𓂃𓈒𓏸 𝐍𝐎𝐎𝐊 𝐋𝐄𝐓𝐓𝐄𝐑 𓂃𓈒𓏸 2024年9月号

定期購読マガジン 『𝐍𝐎𝐎𝐊 𝐋𝐄𝐓𝐓𝐄𝐑』 2024年9月号をお届けします

NOOKの活動をもっといろんな方に知ってもらう機会になればと、月に一度、𝐍𝐎𝐎𝐊 𝐋𝐄𝐓𝐓𝐄𝐑を配信しています。
ご購読いただいた売上は、NOOKの活動を継続するための資金として使わせていただきます。またNOOKのWebサイトより、直接ご寄付いただくことも可能です。わたしたちの活動はちいさなものですが、この記録組織を変わらずに続けていくために、どうかご支援いただけますと幸いです。

𝐍𝐎𝐎𝐊 𝐋𝐄𝐓𝐓𝐄𝐑限定のコンテンツは現時点で大きく３つになります。

✦ 語らいの記録 ✎𓂃
『語らいの記録』では、多くの旅を通じて出会った語りを絵画や文章で記録し続けている画家・作家の瀬尾夏美が、毎月ひとつの語りを取り上げ、その語りが生まれた空間をやわらかな文章で編み直します。

✦ 今月の絵手紙 𓍯
『今月の絵手紙』では、画家・作家の瀬尾夏美と、美術作家の佐竹真紀子が毎月担当を交代しながら、ドローイングを交えたみなさまへの絵手紙をお届けします。

✦ 今月のエッセイ 𓅯 ⸒⸒
『今月のエッセイ』では、主に劇作家・演出家である中村大地、映像作家の小森はるか、美術家の磯崎未菜、美術・メディア研究者、映像作家の細谷修平が、交代でエッセイを執筆します。自身の活動についてや、最近ハマっていること、海外での驚きの出来事など、それぞれの視点から紡ぐ季節のエッセイをお楽しみください。

他にも、 NOOKメンバーにやってみてほしいこと、聞きたいこと、お願いしたいことなど、新コーナーのアイディアをいつでも大募集しております。各SNSでのリプライや、ハッシュタグ #NOOKLETTER にて教えてください。❀´-

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今月のラインナップ

語らいの記録：
「もうもう、なんでもええ！ 持ってって！（輪島のおばあさん）」（瀬尾夏美）

今月の絵手紙：
「牡鹿半島鮎川　鯨まつりの七福神舞」（佐竹真紀子）

今月のエッセイ：
『展覧会「現代・江東ごみ百鬼夜行」の手引き』（磯崎未菜）

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それではさっそく、瀬尾さん書き下ろしの語らいの記録からどうぞ。

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語らいの記録 ✎𓂃

15. もうもう、なんでもええ！ 持ってって！（輪島のおばあさん）

5月。友人とふたり、輪島市門前の崩れた家々が並ぶ通りを歩いていたら、ちいさなおばあさんが不釣り合いなほどに大きな荷物を台車に載せて、ほんのゆっくりとこちらへ向かってくる。駆けていって話しかけると、ゴミの集積所まで捨てに行くところだというので、少しばかり手伝わせてもらった。おばあさんはニコニコと笑って、ありがとうございます、と言ってくるりと向き直る。その背中に、他にやることがあったら手伝いますよ、と声をかけると、おばあさんはこちらをちらりと振り返り、悪いねえ、こっちなんだけどねえ、と言ってとことこと歩いていく。おばあさんの家は、2007年（この時にも大きな地震があった）に被災して再建した家で、今回は、建物自体は直せば住める程度の損傷で済んだが、屋外の物置が壊れたので、中に置いてあったものを片付けているのだという。

大きくねじ曲がったスチール製の屋外物置には、法事で使う食器類が100セットほど詰まっていて、とにかくすべて捨てたいという。2007年のとき捨てちゃえばよかったんだけどねえ。あの頃は夫が亡くなったばかりで、どうしても忍びなくてねえ。だけど、今度はもう本当にどうしようもないから、全部捨てるの！　おばあさんはそう言って重そうな箱をえいやと持ち上げ、表へと放り出す。がちゃん！ と中身が割れるような音がした。