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砂の大地と黒い日々

 孤独の形、よく耳にするのは砂漠です。太陽のない砂漠。太陽にさらされて光り輝く黄土色、緩やかに隆起した地形が延々と続く、いけども行けども砂の大地。苦にならぬ寂しさが一面広がっている。太陽はない。あるように思えるけど太陽が存在しているかのような明るさだけが存在する。暑くはない。私たちは心理風景をとらえるとき、度々気温のことを忘れてしまう。
 私の孤独はいつも暗い通路にある。暗くて狭くて短い通路。明かりがなくて暗いのに通路になにもないことがはっきりと見える。短い通路の先には安っぽい扉があって、触ったこともないのにドアノブがすごく冷たいことがわかる。両手を広げられないほど横幅は狭い、だけど縦幅はそこそこ広い。誰かに質問するみたいに手を上げてみる。天井には電球もなにもない。色のわからない天井が空間に蓋している。
 私は裸足で通路に立っていて、足元はひんやりしている。隙間風はなくて自分の足が冷たいのか、地面が冷たいのかわからない。背中には人工的な光で照らされていて、私の背中だけが局地的に照らされている。通路は暗いまま。聞き覚えのあるようなないような声が時々して聞き耳を立てるけど、それが気の所為だったのかもわからない。私の孤独はそういう形をしている。
 私は孤独な場所で1人、音楽を聴いたり、文章を書いたり、片足を上げて踊ったりしている。音楽を聴くときは壁に頭をもたれかかせ、文章を書くときは照らされた背中を地面に押し当てる。踊るときはその場でくるくる回っている。通路が狭いので仕方ない。
 いつからこの形になったのかはわからない。最初は海だったような気がするし電車の中だったような気もする。孤独は、満たすもののために形を変化させる。花瓶がいい。いつか粉々になって道路の破片になりたい。

寿命が伸びます