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カロクリサイクル「記録から表現をつくる」2023 レポート② 

(前回はこちらからお読みください)

2日目となる「記録から表現をつくる」ワークショップの舞台は、江東区夢の島にある第五福竜丸展示館。

ここは、1954年3月1日、マーシャル諸島ビキニ環礁でアメリカがおこなった水爆実験により被ばくした第五福竜丸の現物を保存している展示館です。ビキニ水爆実験により被ばくしたのは、第五福竜丸だけでなく、多くの船、マーシャル諸島に暮らす人々、アメリカ軍人、科学者など、多くの被害があることから、「ビキニ事件」という呼称を用いて、その歴史的背景を多角的視点から記録・保存・展示をおこなっています(カロク採訪記第五福竜丸展示館の回はこちらから)。

真夏の暑い日差しの中、10時からワークショップスタートです。

第五福竜丸展示館画外観

本日の流れを説明

今日の課題
第五福竜丸展示館学芸員市田真理さんのワークショップ・展示解説を見たり、フィールドワークをして、その記録をつかって展示をつくろう

最初におこなわれたのは、第五福竜丸展示館学芸員の市田さんによるワークショップ。

配布されたテキストを5〜6名ずつに分かれて朗読します。テキストに書かれていたのは、第五福竜丸の乗組員、アメリカ軍の関係者、マーシャル諸島の住人、それぞれの視点から語られたビキニ事件の体験談。

市田さんによるワークショップ

ワークショップの後は、市田さんによるビキニ事件、第五福竜丸に関するレクチャーを受講。第五福竜丸展示館には都内のみならず全国の小中学校・高等学校をはじめ多くの団体が見学に来るため、各団体の要望に合わせつつも、欠かさず伝えるべき内容を押さえながら展示の解説をおこなっているとのことで、その語りの技術はまさに記録からつくられた表現です。

展示解説を聞く参加者

レクチャーの後は、参加者が自由に展示館を見学。

午後の制作・発表に向けて、市田さんに質問をしたり、書籍を購入して調査する参加者や、展示館周辺の環境に目を向ける参加者の姿など、それぞれ展示を通して気になったテーマを探っていきます。

日曜日というのもあって、さまざまな鑑賞者が訪れる展示館

午後の制作を経て、いよいよ発表の時間です。

展示館にて、市田さん、学生ボランティアのYさんにも見ていただきながら、制作の展示・発表を行います。


 ビキニ事件をはじめとする核実験や、近年の気候変動による深刻な被害を受け続けているマーシャル諸島の詩人、キャシー・ジェトニル・キジナーさんのWikipediaの日本語版の記事を執筆した参加者や、展示館内を巡りながら印象に残った資料について語るパフォーマンスをする参加者など、市田さんのレクチャーや展示館の解説を元につくられた表現をみんなで共有します。

 発表ごとに小屋さん、瀬尾さん、中村さん、そして市田さんからフィードバックが。同じ表現を見ていても異なる質問や感想が出てきます。

 特に、市田さんは一人一人が展示や市田さんの言葉からつくられた表現を、ポジティブに受け止め、市田さんだからこそ語れる言葉で参加者に話しかけてくださります。市田さんの言葉がそれぞれに届く様子を見ていて、第五福竜丸やビキニ事件の記憶の継承が新たな形でひらかれる可能性を感じました。

さて、次回はいよいよ最終発表会です。

参加者それぞれの関心でテーマを定め、記録から表現をつくり発表します。

(→③につづく)


レポート:櫻井莉菜(アートマネージャー)

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