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私説・ジャーナリングRPG(ソロジャーナルRPG)の遊び方

この記事は、アドベントカレンダーに寄稿するために書きました。


◾️ ジャーナリングRPGという遊び方があります

ジャーナリングRPG(ソロジャーナルRPG)というアナログゲームがあります。遊び方的にテーブルトークRPG(TRPG / TTRPG)に近い部分もあるため、よく混乱させることがあります。でも、実際は少し違っています。どんなゲームなのか、ポイントを大雑把にリスト化すると

  • 主に1人で遊ぶ

  • 手書きであれ、デジタルであれゲーム内容を記録する

  • トランプやタロット、サイコロを利用してプロンプト(キーワード・お題)を決める

  • ルールは簡単で複雑に処理をする戦闘ルールはほとんどない

こうなります。
TRPGをよく遊ぶ人は「あぁ、ナラティブ系ね」と思うかもしれません。ボードゲームをよく遊ぶ人は「あぁ、ワンス・アポン・ア・タイムみたいな物語創作系ね」と思うかもしれません。

そこまで知ると、『結局物語を一から書くのだから、創作するのが大変そう』『あなたはよくSNSにプレイログをアップしているが、自分の文字を見せたくないから遊べない』などの返答が良く返ってくることになります。

ちなみに、私のジャーナリングRPGのプレイログの多くはnoteにまとめています(宣伝)


◾️ ジャーナリングRPGは結局のところ

ジャーナリングRPGは身構える必要も、壁(または意識)が高いゲームというわけでもありません。このゲームジャンルを知るためには、そもそもの見方を変える必要があります。TRPGと比べるとしたら

  • ジャーナリングRPGはFPS(一人称視点)

  • TRPGはTPS(三人称視点)

実はこれぐらい見方が違います。何それ?と思いますよね?

TRPGは、"ゲームマスターの物語進行"、"プレイヤー達の思考"、”キャラクター達の行動”、これらの3つを下り重ねて全員が等しく物語のすべてと世界観のすべてを共有・創造する遊びです。

ジャーナリングRPGは、”キャラクターの思考、行動”を自分だけが納得すれば良い遊びです。

容赦無く平たく言えば、“なりきり遊び”の一種なのです。なので、物語は自分のキャラクターの目の届く範囲だけでよく、日記や成果物は、他人ではなく「自分」がソレを見て物語を思い出せれば良いのです。


◾️ 私説・ジャーナリングRPGの遊び方

などと、文章で説明したところで「結局わからん!」となると思いますので、とあるゲームを教材に“どう遊んだか?"を説明してみようと思います。

題材にするジャーナリングRPGは、こちら

◾️◾️ 作品紹介:これが、私に課せられた最後の旅となる
古き良き日本を旅するジャーナリングRPG「HAIKU(俳句)」。あなたは危険と美しさに遭遇し、自分の過去を振り返り、そしておそらくは旅の終わりで解決策を見つけるので、それも踏まえて俳句を読もう。しかし、この旅であなたの命は尽きてしまうだろう。

◾️◾️ ルールを読もう
実際のところ、私の英語力はからきしなので「Deepl翻訳」と「Google翻訳」の2つの訳を合算させて、“概ねこんな内容”というのを掴みます。ここで重要なのは、誤訳を恐れないということです(よくポカしますけど)。そして、設定を深読みしないこと。例えば、「古代日本、どれぐらい???」とか悩み出すと深淵の底を覗くことになります。

・このゲームのテーマは「最後の旅」、舞台は古代日本。
・行動判定があり1D10+《能力値》、プロンプトはサイコロを使うタイプ
・旅の途中で7箇所目に立ち寄ったらエンディング
・1シーンは「旅をする」→「ある地点に到達する」→ 「何が起こるかプレイする」で構成されている
・次のシーンへ行く前に「記録する」を行っても良い。

みたいな内容と読み取ります。私はこの時点で、「このゲームは7日かけて遊ぼう」と決めます。もちろん1日で終わらせることも可能で、その場合は最後の日だけ記録すれば良いのです。ルールには明記されていませんが、そういう遊び方も可能なのです。

「記録する」ことを行う場合、このゲームは選択肢が用意されています。

  • 俳句を書く(5・7・5でも良いし、20Wordを書いたのちに5Wordまで削る:日本語にして約40文字分書いた後に10文字まで減らす)

  • キャラクターの過去の思い出を書く

  • 素晴らしい風景を描写する(数行に収まる文量)

このどれか1つ以上を書くことが「記録する」ことになります。今回は俳句を書くだけにしてみたいと思います。

◾️◾️ キャラクターを作ろう
“なりきり遊び”
に近い遊びに関して、私の中でゴールデンルールが1つあります。『プレイヤーの実名、または実名を連想させる名前を使わない』これに関する話は省略します。お守り(その1)と思ってください。

私のキャラクターの名前は、【稲生エンデ(いのう・えんで)】にしました。

決めるべき能力値は3つ、敏捷性または持久力を表す【身体】、巧みさまた意外性を表す【心】、勇気または協調制を表す【精神】です。被ることなく+1、-1、0を割り当てます。今回は、
【身体】0 【心】+1  【精神】-1としました。

