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【怖すぎ】話題の短編映画「CURVEカーブ」は梅雨にぴったりな映画だった

現在、SNSでにわかに話題になっている、2016年製作のティム・イーガン監督、出演ローラ・ジェーン・ターナーが贈る10分ほどの短編映画「CURVE」。各国の映画祭で10の受賞と3ノミネートを果たすなど高い評価を受ける作品だ。

https://youtu.be/FxAgDO9X9Uc

①シンプルすぎる故の“説明いらずな恐怖感”

本作は、主人公の女性が急勾配なコンクリートの壁から這い上がろとするだけの映画である。

[この女性は誰?][なぜここにいるの?][このCURVEは何!?]

色々な憶測や考察が出来そうな、シンプルな作品

しかしそれ以上に、無機質で不気味なCURVEの造形と底無しの黒色は、その深淵に対する恐怖心を煽り続ける。

むしろ余計な説明がないからこそシチュエーションに没頭し、観客は「なぜ?」という疑問以前に、ヒトとして「落ちたくない!」という感情を主人公と共有し、息を呑んで脱出劇に参加していくのである。

②短いのに“伏線“がすごい

そして10分という短い作品ながら緻密に練られた演出やワンシーンが伏線として活きていく。

まず冒頭、目を引くのが波のショット。荒々しく形を変えながら、浮遊するものを、時には打ち上げ、そして時には海底へと叩きつける波。その波形はCURVEという主題そのものを象徴し、これから起こる事象を予見しているようでもある。

そして注目は、主人公の女性が目覚めた後の、コンクリート面のアップの映像。ざらついたテクスチャは観客の脳裏に刻まれ、脱出においてキーワードとなる「摩擦」と深く結びついていくなど丁寧な演出の数々が緊迫感をひとしお引き立たせる。

③セリフなし、体もほぼ動かせない究極の芝居

そして始まる脱出。

当然のことながら、体はすでに半分CURVEからずり落ちているため、主人公は思い切った体の動かし方などできない。

また、飛び起きてからの、左足を曲げた仰向けの絶妙な姿勢。体を思うように動かせない痛々しさは画面を通じて、こちらの膝までうずくほど。そんな中、血塗れの両手をパーカーで拭いながら一歩、一歩勾配を脱出を試みる。

卓越した状況設定と芝居の中で生まれる痛み、恐怖、安堵、希望、驚愕。息を押し殺すような緊迫感の中、セリフもなく、極度に制限された身体の動きだけで表現される感情量の多さに驚かされる。

そしてクライマックス。

映画冒頭からの曇天模様が予期していた雨が絶叫と共に絶望感を飲み込み、静寂に包まれたCURVEのラストショットで映画は終わる。それまで固唾を飲んで見守っていた私は、雨と共にすべてを飲み込んだ空っぽのCURVEの映像に、言い知れぬ虚脱感と恐怖に襲われ悪寒が走った。

ジメジメと蒸し暑い梅雨が到来した昨今、雨の中おうちで涼むにはぴったりな映画である。

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