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舌痛ふたたび

やー、寒い、冬です。
いつの間にやら、もう朝夕はコートが必要。
薄手の上着から一気にコートへ。
もう~…秋は~?秋あった~??と思いながら、仕方なくコートを羽織っています。

・・・

先週のこと。

すっかりおさまっていたと思っていた舌痛症が、この前の月曜日から再発。

最初に処方してもらったお薬(脳の興奮を鎮めるやつ)がとてもよく効いて、この2~3週間はまったく舌の痛みを感じずに過ごせていたのです。
痛みゼロの状態だったもんで、もう治ったかも~、よかった~なんてすっかり思ってしまっていた。

その月曜日は、朝からなんだか気持ちが重くて、へんだなと思った。自律神経が乱れている日のように身体も重く、何をしていても憂鬱。仕事は休みだけど、かといって家でじっとしているのはいかんと思い、少し歩いて海を見に行った。

20分ほど歩くとこんな感じです

わたしの住む街は、古い街と、新しい街(埋め立てエリア)とが両方混在していて、自宅はいわゆる古い街並みの残るエリアにあるが、新しい埋め立てのエリアまで歩いていけば広い海がみられるのだ。

夜の海

いつもは海を見ると心に新しい風が通ったような気持ちになる。だって、海は広いから、海の向こうから吹いてくる風が、体の中の空気を全て入れ替えてくれるみたいに思うのだ。
だから気分転換に、よく海を見に行く。
ひとりで行く。

でも、この日は海を見ても気持ちが晴れきらず、どんよりしたままだった。
だめだ。海もダメ。
うーん、ダメか、へんだぞ、と家に戻った。

そして夕方、そろそろバイオリンに行く支度をしなければと思っていたら、あれ?おかしいぞ?舌がピリピリする?
で、もう一気に舌に痛みがやってきたのだった。うそ!と思う。

たしかに、その前夜にストレスを受ける出来事があったことは自覚している。
嫌なことがあった。
嫌だなと思ったのに、言わずに我慢して、ぐぐっと胸のなかの漬物樽のなかに押し込んだ。

普段だったら寝たら忘れるくらいのちょっとした出来事だ。生きてればそんなことくらいよくありますよね。あなたの心の中にも「ちょっとした嫌なこと」を入れておくための漬物樽があるだろう。

それに、このことは、9月にあったあれこれの大事件くらべたらぜんぜん小さなこと。
ストレス用語で言うなれば、人生事件型ストレス(大事件)というよりただのデイリーハッスル(ささいなこと)である。

でも、たぶんそれが痛み再発のトリガーだったのだと思う。
いまの自分はまだそれっぽっちのストレスでも舌が痛くなってしまう。
いまは薬で「まあまあ…」と鎮めてるところであって、脳はしずかに興奮していらっしゃるのだ。そして虎視眈々と、痛みの司令を出す機会を伺っている。

治ったわけではなかったということにとてもがっかりしたし、再発したらどうしたらいいのかと精神的にも落ち込んだ。もう痛くならないと思っていたのに。

舌痛症というのは脳が「舌が痛い」という誤指示(謝った指令)を出している状態て、舌本体にはなんの病変もない。
だからいわゆる痛み止めが効かないんです。
ロキソニンを飲もうが、ボルタレンを飲もうが、痛みからは逃れられない。
そこがいちばん辛い。ずっと、逃れられない痛みがあるということ。くじけてしまうよね。

そこから今日までの一週間はなかなか大変でした。
再発に泣き、でもバイオリンレッスンにはちゃんと行った。舌が痛くても弾いた。とうとうE弦に突入しました。楽器を弾いているあいだだけは痛みを忘れられた。
朝起きてからずっと痛くても、仕事は休まずに行って働き、そして上品先生のところへは週に3度も通った。薬の調整のためにだ。
そしてとうとう上品先生の前で泣いてしまったりもした。

