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かくれ巨人ファン

去年、中学校の同窓会で井上君と再会しました。

子供の頃、井上君と僕はお互い巨人ファンでよくいっしょに球場へ応援に行ったものです。

現在、井上君は奥さんの実家がある広島にある住んでいて、飲食店で働いているそうです。

僕が「カープファンだらけの中で、巨人を応援するのって、大変ちゃうんか?」と聞いたら、井上君は「うん。せやから俺、カープファンのフリしてんねん」と言いました。

僕が「フリ?」って言うと、「うん。かくれキリシタンみたいなもんや。同僚もお客さんもみんなカープ応援してんのに、オレだけ巨人を応援してたら、村八分にされるやんけ。せやから、オレ、あいつらの前では、熱心なカープファンを演じてんねん」と言いました。

井上君によると、みんなと一緒に巨人対カープ戦を観ている時、巨人に点が入ると、「あーあ」とみんなと一緒にガッカリしながらも、心の中では「やったーやったー!」と花火をボンボン打ち上げているそうです。

逆にカープに点が入ると、「やったやったー!」とみんなと一緒に喜びながらも、心の中では「クソが!」と、ガンバレルーヤのよしこのように叫んでいるそうです。

僕は同じ巨人ファンとして、彼の言動には首を傾げざるを得ないので、「そんなん巨人の選手にもカープの選手にも失礼やんか。正直に『オレ、本当は巨人ファンなんです』って言えや」と言ったんです。

そしたら、井上君。「そんなん今さら言えるかい!言うたら、オレ、路面電車の後ろにくくりつけられて、市中引き回しの刑にされるわな!」と叫びました。

僕が「されるわけないやん」と言うと、井上君は「お前、広島県民、めっちゃおそろしいんやぞ。『仁義なき戦い』を観てへんのか? 広島県民には、全員、菅原文太の血が流れとるんじゃけえのお」と、関西弁と広島弁をチャンポンした台詞で言い返しました。

その映画は未見だったので、家に帰った後、早速、動画で視聴しました。

まあとんでもないヤクザ映画で、「ひ、広島って、こんな怖え場所やったんかい!?」と、おしっこチビりそうになりました。

閑話休題。

さて、先日、井上君と電話で話す機会がありました。

お互いの近況を報告したあと、noteの企画のことを思い出した僕は、井上君に「もしどこにでも住めるとしたら、どこに住みたい?」と聞いてみました。

すると井上君は「そりゃあ、山口県の阿武町やで。あそこに住んでたら、4630万円が誤って、振り込まれるチャンスあるからなあ。ドリームジャンボやあ」と答えました。

やっぱり井上君は、市中引き回しの刑に処されるべきだと、強く思いました。


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