観た『サイバーパンク：エッジランナーズ』
ゲーム『サイバーパンク2077』を題材としたNetflixオリジナルアニメメーション『サイバーパンク：エッジランナーズ』を観ました。
ネタバレしません。
Netflix公開当初から「なぜこのクオリティでニンジャスレイヤーをやらなかったのか」と言われ話題にもなった本作。
「やっぱりNetflixはお金をじゃぶじゃぶ使ってくれるので良い作品ができあがる」「サイバーパンク世界を表した名作」と言った声も見かけました。
しかし、そういった制作側の都合や原本のディープな世界観などを抜きにしても1個作品として『サイバーパンク：エッジランナーズ』は素晴らしい作品だった、と僕は思う。
原作を知らなくても楽しめる
本作の特徴はなんといってもゲーム『サイバーパンク2077』未プレイでも十分に楽しめるということ。クロスオーバー作品、他の作品紹介サイトではスピンオフ作品とも銘打たれている本作。クロスオーバー・スピンオフなんて風に言われると原作ストーリーを知らない人はたじろんでしまうかもしれないけれど、原作未プレイでもまったく問題ない。アニメ、ゲームの舞台になった「ナイトシティ」と呼ばれる都市が出てくること、そしてSFな世界設定が継承されているということぐらい。「原作を知っているとニヤリとするシーンが」というお決まりの紹介文がピッタリな作品だ。
「原作を知らないのにアニメを見るのは……」というコアなオタクは安心していい。むしろ、アニメの影響でゲームをプレイして、原作ゲームのゴリゴリな三次元モデルと、デフォルメ増しましの二次元モデルとの差に困惑しないように。
オープニング
個人的にアニメOPは作品とは別個のモノ（映像作品）だと思っていて、カッコよくてスキップボタンの存在を忘れてしまうぐらいがちょうどいいとさえ思っている。これはエンディングについても同じで、物語の余韻を削ぐことさえしなければ脳髄に焼きが入るぐらいめちゃくちゃやってほしい。書いていて思ったのだけど、これって平成的な考え方だったりするのだろうか。涼宮ハルヒの憂鬱、らきすた、かんなぎ、ガンソード、カウボーイビバップ……。
SFだけど難しくない
「サイバーパンク」という言葉を聞いてなにを連想するだろうか。
ニューロマンサー、ブレードランナー、攻殻機動隊、銃夢……。どれもこれも難解な印象がある（実際難しい）。政治思想や哲学、人間が生きる意味や死生観についてなど、色鮮やかで想像の余地をすり抜けていく近未来の超技術は一目見ただけでは理解できない。
しかし、今作『サイバーパンク：エッジランナーズ』はやはりそういった難解な台詞回しや飲み込みにくい展開などを排除して、限りなく大衆に向けた娯楽作品として存在する。そもそもアニメが大衆向けに作られた映像作品であるという指摘はいまは聞きません。
正直、ニッチな作品大好きなオタクとしては「これは大衆向け作品です」などと定義付けするのは悪徳そのものだが、この作品を形容するにもっともふさわしい言葉はこれだと思う。
王道なストーリー
『サイバーパンク：エッジランナーズ』一見すると視聴者を厳選する要素が多くある（原作がゲーム、SF作品、Netflix独占配信、近年アニメ作品において奇抜すぎる髪型の男性主人公）。
しかし蓋を開けてみると、その内容は極めて王道な物語だ。
夢もなく未来への指標もない10代の道すがらの少年、学び舎に居場所はなく貧富の差から虐げられる。不幸な事故からの親族の死去。身に降りかかる災厄を乗り越えるため未知の力を自身の身体に取り込む。乗り越えた先の世界、「サイバーパンク」になることで、かつての世界では手に入れることのできなかった仲間と居場所を手に入れる。
心身ともに未成熟な少年が苦難と直面し、想像を凌駕する力を手に入れて活路を開く、紛れもない王道だ。
主人公は常にひたむきで、仄暗さや湿っぽさはない。美少女ヒロインとのロマンスも爽やかだ。鮮やかであるがどこか機械油の汚れが付着したような街並みとは裏腹に登場キャラクターたちの心情や行動は真っ直ぐだ。
SFは難解、というイメージは根強い。けれどそのイメージでこの作品を忌避しているのならそれは間違っている。まず観るべきだ、これは大勢の人に向けた娯楽作品だ。
でも詳しい説明を求められたら悲劇の話なんだよね
そう……だけど、すごい爽やかだし。納得のいく終わり方をしているので、悲劇的な終わり方をするよ！ というネタバレを喰らっても観てほしい。
どんな作品もラストの展開というのは人を選ぶ物だけど、全10話という話数であのクライマックスを迎えたという事実が、如何にこの作品の完成度が高いかを示している。結末に思うところがあっても道中で観てきたものを思い起こせば納得できるほどの完成度が『サイバーパンク：エッジランナーズ』にはある。
それでは僕は4周目に入るので失礼します……。
寿命が伸びます