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ハルデン刑務所 ノルウェー

「世界で最高に豪華な刑務所」というドキュメンタリーを見た。

英国の元刑務所大臣(Minister of State for Prisons)のアン・ノーリーン・ウィデコムがノルウェーのハルデン刑務所を訪れる。
ハルデン刑務所は、世界で一番人道的な刑務所と言われている。

刑務所とは思えない施設


2011年に建設された。塀には有刺鉄線や電気柵などもなく、部屋の窓に鉄格子もない。収容されているのは、凶悪な犯罪を犯した受刑者である。

なるべく普通の環境に近づける試みをしている。職業訓練には、最善の環境と道具を提供し、生活もなるべく快適さを追求する。

監房は、バスルーム完備で明るい。窓からは、緑も見える。図書室や休憩室もある。食事は提供されるが、刑務所内のスーパーで購入した食品で自分で料理もできる。

番組の中では、ラップを歌う受刑者がレコーディングスタジオで録音している風景も写っていた。

週末には、家族や恋人と個室で過ごせる設備もある。

広々とした施設と、自然が豊かな敷地は、とても刑務所に見えない。

アン元刑務所大臣の疑問はもっともだ。
「この刑務所にいたら、また犯罪を起こして戻ってきたいと思うんじゃないか」
「どうやって囚人の反乱や暴行を防ぐのか」
「脱走はないのか」

番組を見ていると、刑務官は制服を着ているので、区別できるが、囚人は普通の服を着ているので、そのほかの人の区別がつかない。

刑務所の役割とは


ノルウェーには、死刑も終身刑もないということだ。
囚人は、いずれか釈放される。その時に、また犯罪を犯すような人として釈放してほしいだろうか。

家族が被害者になったとしたら、どうだろうか。犯罪者を罰してほしいと思うだろう。しかし、残りの人生を狭い監獄の中で、過酷な環境で生きてほしい。釈放されても、社会に受け入れられずに孤独の中で生きてほしいと思うだろうか。

同じような犠牲者が出ないように望むのではないかな。

刑務所の役割は、罪の償いか、更生施設なのか?

犯罪を犯すには、それなりの人生と背景があっただろう。ハルデン刑務所は、その人生を振り返りつつ、釈放後は社会の中で役割を見つけて生きる道を探すための刑務所である。

「Humankind 希望の歴史 下 人類が善き未来をつくるための18章」の中にもノルウェーの刑務所が紹介されている。

アメリカでは、受刑者の60パーセントが2年以内に刑務所に戻るが、ノルウェーではその数字は20パーセントだ。

Humankind 希望の歴史 下 人類が善き未来をつくるための18章
157ページ


一方でこの豪華な刑務所にかかる費用については、

・・・彼らの計算によると、ノルウェーの受刑者の収容にかかる費用は、有罪判決一件当たり平均6万151ドルでアメリカのほぼ2倍だ。しかし、これらの前科者がふたたび犯罪に走ることが少ないので、ノルウェーの法執行機関の出費は、一人あたり7万1226ドル節約できる。また、彼らの多くは働き口を見つけ、政府の支援を必要とせず、税金を支払うため、さらに平均で6万7086ドルの節約になる。

Humankind 希望の歴史 下 人類が善き未来をつくるための18章 157ページ

私は、この番組をみて、ノルウェーという国に興味がわいてきた。この刑務所を作る背景にはどのような考え方があるのだろう。

一人一人の人を大事にしようとする文化があるのだろう。たとえ、凶悪な罪を犯したとしても、罪を償い、社会に再び参加しようとする人を迎え入れる社会なのだろうか。排除するのではなく、受け入れるために知恵を使い、試みようという柔軟性があるのではないだろうか。

英国の元刑務所大臣のアンさんも、鋭い目で囚人たちをみつめ、批判的な態度であったが、最後に、この刑務所には学ぶことがあると語っていた。

BBCの記事
「犯罪者を良き隣人へと変えるノルウェーの方法」

https://www.bbc.com/news/stories-48885846




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