サイコロを振ってランダムに決めるのは、【特性】と【探求】です。これはD100ロールを行って【特性】細身、【探究】奉納となりました。

“独りで長い旅に出ようとしているには細身で心許ないのが、稲生エンデであるあなた。どうやら、最後に赴く地へ何かを奉納しに行きたいらしい。”

◾️◾️ 記録するものを準備したら、ゲームスタート
では、さっそく旅に出ることにしましょう。ゲームには、「場所のイメージを助けるキーワードD100ロール表」、「何が起こったかのイメージを助けるキーワードD100ロール表」、「イメージを広げるためのキーワードD100ロール表」が用意されています。D100(10面体の1つの10の位、残りを1の位として出目を見る)ロールをさっそく行います。

【場所キーワード】:池、王立
【記憶キーワード】:禁じられている、先導
【イメージキーワード】:蜂、サンダル

◾️◾️◾️ 旅をする
最初の工程では、これから旅の途中で立ち寄る《ビューポイント》へ向かうまでの旅路がどんな様子だったのかは、

  • 旅路が険しい、または長い:【身体】で判定

  • 不明瞭な箇所があったり、または秘密めいている:【心】で判定

  • 困難だったり、誰にも出会わず孤独だったり:【精神】で判定

3つから選べます。ここで判定することで、「ある地点に到達する」までにどれだけ時間がかかったかが決まります。

「旅をする」で最初に決まることは、エンデが向かっているのは池(場所キーワード)になります。旅路の様子は、キャラクターの【特性】細身もあるので、旅の最初は長く険しい旅路に悪戦苦闘したことにします。

行動判定(1D10+能力値(+バフ/デバフ)) >> 1D10-1 = 2

行動判定の結果、想定よりも到着までかなりの時間がかかり、《疲労》というデバフ(【身体】で判定する際にさらに-1)を受けることになりました。

◾️◾️◾️ ある地点に到達する

キャラクターがどんな感じで旅をしているかが決まったので、立ち寄った地点の詳細を決めましょう。

王室(場所キーワード)……日本なら皇室? 時代は特に設定しません。多分日本ぽい架空の国ぐらいにしておきましょう。蜂(イメージキーワード)もあるので、

『私(エンデ)が長く険しい旅路を通って最初に辿り着いば場所は、皇室御用達の養蜂場が近くにある池だ』

となりました。

◾️◾️◾️ 何が起こるかをプレイする

立ち寄った地点で何が起こったのか物語を作り、必要だと感じたら行動判定を行います。

皇室御用達の養蜂場が近くにある池で、私(エンデ)は何をするのだろう?禁じられている(記憶キーワード)、先導(記憶キーワード)、後はサンダル(イメージキーワード)もあります。そして、私の探求は「奉納」です。

『神聖な気配を漂わせる池は、冬に向かい始めた刺すような寒さを霧散させている。さすが皇室御用達の施設が近くにある場所だ。そういえば、蜂たちが私を監視しているように見える。池へ向かう道は、厚い門で守られている。その前に誰かが立っていた。門番というよりは水先人のように見える。中に入るには、草履に履き変えろと言われた』

と物語を組み立てます。ここでもし、水先人の話を聞かずに池へ行こうとするならば行動判定が必要でしょう。敏捷性または持久力で解決を試みるなら【身体】、巧みさまた意外性で解決を試みるなら【心】、勇気または協調制で解決を試みるなら【精神】を使って1D10+能力値(+バフ/デバフ)で行動判定ロールを行います。

結果が8以上なら判定成功。4~7なら判定成功だが、問題が発生する。0~3の場合、判定失敗。

今回は行動判定をせずに、素直にしがって草履を履き替えて池に向かうことにしました。池の主の代理でもある女王蜂から、奉納品に祝福のかけらを込めてもらう。

記録を残すかどうかにもかかわらず、この後キャラクターは落ち着いた場所で身体を休めるために以下の行動を1つ選択します。
深く眠る: 《疲労》を取り除く。
補給する:《準備不足》を取り除く。
傷の手当てをする: 《負傷》を取り除く。
準備: どの行動判定でも+1できる。

◾️◾️◾️ 記録する

では、次のシーンを始めるまえに記録を残すことにします。ジャーナリングRPGの遊び方として大事なことは

書きすぎない

ことにあります。ジャーナリングRPGは、”キャラクターの思考、行動”を自分だけが納得すれば良い遊び。酷い言い方ですが、他の人に読ませようと悩まなくて良いのです。

足が重い……。深い黒青色に染められた森は歩けど、歩けど途切れなかった。木々から差し込む日差しや月当たりを頼りに歩き続けているから、旅を始めたばかりなのに生傷が絶えない。……(以下略)

記録を書く悪い例より

なんて物語を書く必要はありません。このゲームで言えば、

  • 俳句を書く
    春眠る 羽音、子守りに 深む池

  • キャラクターの過去の思い出を書く
    この清らかな風に包まれると、若い頃に池の主からの頼まれ事で相棒と翻弄していたっけ。あの赤色を泳ぎ回る異界魚は、今は元気だろうか?

