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駆け込み乗車のアティチュード

もしあなたが駆け込み乗車をしてしまったら、
乗り込んだ後のアティチュードが重要です。

そもそも同じ車両に乗り合わせるということは、
1分の狂いもない神がかり的な日本の鉄道ダイヤを実演する移動芸術の構成員という自覚を持たねばなりません。

公衆マナーを前提にした適度な距離感と思いやりで、異なるバックボーンの老若男女が思い思いの時間を過ごしながら、定刻通りに次の駅を目指す。

その芸当は、繊細な身体操作と
非常に複雑な心理的力学の緊張感によって
成り立つものなのです。

さて、駅につけばちょっと一休み。
次の目的地に向かって準備が始まります。

凛と並んだ列からの滑らかな降車と乗車。
「ここまでご苦労様でした」
「これからよろしく」
とでも言う様に、ペコリペコリとお辞儀をしながら構成員が入れ替わっていきます。
それは次の駅に向けた、
旧体制から新体制へと移行する
イニシエーションなのであります。

程なくして、
発車ベルがプラットフォームにこだまする。
「1番線ドアがしまります!」
それは、新たなコミュニティの旗揚げ宣言と言えるでしょう。
次の駅に向けた、見ず知らずの人々との連帯感が芽生え始めるのです。

そこに、
「駆け込み乗車はおやめください!駆け込み乗車はっ!!」
プシュー。。。ガッ! プシュー。。。

「駆け込み乗車は危険ですからおやめください」
プシュー。。。
ガタンゴトンガタンゴトン……

駆け込み乗車とは如此く、
それまで積み上げた連帯感を破壊しかねない行為なのであります。

そのため駆け込み乗車を実行した乗客は、異物の存在として認識されます。事後に感じる居心地の悪さはこの為です。

だからこそ、致し方なく駆け込み乗車をした際は、「すいません、お邪魔します」と最大限下手から出る事が肝心なのであります。
間違っても「空いてる席はないか」などと、横柄にドカドカと割り入ってはいけません。

また、たまに焦って駆け込んでもなかなか電車が発車しないこともあります。何とも間抜けなことではありますが、駆け込んで乗車したことに変わりはありません。どんなに恥ずかしくても狭い肩身で、「金輪際、駆け込むものか」と後悔するのが至極真っ当な振る舞いなのであります。

まぁ、何にもまして余裕を持つことが、
万事の解決策なのであります、
乗る側も、乗ってる側も。

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