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3.sagami

皆さんは‘サガミレガリス’をご存知だろうか、
ご存知の方はこの本を読んだに違いない。
なぜなら、‘サガミレガリス’などこの世に存在しないはずだからである。

特に縛って読んでいるつもりは無いのだが
気付いたら女性作家の本ばかり読んでいる
気がする。
男性女性という区分云々より、
同性だから話にも共感しやすいのだろうか?
そもそも作家は女性が多いとか
そういう確率論的な話か?

というわけで、今回読んだ本は

有川浩『海の底』

である。

始まり米軍横須賀基地の桜まつり、
普段は海の底に‘潜って’いる
潜水艦『きりしお』も
たまたま寄港しているところである。

実際に自衛隊の艦艇が停泊しており
海兵の街的な雰囲気をもつ横須賀ならではの話題であると同時に、
有川浩の本にはしばしば
‘飛行機’や‘自衛隊’と言った要素が登場するので
「なるほど、この手の話か」と思った。
(相変わらずどんな本か予備知識0で読み始める質である)

横須賀市民はもちろん、艦艇オタクなども集まり
和気あいあいと桜の下、
春の陽気に浮かれている桜まつりに
異常事態が起きる。

潜水艦『きりしお』に出航命令が下るのだ。

艦内に残った乗員たちもこの異常事態に、緊張が走る。
判断し理解するより前に
とにかく命令に従って出航を試みるが
それを阻む何かがいる。

‘サガミレガリス’
である。

「え???SF??」

そう、SFである。
(こういうのSFって言うのかな?知らんけど、少し不思議ではある。)

‘サガミレガリス’
が何なのかは読めばすぐにわかるので
あえて説明することはしないが、
エビやカニ、その他甲殻類を食べたり食べる予定があったりする方にはこの本を読むことはおすすめしない。とだけお伝えしておく。

この本では、
潜水艦内部、警察、自衛隊、ネット掲示板
等の複数の立場からの話が
順々に描かれていて
それがなかなか面白い。
中心となるのは潜水艦’きりしお’内部ではあるが、
それぞれにいい味を出してくれるキャラクターたちがいて
毎場面楽しめる。

ここで展開される’サガミレガリス’対策において
誰もがすべきことはわかっているのに、
上からの許可がないと、相手の出方を伺わないと
何もできない。
手段はあるのにそれを行使できない。
そんなもどかしさと、ある種のリアリティを感じる。
組織ってどこもこうなってしまうものなのだね。
しみじみ

そんな色々な立場に立たされた人々の
葛藤と
緊迫感と
そんな中で動く考えや感情が
気になって気になって、
深夜3時まで駆け抜けてしまうような、
そんな本

気になった方、
ちょっと気持ち悪い未知の生命体についての描写に耐えられる方にはぜひお勧めしたい。


知らなかったけど、有川作品にこういうSF系の話は3冊あって
これは3作目らしい。
なんでこれから読み始めたか忘れたけど、
3作目から読んでも大丈夫だったので3作の中から気になったものを選んで読んでみるのもいいかもしれない。
そしてこれの1作目がデビュー作らしい。
作品は好きだけど、そういうことって案外知らない。

この本を読んだ後に面白過ぎて、
2作目にあたる『空の中』とこれら2作品のスピンオフが収録された短編集『クジラの彼』も購入し、早々に読破した。
『クジラの彼』は内容を書くとネタバレになってしまうので、
『空の中』は次回書こうかな。

TF(とても変わった)有川シリーズ、ぜひご一読を〜〜







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