  • 素晴らしい風景を描写する
    神聖な気配を漂わせる池は、冬に向かい始めた刺すような寒さを霧散させている。まるで、その池は春の寝床のような暖かな輝きに満ちていた。

大体、こんな感じです。誰が待っていて、池でどんなイベントが起こったとかは書かなくても大丈夫です。”キャラクターの思考、行動”を自分だけが納得すれば良いので、この俳句を見てあなたがイベント内容を思い出せれば問題ありません。

春眠る 羽音、子守りに 深む池

これをエンディングまで繰り返すことになります。
ゲームルール上「記録しなくても良い」と解釈できますが、「記録した方が利点がある」というルールが用意されています。

記録した数だけ、エンディングの内容を確定させる行動判定でボーナスがもらえる

ボーナスを得られれば、自分が望んだ結末になりやすくなるのです。中々良いギミックだと思いませんか?

さて、そうなるとジャーナリングRPGを遊ぶ上での最大の問題が立ち塞がってきます。


◾️ “自分の文字が嫌いだ”を撲滅する安全性ツール

「自分の文字が下手すぎて嫌いだから、SNSにアップできないので遊べない」ジャーナリングRPGを遊ばない理由No.1と言っても良いかと思います。

思い出しましょう。クドイようですが、ジャーナリングRPGは、”キャラクターの思考、行動”を自分だけが納得すれば良い遊び。酷い言い方ですが、他の人に読ませようと悩まなくて良いのです。

×) ジャーナリングRPG = SNSにプレイログを必ずアップする必要がある
×) ジャーナリングRPG = 必ず手書き

なら、お前のポストはnoteのまとめは何なんだ!?と思われる方もいらっしゃると思います。私がSNSにプレイログをアップしているのは、ゲームデザイナーさんに「遊びました!!」報告をする意図が6割、自分で見て思い出す意図が2割、世にこういうゲームがあるのだ!と広めたい意図が2割みたいなものです。そう、私は酷い奴なんです。

で、この状況を打破するために重要なのが「安全性ツール」です。これがゲームで遊ぶうえのお守り(2)です。

TRPGが好きな人にとって、「安全性ツール」はホラージャンルなどのTRPGを遊ぶ際に自分のトラウマを引き起こす琴線に触れたり、不快感を感じる展開になったら、卓に参加している全員が退室を認める。保証のようなものであり、ゲームプレイの機会損失を防ぐための話し合いをしようぜ!っていうシーンを導入するキッカケを作ります。
ソロRPGやジャーナリングRPGでも、ゲームプレイの機会損失を防ぐために記録方法を自分の好きなように置き換えることができます。

例えば文字ではなく、音声や動画だったり、コラージュなどの美術・工作手段だったり、シーンを思い出せそうな写真やモノだったりと、あなたが安全に楽しく遊べる手段に置き換えて良いです。

春眠る 羽音、子守りに 深む池 #俳句

俳句を入力して、そのままポストしたり
↑コラージュにしてみたり
↑キャラクターの感情を色で表現してみたり
↑ステッカーを貼りまくったり ↓音に変えてみたり
setcps(150/60/4)

-- 夢のシーンを表現するメロディー
-- 小さくて高い音で、小指を掴む感じを表現
-- パイロットスーツの隣にいる祖父への思いを表現
d1 $ s "superpiano"
      # n (irand 24 + 72)
      # legato 1.2 # room 0.8 # gain 0.8 # sustain 4
        |+| shape "0.3"
        |+| delay "0.25"
        |+| delaytime "0.125"
        |+| delayfeedback "0.5"

-- パルス嵐のシーンを表現するノイズ
-- 強いパルス波で、ウェブに繋げられない感じを表現
d2 $ s "[[~ hc*16] [~ hc*16] ~ hc*16]/2" # gain "[1.2 [0.8 0.6] [0.4 0.2]]/2" # pan rand
  |+| shape "[0.8 [0.6 0.4] [0.2 0]]"
  |+| speed "~ <1 1 1 0.9> ~ 1"

-- 荒野でジャンクを漁るという、夢から現実へ戻ってくる感じを表現
d5 $ sound " ~ [~ ~ ~ house:5] ~ house:4" # speed "~ <1 1 1 0.9> ~ 1" # room "~ 1 ~ <0 0 0 0.3>"

自分が楽しく遊べる方法を見つけ出したら、ゲームデザイナーさんにも共有してみましょう。きっと、その方の「安全性ツール」が洗練されてより遊びやすい状況を生み出してくれることでしょう。


◾️ 最後に

ダラダラと書き散らかしてしまいましたが、今回はここまで。日本語のジャーナリングRPGや、翻訳作品も発売された2023年。「手書きで書く」ことだけに抵抗を感じているようだったら、是非とも自分なりの記録の方法を見つけて遊んでみましょう。

もし、どうしても「文章を書きすぎる!」と悩んでいる人がいましたら

  • 1回の記録の最大文字数を140文字にする

  • 「」セリフ文使用禁止

という縛りルールを追加して、試してみてください。悩みますよー、本当。



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