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清掃指導、しんどくないですか?

 掃除の時間は憂鬱。サボる子、喋ってばかりで活動しない子、ほうきで遊んだり走り回ったりして全然集中しない子。

 掃除の時間の指導、どうすればいいんだろう。そんなことにお悩みの先生はいますか? もしお悩みなら、あなたにはこの記事が役に立つはずです。清掃指導の必殺技、それが「もくもく掃除」です。

もくもく掃除とは?

 もくもく掃除とは、「黙掃(もくそう)」のことです。掃除の時間に、いっさいのおしゃべりを禁止する掃除のことです。それだけなのですが、このもくもく掃除、とても奥深いものなのです。

 もくもく掃除は、3つの段階+2つの段階の5つからできています。誰しも、心の中には人間にとって素晴らしい5つの心があります。その心は磨かないでいるとくすんだままですが、掃除の時間を通して心を磨くことで、人間として成長することができる。これがもくもく掃除の目指すところです。

第一段階…我慢

第二段階…親切

第三段階…発見

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第四段階…感謝

第五段階…正直

この5つの段階から成り立っています。掃除の時間には、この5つの段階のどれを目標にするかを考え、掃除に取り組ませます。そして、掃除が終わったら振り返りを行い、次への目標を立てます。

もくもく掃除のメリット

 もくもく掃除のメリットには、以下のものがあります。

①「自分」と向き合わせることができる

②褒めるポイントが増えて自己肯定感を高めることができる

③静かになって掃除に集中できる

④教室がきれいになる

 それぞれ簡単に解説します。

①「自分」と向き合わせることができる

 子どもはなかなか自分自身の内面に目を向けることができません。普段の生活の中で、自分はこんな人間だ、とか、今日の自分はこんなことができた、など、自分自身に向き合う機会ってなかなかないんですよね。

 ですが、もくもく掃除は「自分自身と対話すること」を通して成長していくシステムなので、自分自身と対話するという経験を子どもたちにさせることができます。

②褒めるポイントが増えて自己肯定感を高めることができる

 もくもく掃除を子どもたちが実行するのは簡単です。「黙って掃除をするだけ」で褒められるポイントになります。授業中、普段からおとなしい子も、マイペースな子も…もくもく掃除中は大活躍をしていることになります。

 授業中は努力している子を褒めることもありますが、やっぱり優秀な子に注目が集まりやすいですよね。おとなしい、自己主張のない子はなかなか注目が集まることもなく、自己肯定感や自己有用感が高まりづらいです。

 そういうコツコツ頑張る子を褒めることができるのが、もくもく掃除の大きなメリットです。

③静かになって掃除に集中できる

 騒がしい教室はそれだけで気が散ってしまい、掃除に集中できません。教員も一緒に掃除を手伝わないと、教室はきれいになりません。もくもく掃除は誰も喋らないから掃除に集中できます。教員だけではなく、当然子どもたちも集中することができ、掃除がはかどります。

④教室がきれいになる

 喋りながらわいわい掃除するより、静かに集中して掃除することで単純に教室がきれいになります。

もくもく掃除のデメリット

①掃除方法の指導がしづらい

 もくもく掃除は喋らずに行います。これは子供だけではなく、基本的には教師も同じルールです。教師は喋らずに掃除をすることになりますので、なるべく指導自体も少なくしていく必要があります。どうしても必要な指導や、褒める声掛けは喋って行いますが、それ以外は喋りません。なので、掃除の仕方、例えばほうきの使い方や雑巾の使い方、教室の掃除の手順など、基本的な掃除方法の指導はしづらくなってしまいます。

 そこで、掃除方法はもくもく掃除を導入するより前に、きっちりと指導しておく必要があります。掃除の手順を理解していない状態でもくもく掃除をしてしまうと、面倒なことになります。

②子どもとのコミュニケーションの量が減る

 掃除の時間を子どもとのコミュニケーションの時間と捉えている教員も多いようです。授業中に声掛けができなかった子とコミュニケーションができないのは大きなデメリットかもしれません。

 ですが、会話をすることはできないかもしれませんが、教師からよいフィードバック、つまり褒めたり認めたりすることはできます。そういう意味では双方向ではありませんが子どもに話しかけることができますので、そこまで大きな問題にならないと考えています。

指導方法

①前提として掃除方法を事前に指導しておく必要がある

 前述した通り、まずは掃除方法の指導はきっちりしておきましょう。教師が喋らなくても掃除ができるようにしておきましょう。

②もくもく掃除の意義を話す

 次に、もくもく掃除とはなにか、なぜ行うのか、どんなふうに行うのかという掃除方法について子どもに説明します。

 ここで、もくもく掃除の詳細をご紹介します。

「あなたの心には、3つの宝物があります。それは、がまん、親切、発見の力です。その3つの宝物は、今は磨かれていないので、まだピカピカになっていません。その3つの宝物を、掃除の時間にピカピカに磨きましょう。そうすることで、素敵な◯年生になることができます。」

