『カネコの呪い』

今日から明日にかけておばあちゃん、お父さんを引き連れ北陸へ。
というのも、カネコ家の総本山があるらしい。
なぜ、ぼくがわざわざこんなに暑いなか、ハンディキャップがあるふたりをつれて旅に出ないといけないのか。
それはぼくの出生にまつわるひとつの逸話が原因である。

遡ること30数年前。
ある日、ぼくのおうちの前にひとりの尼さんが通りかかった。
すると突然念仏を唱えはじめ、ぼくの母にあるひと言を言い残して帰って行った。

「カネコの男はダメになる」

これを聞いた母は相当なショックだったと思う。
だって、産まれたばかりの子どもの暗雲たる未来を予言されたのだから。
かくいうぼくはといえばすくすくと育ち、やんちゃでイタズラっ子。
当時はよくトラブルを起こしては母親といっしょに方々へ謝りに行ったことを記憶している。
だもんで、この逸話に関しては耳にタコができるほど聞かされていたし、ぼくの人生はがんじがらめにされていたように思う。

正直、そんな話なんて聞きたくなかった。
「どうあがいてもダメになるのだ」と思春期のぼくは頭を抱えていたし、「産まれてこなければよかった」と自分自身を悔やんだ。
だって、陰キャだし、モテないし、勉強もできないし。
ダメ、ダメ、ダメ、ダメ人間(by 筋肉少女帯)。
「ちくしょー」とばかりに天を仰いでばかりいた。
と、いってももはや開き直ってますけどね。ダメで結構!

で、最近は仕事をやめたこともあって、おだやかに暮らしていたのだけど、突然親から提案があった。

「カネコ家の供養をしてきなさい」。

「へぇ」とか「はぁ」とか適当に受け流していたけれど、どうやらそうもいかないらしい。
というのも、ここ数年でカネコの男にたびたび不幸が起こっているらしい。
聞いた話によると遠いおじさんは不可解な死をとげ、ちかいおじさんはパニック障害になり、ぼくのおとうさんは小ボケ。
ぼくはといえば、メンタルを病んで療養(単にごろごろしているだけ)する始末。
このままではカネコ家の将来が危ういではないか。

というわけで、カネコ家を代表して、ぼくら3人がはるばる北陸へ行くことになったわけである。うむ。
どんな旅路になるのかわからないが、滅多にない経験なのでちょっとはたのしみたいと思う。

つーわけで、行ってきます。

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