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憧れの楽器④

↓前回までのあらすじ↓

さて、ヴァイオリン話の続きである。

「なにか新しいことを始めたい」と思い立ち、音楽教室の体験レッスンの門を叩いたわたしは、速攻でその教室に入会してしまったのでした。

だが自分の楽器がない。
初回レッスン前に、教室のお姉さんから「楽器はどうされます?」と笑顔で尋ねられてハッとした。
楽器をどうするかなんて何も考えずに入会しちゃったんですね。我ながら思いつきで動きすぎである。

どうやって楽器を入手するか?
購入か、レンタルか?の二択になるらしい。
レンタルというのは、教室で行っている月額制のもので、月いくら、と支払うのだが、一年半くらいレンタルし続けると購入扱いで自分の楽器になるんだそう。
月賦で買ってるようなものなのですね。

キャプテン(先生)やスクールのお姉さんにも相談して、まずは入門用のヴァイオリンをレンタルしてみることにした。

実はわたしは割と高めの国産のマンドリンを所持していて、いま思えば高めの楽器にしておいてよかったとよく思うのである。

大学時代にマンドリンを弾き始め、ある程度弾けるようになってから楽器を購入した。
ドイツ松とメープルで丁寧に手作りされていて、楽器のボールの内側に製作年、製作者、わたしの名前が筆文字で記されている。
当時は「めちゃめちゃ高いな」と思いながら購入したし、実はいまだに自分の所有物のなかでもっとも高価なものである。(首位独走)
とある祝いごとを自粛する代わりに資金を援助して欲しいと親に頼みたおし、自分のバイト代も合わせて買ったと思う。

その後、社会人アンサンブルで10年以上も演奏を続けていくなかで、やはりこの楽器にしておいて良かったな、と何度も思った。年を重ねて使い続けるとき、音色がやはり違うのである。良い楽器は使えば使うほど深みが増し、自分に馴染み、相棒のようになっていく。

だからヴァイオリンも、もし買うならそれなりに良いものを選びたいなと思う。
でも、なにしろまだまだわたしは初心者の初心者すぎて、弾く技術も知識もないし、いま購入するのは勇気が必要すぎる。
というわけで、とりあえずレンタルで様子見をしようと思った、という訳です。

レンタルヴァイオリンは6月から手元にやってくるので、楽しみにしているところ。
(それまでは、レッスン時のみ教室の備品の楽器を使います)

・・・

さて先日は2回目のレッスンだった。
夜、シーフードカレーをこしらえてから雨の中傘をさして教室に向かう。
わたしは傘をさすのが下手なので、いつもスカートの背面がびしょびしょである。

今回は開放弦だけではなく1、2、3の指も使って音を出す。
難しくなってきた。
「綺麗な音を出すのが難しい」という、すごくシンプルな問題にぶつかる。
自分でも、綺麗な音が出せたときと、そうでないときの差がわかり「うっ」と思う。

くそまじめ人間と化しているわたしは、キャプテン(先生)に「なんか音が変ですよね…」と何度も相談。
キャプテンは、相変わらずのディズニー的笑顔で、胸を張って楽器を上に向けることや、楽器と弓の角度について気をつける点など細かく検討してくださる。

それでもなおギィィ~……と、自分でも笑ってしまうくらいの悪魔の断末魔のような音を出してしまったとき、

「もしかしたら、原因が分かりました」

とキャプテン。

「弓を持つ手の親指に力が入っていて、弓がななめに傾いてしまっています」

弓は弦に対して直角に、そして斜めにならずに、脱力してスーッと引くのが大切とのこと。

右手はこう、左手はこう、姿勢はこう、とそれぞれ気をつけることがあり、いっぺんに全てを実践しようとしたら脳がパニック。
ひとりで「ツイスター」ゲームをやってるような感じになって笑えた。(「ツイスター」やったことないけど)

まだ、ばらばらである。
ばらばらがひとつになると、もっと綺麗な音が出てくるのだろう。

キャプテンに「では来週はこの続きから」と言われ、終わり!?まだ5分くらいしか経ってなくない!?とまたも思う。
必死すぎてあっという間だ。
暑くもないのに汗だくです。

また雨の中を、傘をさして帰る。
難しいけどたのしい。難しいからたのしい。
変な音を出してしまうという、そのことすらなんだか面白くて爽快だ。

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