「心の宝物をピカピカに磨く掃除を、もくもく掃除といいます。」

「もくもく掃除とは、しゃべらずに、静かに掃除することです。」

「しゃべる代わりに、心の中で自分とお話しましょう。今はちゃんとできているか、どんなことをがんばろうか、と。」

「もくもく掃除では、3つの心の宝物を磨きます。

まずは、第一段階の、がまんの心です。お友達が近くにいても、話さずに我慢します。めんどくさい掃除も、我慢して行います。そうすることで、あなたの心の中にがまんの力がつきます。がまんの心は一番大切な力です。喋りたくても、喋らずに我慢して掃除をしましょう。」

「第二段階は、親切の心です。お友達が重たい机を運ぼうとしていたら、さっと手伝いましょう。ゴミをたくさん集めたら、ちりとりを持ってきて協力しましょう。喋らずに、お友達が何をしてほしいかを考えて親切にすることで、あなたの心のなかに親切の力がつきます。」

「第三段階は、発見の心です。ゴミがあるところを一生懸命探してきれいにしましょう。まだ掃除をしていない場所を探して発見しましょう。そうすることで、発見の力がつきます。」

「先生は、みなさんの掃除の様子を見て、すごいな、素敵なだって思うことがあったら喋ります。こうしたほうがいいな、ということも喋りますが、先生も基本的には喋らずもくもくと掃除をします。掃除の時間は、教室だけではなく心を磨く15分です。今日から、もくもく掃除を頑張りましょう。」

③掃除中は褒めまくる

 掃除中は子どもが喋らずに掃除をしているだけで褒めるポイントになります。

「〇〇さん、がまんして掃除しているね」

「〇〇くん、ゴミを見つけたね。発見の心を磨いているね。」

 こんなふうに、教師で勝手に解釈して価値付けするところにこの掃除の重要ポイントがあります。

 通常の清掃指導でもし同じように心を育てる観点から声掛けをしようとしても、なかなかうまく行きません。もしゴミを一生懸命掃いている子がいたとしても、「一生懸命ゴミを集めているね」と事実しか伝えられません。

 でも、そこに「一生懸命ゴミを集めているね。発見しているね!」とか、「友達と協力して机を運んだね。親切な心を磨いているね!」などと言うことで…

 事実の指摘のみ

 事実の指摘→心を磨いているという内面の努力への評価

 という、子どもへのメッセージの伝わり方は全然変わってきます。教師の大切な役割の一つに、価値付けがあります。

 価値付けをすることで、子どもは教師が指し示す方に成長していきます。よい価値付けをするとよい方向に伸びますし、悪い価値付けをすると悪い方向に子どもは成長していきます。

 そういうわけで、もくもく掃除が強力なのは「子どもの良さを価値付けし、成長を促すことができる」ところです。

④振り返りを行う

 もくもく掃除が終わったら振り返りを行います。振り返りの方法は様々です。

・3つの段階についてよくできた項目を挙手させる

・振り返りカードに自己評価を書かせる

などなど。自己を振り返り、次どうするかの目標を絶えず意識させましょう。

⑤レベルアップをする

 もくもく掃除に慣れてきたら、レベルアップをしましょう。

「実は、もくもく掃除には更に上のレベルがあります。第四段階と第五段階です。みなさんのもくもく掃除はとても上手になってきたので、とてもむずかしいですがさらに上のレベルを教えます。」

「第四段階は、感謝です。いつも教室を使わせてくれてありがとう。感謝の気持ちを込めて掃除をしましょう。」

「第五段階、これが一番むずかしいです。第五段階は、正直です。先生のいるところでは静かに掃除をして、いないところではこっそりと喋ってしまう。このような表と裏を使い分けるのではなく、先生がいないところでも静かに掃除をする。そんな正直な人間になってほしいと思っています。」

「今までの段階と、第四、第五段階とでは全然違います。なぜなら、1〜3段階は、外から見てやっているかどうかが判断できるものですが、4,5段階では心の中のことなので外からは判断できないのです。つまり、感謝と正直の心は、自分にしかわからないということです。」

こんなふうに、レベルアップしてより難しくすることで、子どものマンネリ化を緩和し、目標をもって取り組むことができるようになるでしょう。

もくもく掃除を効果的に活用するポイント

学級通信で様子を伝える

 私は学級通信は必要ないと思っていますが、それでも学級通信でもくもく掃除の様子を記述すると、保護者はとっても喜びます。我が子の学校での素敵な姿を通信に書いてもらうとやっぱり嬉しいものです。

 私も若い頃はよくやっていました。今はやっていません。

担任が一番一生懸命掃除をする

 江戸時代の儒学者、細井平洲先生は、「率先垂範」という教えを伝えてくださいました。率先垂範とは、教員はじめ指導者が自ら進んで物事に取り組むことです。

 私達担任の先生が、もくもく掃除をばかにせず、率先して黙々と掃除に取組み、その姿を子どもに見せましょう。結局、これが一番効果的です。掃除の時間を宿題の丸付けや生活指導に当てるのではなく、子どもと一緒に掃除を一生懸命しましょう。それだけで担任の先生が話すもくもく掃除に説得力が出てきます。

 私は毎年、もくもく掃除を学級経営の中心に据えて、子どもたちの良さを伸ばす指導をしてきました。ぜひ皆さんも取り組んでみてほしいと思います。掃除の時間が嫌ではなくなり、子どもたちも進んで取り組む素敵な時間になるでしょう。

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