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カロク採訪記

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東京の災禍の歴史をたどり、それに向き合う人びとと出会い、記憶の地層を掘り起こす。2022年からはじまった事業「カロクリサイクル」に関わるレポートです。 https://www.…
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#アーツカウンシル東京

道が語ること

2022年5月11日 カロク採訪記 中村大地 東京水道歴史館へ この日は市ヶ谷にある東京都水道歴史館へ。江戸時代から400年に渡る東京都内の治水の歴史が建物二階に分かれて事細かに展示されている。二階の江戸上水のフロアでは、幕府がどのように江戸の街に水道を引き、整えていったのかを、木樋と呼ばれる木製の水道管の実物など、もの資料を交えて解説していく。江戸城が建てられたエリアは、もともとの水質が悪く、上水の確保は大きな課題だった。そういえば、小学生時分に読んだ学習まんが「日本

遊就館からしょうけい館

2022年5月10日 カロク採訪記 中村大地 遊就館へ10日は午前中に集まって靖国神社内にある遊就館へ。筆者は生まれも育ちも東京ではあるものの、今回はじめて靖国神社に入った。勝手になにかものものしさのようなものを感じて緊張する。茂る木々の一つひとつに書けられた陸軍士官学校第〇〇代記念植樹、というようなネームタグ。入り口の脇にある“特攻勇士を讃える”と書かれた少年兵の銅像には、ワンカップや紙タバコが供えられていた。 遊就館は博物館法の適用から外れた「宝物館」と呼ばれる施設で

東京を歩き始める

2022年5月9日  カロク採訪記 瀬尾夏美 東北からふるさとに戻る ついに東京を歩き始める。ついに、とあえて言う。 22歳からの11年間は東北にいて、この春、ふるさとである東京に戻ってきた。東北では、津波の後の沿岸部や台風被害に遭ったまちに通い、土地に根付いて生きる人びとの話を聞き、記録してきた。 もちろん、災禍の記憶だけではない。日々の暮らしについて、生業(田畑や山仕事の話などが印象深い)について、風景について、土着的な信仰や民話について、受け継がれてきた郷土の資料に