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【見返しレポート】テレビノーク#19「資料から探る戦後芸術」


カロクリサイクルの活動紹介や、ゲストを招いてテーマにまつわるトークをお届けする配信番組「テレビノーク」。
noteではこれまでのアーカイブ配信を見返してレポートをお届けしています。

今回見返すのは、2024年2月14日(水)に配信した#19「資料から探る戦後芸術」です。
アーカイブ配信のリンクはこちら👇

#19はこれまでとちょっとだけ趣向を変えて、NOOKのメンバーに個人の活動を聞く回です。
NOOKには現在7名のメンバーがいまして、2015年の設立当初からメンバーが入れ替わったり拠点を東京に移したりといった変化はありますが、「話を聞く」を大事にしたい人で集まっている、という軸は変わらずに活動を続けてます。

今回テレビノークに初登場した細谷修平さんは、NOOKの設立最初期メンバー。
戦後文化研究者である細谷さんのこれまでの研究やその経緯、一般社団法人 戦後芸術資料保存(padoco)の活動を改めて伺いました。

メンバー間につき、いつになくのんびりした雰囲気

Studio 04で会えたらレア!的なメンバー・細谷さん。同じく出没率低めのNOOK仙台メンバー・佐竹からレポートをお届けします。
(本当はもうちょっとスタジオに出没したい…と双方思っております~)

震災後におきていた記録や活動の磁場


細谷さんは戦後文化研究者、映像作家。アーティストの活動に関わる聞き取りや調査、記録を通じて、アート・ドキュメンテーションを行なっています。
主には1960年代の芸術と政治、メディアを研究テーマとして、映像やテキストによる記録を行ない、シンポジウムや書籍のプログラムを通した活動を展開。東日本大震災を経て、記録と芸術についての考察と実践を継続されています。

まず最初に、東京で学んでいた細谷さんが東日本大震災を契機に仙台に生活を移し、記録を残す流れに加わっていった経緯をお聞きするところからスタート。
発災後まもなく、せんだいメディアテークのスタッフとなった細谷さん。
今回のトークの中では大きく3つの企画が細谷さんのターニングポイントとして語られています。

①メディアテークで立ち上がった、市民や専門家たちの協働による記録のプラットフォーム「3がつ11にちをわすれないためにセンター(わすれン!)」(2011年~)

②震災3年目のタイミングでわすれン!参加者たちにより開催された展覧会「記録と想起」(2014年)

③メディアテークとともに地域で活動してきた美術や映像の表現者たちによる展覧会「ナラティブの修復」(2021年)

「3がつ11にちをわすれないためにセンター(わすれン!)」👇

展覧会「記録と想起」👇

展覧会「ナラティブの修復」👇


東北で発災からこれまで本当に多くの人の行き来と活動の交差があり、とくに震災直後に「何していいのかわからないまま来た人にも合流できる場所があった」ことは、後に続く展開を振り返る上で大きいなと聞いていて改めて感じました。
2015年にNOOKが組織化した経緯について「長いスパンで記録を考えるには個別で続けるよりも組織にした方がいいんじゃないか。そのほうが地に足つけて記録も生活もできるんじゃないか」と語られていましたが、細谷さんがアート・ドキュメンテーションの仲間たちと新たな法人をつくって活動していることにも通じているように思えますし、他のさまざまな団体にも共通項がありそうですね。

残りにくいものを記録し直す


レポートがだいぶ脱線してしまいましたが、細谷さんが長年研究してきた前衛芸術家・糸井貫二さん(ダダカンさん)のお話と、研究を続ける中で近年立ち上げた「戦後芸術資料保存(padoco)」が配信のメイントピックです。
実験性やカテゴリを横断した表現が多く、移り変わる戦後社会との相互影響も大きく、とかく複雑な60-70年代に起きていた芸術の表現の運動をどう残していくか、が細谷さんの研究分野。
配信内ではこんなおしゃべりをしています👇

・細谷さんが戦後芸術に興味を持ったきっかけ
 ー残りやすい記録や表現だけで考察されていく不平等さ
 本人や関わった人たちの聞き書きによって記録し直すこと

・ドキュメンテーション:記録者の主体性を含めて記述していく役割について
 ー繋ぎ役の仕事、横断役としてのアート・ドキュメンテーション

・どこまでが「資料」なのか?
 ープライバシーに関わるものもある。本人の認識と周囲の認識
・信頼関係によってできること
 ーご遺族や作家自身、地域との関わり

◎糸井貫二さん(ダダカンさん)を細谷さんが解説!!
・美術教育を受けない、グループに入らない表現活動
・読売アンデパンダン展と、出会う作家たちとの交流
・糸井貫二で大きく語られるふたつのエピソード(オリンピックを受けての聖火体現と、万博籠城を受けての行動) 

それだけではない部分を表現者や人として多面的に掬い上げること

「記録者の主体性も含まれるドキュメンテーション」としての姿勢が、糸井さんにまつわる細谷さんの語りを聞いていて今回とてもしっくりきました。研究者の見解を踏まえつつ、糸井さんへのリスペクトと執念(?)、関わってきた時間を想像させる語りぶりです。
糸井さんにまつわる資料の救出、整理、活用までを通して行なう試みを展覧会「ナラティブの修復」で公開。配信ではお写真もたくさん紹介いただきました。


《絶対的自由と絶対的肯定の人・ダダカン 糸井寛二の日々〜資料アーカイブ構築に向けて〜》 展示風景
あらゆる資料を収集する 
 本人が持っていないものも探し出す
当時掲載された資料。どう語られてきたか?


こうして同じシンパシーを持つ仲間たちと協働して活動してきた芸術表現の資料保存を、法人として組織化したのが「戦後芸術資料保存(padoco)」。

収集、整理、保存、記録し直していくと、読み解き続けた故の立体的な立ち上がりが見えてくる。
「これまでの読み解き方でひとつの地図があるとして、当時だとこう読み解かれていたけど、今だとこういうふうに読み直せるね、と広げていくこと」と自身の活動について話す細谷さん。
戦後芸術を年代のカテゴライズではなく地続きのある時間軸で捉えたい、日本という磁場でこそ根付いたものに触れたい、戦後文化として研究したい…などなど、どんどんやりたいことが広がっていくご様子。

そういえば冒頭の大地くん&瀬尾さんのトークでは、「何かを調べているうちに自分も歳を重ね、読み解けることが増えていく」「シンパシーのある人たちが不思議と集まってきて、出会える」といったような話が出ていましたが、細谷さんとのトークでも終始繋がっていましたね。
長く続けて見えてくること。長く続けるコツとして仲間うちで組織をつくる。今回の裏テーマなのかな~と聞きながら、でもそれって毎回のゲストさんとも同じ話をしてきてるかも?と腑に落ちた回でした。

続けたいから長生きするしかない!


書籍『糸井貫二木版画集』👇


次回のテレビノーク

次回のテレビノークは8月27日(火)20:00~生配信。
今回は、能登・珠洲で社会福祉士をされている山形優子さんのインタビュー(事前収録)をお届けします。また、能登に行ってきたNOOKメンバーによる能登報告をおこないます。


配信中のコメントでのご参加も大歓迎です。
次回のテレビノークもどうぞお楽しみに〜!


レポート:佐竹真紀子(美術作家/一般社団法人NOOK)

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