPから取得(2021.5.21閲覧)→https://www.jma.go.jp/bosai/kaikotan/#zoom:8/lat:34.804783/lon:135.670166/colordepth:normal/elements:gpv&rasrf24h


以下、『淀川チャネル型大雨』に係る文献まとめ(本文で未記載のもの)。

・横田寛伸,1993:大阪の淀川チャネル型大雨におけるback building.日本気象学会大会講演予稿集 (日本気象学会秋季大会講演予稿集).63.6.(https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902198218298989

・小倉義光,1997:メソ気象の基礎理論.東京大学出版会.172-174.

・天気予報研究連絡会,2008:第5回天気予報研究会の報告.天気.55.978-977.(https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2008/2008_12_0033.pdf

・大阪管区気象台・彦根地方気象台・京都地方気象台・奈良地方気象台和歌山地方気象台・神戸海洋気象台・松江地方気象台・鳥取地方気象台舞鶴海洋気象台・広島地方気象台・徳島地方気象台・予報研究部,2010:強雨をもたらす線状降水帯の形成機構等の解明及び降水強度・移動速度の予測に関する研究.気象研究所技術報告.61.(https://www.mri-jma.go.jp/Publish/Technical/DATA/VOL_61/61.html

・小山芳太,飯田早苗,野村武司,佐伯亮介,2012:平成24年8月14日に発生した近畿地方中部の大雨について.日本気象学会関西支部例会講演要旨集.129.11-14.(http://kansai.metsoc.jp/publication/Pdf/Rm/0129_reikai.pdf

・石原正仁,寶馨,2018:2012年8月13,14日に宇治市周辺に発生した大雨 第1部 大雨をもたらした線状降水帯群のメソ構造.天気.65.5-23.(https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2018/2018_01_0005.pdf



この記事が参加している募集

#みんなの防災ガイド

2,757件