櫓を漕ぐ手2 ※他サイトありです

あらすじ 中世 火縄銃の時代 敵に捕まりガレー船を漕ぐ奴隷となった

騎士ヴァレッタ 長く続く使役の中で 見たものは 綺麗な天使の姿をした魔物の吟遊詩人だった

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

僅かばかりの休憩時間が済んで 私達は再び 終わることがない
ガレー船の奥底へ

永遠の囚われ人のごとくに・・

気を失いかけて 声がする
「あと・・少しですから 貴方には 大きな役割がある 信じてください」

「聖遺物 聖人の手(聖ヨハネの遺骨)が 騎士団にはある」

彼は静かにバレッタを見つめ
「あなた達は 彼の僕(しもべ) 同時に彼に祝福され 約束された者達」

「遥か昔 貧しき者 弱き民 巡礼者達の為に病院と宿の提供を始めた
ヨハネ修道院 そこから生まれたヨハネ騎士団」

「今は・・ロドスの騎士団」

ハッとすると 綺麗な面立ち 長い黒髪に異国の衣装を着た少年が立っている
背にはリュートの楽器
「もう少しですから・・」 私を見つめる その瞳は深い海のごとく 煌めいていた
あのアドリアの青い海のように

優しく 頬を撫でる手 天使のごとく 微笑んでいた

「・・ふふ 僕は天使では ありません 魔物ですから」「え?」
にっこりと微笑んだ後 別の男の首筋に牙を立て 男は小さな悲鳴をあげる

白昼夢 ただ一瞬の出来事

大きく息を吐き 私は再び櫓を握りしめ・・
すると・・
「ああ、 また死んだか?」

それは白昼夢の中で 少年の牙で 小さな悲鳴を上げた男だった
男には 首すじに小さな赤い穴の痕  牙をたてられた痕

そうして それから
ある時 地獄の終わりが前触れもなく やってきた

捕虜交換に 私が その一人として加わった

濡れたタオルで身体を清め 平民の服に着替えから
小舟にのせられる 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?