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カロクリサイクル「記録から表現をつくる」2023 レポート① 7月23日

2023年7月23日‐9月10日にかけて、カロクリサイクルのワークショップ「記録から表現をつくる2023」がおこなわれました。

ワークショップ「記録から表現をつくる2023」について、そのプロセスに沿って3回に分けて掲載します。今回はワークショップ初日、7月23日の様子です。

「記録から表現をつくる」ワークショップとは・・・
残された記録を見る、あるいは新しく記録をすることから、表現をつくるワークショップを行います。
多様な視点を持って記録に向き合うために、過去の記録をつかった表現を実践する人に会って話を聞いたり、その表現を見つめ、話し合ったりすることからはじめ、参加者自身の関心からテーマを設定してもらいます。それに関わる記録から生まれる表現を探し、形にすることに挑戦します。

ワークショップ最終日には展示を開催。レポート、展示や企画のプラン、絵、文章、写真、映像、パフォーマンス、立体、インスタレーションなど、表現の技法について制限はありません。必ずしも作品として完成させる必要はなく、自らの関心を他者と共有し、対話をするために形をつくるので、リサーチの途中段階を開示するというイメージでも構いません。

日常的に何かを記録している方、聞き書きやリサーチに興味のある方、それらをプロセスに伴う制作がしたい方などにおすすめです。

https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/events/59658/

昨年度も同様のワークショップを開催しました(昨年度の様子はこちらから)。

ファリシテーターは、昨年に引き続きNOOKの瀬尾夏美さん、中村大地さんのお二人に加え、小屋竜平さんがつとめます。

ファシリテータープロフィール
小屋竜平
1982年愛知生まれ。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士後期課程満期退学。高崎経済大学非常勤講師。記号の現働化というプロセスにおける、一回性と普遍性の関係に関心を抱いている。ファシリテーターとして、東京プロジェクトスタディ「部屋しかないところからラボを建てる」(2018)に参加。コーディネーターとして「東京スーダラ2019―希望のうたと舞いをつくる」(2020)に参加。論文に『「空虚な」記号としての代名詞――エミール・バンヴェニストにおける「話者」、「意義作用」、「現実」の問題をめぐって』(『言語態 13号』、2014年)。
瀬尾夏美(アーティスト/NOOK)
1988年東京都生まれ。アーティスト。東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。土地の人びとのことばと風景の記録を考えながら、絵や文章をつくっている。2012年より、映像作家の小森はるかとともに岩手県陸前高田市に拠点を移す。地元写真館に勤務しながら、同市を拠点に制作。2015年、仙台市で東北の記録・ドキュメンテーションを考えるためのコレクティブ「NOOK」を立ち上げる。現在は“語れなさ”をテーマに各地を旅し、物語を書いている。ダンサーや映像作家との共同制作や、記録や福祉に関わる公共施設やNPOなどとの協働による展覧会やワークショップの企画も行う。参加した主な展覧会に「ヨコハマトリエンナーレ2017」、「第12回恵比寿映像祭」など。最新の映画作品に「二重のまち/交代地のうたを編む」(小森はるか+瀬尾夏美)。著書に、『あわいゆくころ――陸前高田、震災後を生きる』(晶文社、2019年)、『二重のまち/交代地のうた』(書肆侃侃房、2021年)。 
中村大地(作家・演出家/屋根裏ハイツ主宰/NOOK)
1991年東京都生まれ。東北大学文学部卒。在学中に劇団「屋根裏ハイツ」を旗揚げし、8年間仙台を拠点に活動。2018年より東京に在住。現在も仙台・横浜・東京をゆるやかに行き来しながら、人が生き抜くために必要な「役立つ演劇」を志向した創作をつづけている。『ここは出口ではない』で第2回人間座「田畑実戯曲賞」を受賞。「利賀演劇人コンクール2019」ではチェーホフ『桜の園』を上演し、観客賞受賞、優秀演出家賞一席となる。近年は小説の執筆など活動の幅を広げている。2020年度ACY-U39アーティストフェローシップ。

https://www.artscouncil-tokyo.jp/ja/events/59658/


真夏の大島4丁目団地Studio 04に集まったのは、9名の参加者。

美術系大学に限らず、哲学や理系の学問を専門とする大学生から社会人まで、さまざまな動機を持った個性豊かな参加者が集いました。

まず「記録から表現をつくる」ことはどういうことなのか?というNOOKと瀬尾さんのこれまでの活動をベースとした自己紹介的なレクチャーからスタート。

記録から表現をつくる?
−「記録をする」という態度やその行為を通じて、対象と関わり続けることを試みる

記録の効用?
−・対象と距離を取ることができる
・答えを出すことを保留することができる
・アウトプットの形を決めなくても始められる
・記録したものは誰かと共有することができる
*記録は、自分自身が目撃したもの、または他者から受け取ったものを、未来の誰かに分有するために形を与える行為とも言える

瀬尾さんが震災後の陸前高田やコロナ禍の各地域でつくってきた作品を元に、記録することとは一体どういうことなのかを参加者へ向けて説明します。

午前のレクチャーの様子

レクチャーの後は、「語りのワーク」をみんなでやってみることに。


語りのワーク
テーマは「私の地元/大切な場所について」
2人組になって、Aさんが話す人、Bさんが聞く人(5分間)、役割を逆にしてBさんが話す人、Aさんが聞く人(5分間)、聞いた後に、一人称(わたし、ぼく、おれ)語りの形で原稿をつくる(5分間)


参加者が2人ずつに分かれ、Studio 04の思い思いの場所で、インタビューが始まります。聞き書きを経てそれぞれの「大切な場所」を共有します。先ほど一対一で話を聞いた相手を目の前にしながら、自分の経験として語る参加者の表情は、少し緊張しながらも楽しそうでした。


「語りのワーク」中の参加者

お昼休憩のあとは、いよいよ記録から表現をつくる実践です。

実践内容
2つのテキスト(記録)から表現をつくります。明恵上人( 1173-1232 )「夢記」1191-1231年までに書いた夢記録小野和子(1936-)「あいたくてききたくて旅にでる」
使えるもの:
A4コピー用紙、コピー機、プロジェクター、スクリーン、スピーカー、筆記用具、スマホやPC(各自)、パフォーマンス、参加型のワークショップなども○(ただし5分以内でできるもの)


「あいたくて ききたくて 旅にでる」(小野和子)と「夢日記」(明恵上人)というふたつのテキストから一つ選び、自分なりの視点で別の形に置き換えてみます。最初にダンサーの豊田ゆり佳さんによるふたつのテキストの朗読+パフォーマンスを鑑賞。

ふたつのテキストはどちらも夢に関する内容。豊田さんはそれを実際に夢を見る状態に身体を置くことで、表現しました(お昼休憩のあとだったので、参加者も豊田さんと共に夢の中へ、、、、、、)。


豊田さんによる発表の後は、各自制作をおこない発表しました。

自身のルーツを元にその土地の方言でテキストを朗読する参加者や、ふたつのテキストから短歌を発表する参加者、映像作品を制作する参加者などなど、それぞれに記録を読み解きながら表現をつくり、共有しました。


参加者のつくった映像作品を鑑賞中

次週は、Studio 04を飛び出し、江東区夢の島にある第五福竜丸展示館でのワークショップです。→


レポート:櫻井莉菜(アートマネージャー)

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