ナイルの箱庭 皇帝のコイン

前の話

続き・・

●悲哀の老皇帝の出会い

柱の向こうから男が現れたのだった。 
白髪交じりの髪に長い髭 古代ローマ時代の衣装

効果で豪華な金細工の飾りを身に纏っている畏怖堂々たる姿
「ここはテイヴォリでも 他の者が立ちいる事が許されない場所
何者だ?」
だが次には男は話ながら僕を見つめひどく驚いた顔をする。

アンテイオキア…
「アンテイノー‥」彼は僕を抱きしめる。

「‥いいや アンテノーが こんな子供であるはずがない
出会った頃は まだ子供だったが‥そう」

「だが、なんと よく似ている」涙が浮かんだ その瞳


●皇帝  ヴィラ・アドリアーナ

白髪交じりの髪に長い髭 古代ローマ時代の衣装

効果で豪華な金細工の飾りを身にまとってる
畏怖堂々たる姿

「ここはテイヴォリでも 他の者が立ちいる事が許されない場所
何者だ?」

男は話ながら僕を見つめひどく驚いた顔をする
アンテイオキア…
「アンテイノー・・」僕を抱きしめる

「・・いいや アンテノーが こんな子供であるはずがない
出会った頃は まだ子供だったが・・そう」

「だが・・なんと よく似てる・・」涙が浮かんだ その瞳

「珍しい異国の服装をしてる・・どこの国の使節の妻子かな?
心配はいらぬ 身内を探すから」

彼は微笑んだ。


●会話

美しい広大な庭園を歩き出す 
そうして 穏やかに静かに 互いに話を交わし合う

それから あのナイル川のワニのいるモニュメント近くの椅子に腰掛ける
懐かしい大切なものを見るように 見つめる瞳

とても切なげに‥寂しげに

誰かが走ってやって来た
「ハドリアヌス帝さま」
「うむ」やや固い表情をしてハドリアヌス帝は答え
皇帝の部下が僕をちらりと見た後で小さな声で話し出す 「実は‥」

「わかった すぐ参る」ハドリアヌス帝は厳しい顔をして、やって来た部下に告げた

「すまぬが ここで待つがよい」
彼からすれば小さな子供である僕の視線に合わせる為に
腰を下ろしてから 優しく見つめ、話し出す
「部下にそなたの身内を捜せる‥
それから、そこの者 この子になにか飲み物を」

「はい」どこからともなく女官らしき者が来て 彼女は答えた
僕に渡されたのは壺に入った 果実の飲み物 蜂蜜、ミントの葉入り

皇帝ハドリアヌス帝 彼は微笑んで立ち去り‥女官も何処かへと‥。
誰もいなくなった その場所に僕は椅子に腰掛ける。


●再び襲い来るワニの彫像

すると・・グオオ・・うなり声

ハッとすると 彫像のワニが 宙を浮いて 口を開き こちらへと
迫ってくるのだった。
「うわああ」僕は悲鳴をあげて 逃げ出す

ぐるぐると走り廻りそれから
足をとられ、倒れこむ それから暗転 視界が暗転したのだった。


●皇帝の銅貨

足をとられ、倒れこむ それから暗転
「大丈夫かい?」心配そうな従兄弟の声

「…」「倒れて 気を失ってたんだ?頭を打ってない?」

「…あれは夢?」ちゃりん
僕の服のポケットから 音がした 古い銅貨‥。
皇帝の顔が刻まれた 銅貨が一枚。

よく見れば‥その銅貨の横顔は あの初老の男の顔
切なげな瞳をした ハドリアヌス帝‥。

● 解き放たれた想い 亡き人を想うハドリアヌス帝

そうして 今もあの時の情景が目に浮かぶ
汽笛を鳴らして乗った汽車が走り始めた

涙を浮かべた古代の帝国の王者 皇帝の姿 ハドリアヌス帝
壮大な帝国を治め、旅して戦った帝

旅の途中で失った人 エジプトのナイル
大事な人を想った 居なくなった人を慕う気持ちは誰しも同じだまだ、第一次大戦がはじまる前の時間

人々が冷めやらぬ明るく賑やかな時代にいた頃だった。


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