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ネブタ・ファイト・クラブ

ラッセラー
ラッセーラー
ラッセラッセラッセラー

 伝統的な掛け声とともに、花笠、白地の浴衣に色鮮やかな帯、おこしを着た跳人たちが跳躍を繰り返し、鈴の音が熱帯夜に涼やかな響きを残す。
 LED電球を内蔵した巨人が引き手に導かれ、道路脇に並んだ観客に大見得を切る。
 青森の夏、ねぶた祭りである。

 日本最大の夏祭り、ねぶた。
 その起源は平安時代、坂上田村麻呂の東北侵略に遡るとも言われる。
 戦争が起源だからというのでもないのだろうが、若い衆が多く集まるハレの日ということもあり、本来ケンカが絶えない祭りでもあった。
 五所川原市などでは「ヤッテマレ!(やっちまえ!の意)」の掛け声が未だに残っている。

 しかし、それも過去の話。
 20世紀半ば、ねぶたは形骸化した観光資源に堕している。

「ヤンズナコラー!」
 跳人集団の一部から津軽弁訛りのシャウトが響くと、ザザザっと波が引くように周囲の人々が距離を取る。
 声の主は誰か?
 そう、俺だ。

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