いつもはクールで微笑くらいしかたたえていない上品先生が、薬が効かず痛みが続いていることにめげて(絶望しかけて)私が泣いてしまうと、驚いたような顔をして、目を丸くしてティッシュをたくさん渡してくれた。
わたしは病院では極力話が長くならないよう、つとめて冷静にコンパクトに状況をまとめて報告するようにしていたから、取り乱して泣くなんてあんまりなかったのだ。
上品先生はわたしのほうにぐるっとしっかりむきなおり、前かがみになって、

「この薬を調整してもまだ痛かったなら、ちゃんと次の手立ても考えてあります。だから思い詰めなくて大丈夫なんですよ」

と、いままで見たことのないくらいにっこりとした笑顔で励ましてくれた。
クールな上品先生がそんなことを言ってくれるなんてびっくりしたし、その優しい言葉でまた泣いてしまった。

その安心効果もあってか、次の日からは痛みがだいぶ引いて、いま、わりと静かな状態。
たまにピリッと痛みが来るけど、頓服薬を飲んで凌げている。

やっぱり、舌痛症というのはストレスや気持ちや心と密接に関係している神経症なのだろう。
でも、生きてる限りはストレスを感じずに生きることなんてできないし、困ったものだな。

それでもわたしはこの病気についてネット検索は絶対にしないし(一度もしていない)、同じ病気の人と情報交換をしたいとも今は思っていない。情報を知りたい気持ちはない。
なんでかっていうと、わたしは、こと病気に関してはネガティブな情報の影響を受けてしまう性質で、良くない情報を目にすると「そうなんだ!!」とショックを受けちゃうんです。そして、自分もそうなるに違いないと思い込む。呪いをかけてしまう。

以前、ちょっと難しくて珍しい目の病気(mewds・多発消失性白点症候群)になったときも、2~3ヶ月ですっかり治ったという人、一年経っても治らないという人、視野が戻らない人、結局は経過も結果もそれぞれなのにその情報に振り回されて心を持ち崩してしまった。

だから、上品先生のいう「大丈夫ですよ」だけをしっかりと心に留めて、ちゃんと治る、と思って日々をなるべく穏やかに過ごそうと思ってるわけです。せめて、心だけは平穏にね。

人の身体には基本的に元に戻ろうとする仕組みがある。恒常性を保とうとする力がある。ホメオスタシスっていうやつだったかな。
獣医をやっている夫も、「痛みはおさまっていくものだから大丈夫」と言う。だからそう思うことにしている。

・・・

舌痛症ふたたびでちょっと落ち込んでいたから、こんなのを買ってしまった。

すんごいかわいい。
わたしは犬が好きなんである。
この人の絵は、犬が好きな人の描く絵だと思う。

あと、これも見てくれますか。

にこにこペキニーズ。

ペキニーズのにこにこぶりをこんなに表現できている!

犬って本当にかわいいよな~。
犬がさわりたい。モフモフっとした子をね。
夫が犬の皮膚アレルギーのため自宅で一緒に暮らすことができず、本当にくちおしい。

・・・

今日はバイオリンレッスンだった。
レッスンが終わって楽器を片付けている帰り際、キャプテンに「あのー、そのー、弦を押さえてふるふるっとゆらすやつのことなんですが……」とおそるおそる話しかけると、「ビブラートのことですか?」と元気ににっこりと答えてくださる。

「はい。それも、そのうち練習するんでしょうか」
「教本ではもっと先になりますが……。え?やりたいですか?」
「実は、なんていうか憧れがありまして……自分でYouTubeの解説動画を見てちょっと試して見たりしたんですが、ぜんぜん無理でした。笑」
「それなら、次回、ビブラートやりましょう!!」

ええー!!!
やれるの!?

「今日でもう全ての弦をおさえられるようになりましたしね。やれますよ。次、ビブラートやってみましょうっ」

と、笑顔のキャプテン。

舌が痛くてもなんとか頑張ってレッスンへ通い続けていたご褒美だろうか。
うれしい。憧れの楽器の、憧れのビブラートに挑戦。