「吹上奇譚 第3章 ざしきわらし」長考中!!

吉本ばななさんの最新作です。千葉県の架空の街吹上で暮らすミミとその家族やあるいは半妖半人?な人々の日々、あの世とこの世の真ん中な、でも作り話って受け流せない、ばななさんワールドが炸裂した一冊です。

読んでいると、(原マスミさんの表紙のせいかもしれませんが)フォークロアの丹念な刺繍や織物のような感じがしました。

丁寧で深くてきちんとその作品に相応しい技術と力加減で編まれているなにかをずっと撫でていくような心地よさ、楽しさ。惜しみなく大切な知識をシェアし、物語に織り込みながら説教臭くなく吹上をさまよっているような感じで知らせられる面白さ。

特に60ページの、愛する人と暮らす極意だなあと自分では思ってるんですけど、「つかず、離れず〜」の一文は暗記するほど心に刺さりました。私は家族が楽しそうだと嬉しいし、落ち込んでると心配しちゃうし、機嫌が悪いと腫れ物に触るみたくビクビクしちゃうんだけど、全く逆なその極み。忘れずに大切にしたい言葉を教えてもらった思いです。

占った未来が変容するところ、今まであまり親しくなかった知り合いと仲が深まるところがなんとも言えずよくて、誰かの創作物なんて思えない吹上町の人々が生きてるんです。メロンのTシャツのところなんてクライマックスなのに「なんだよー、作者、事件起こすなよー」ってわけわかんない気持ちになっちゃう。

五部作の真ん中三部作とあってスリリングなストーリーの前作よりも、なだらかにサラッと読めてしまいました。特にラストは、「お、お、終わっちゃうのお!?」となりました。

後書きによると、次回作はもっとなだらかな感じらしい。全く想像つかん!でも一番好きで一番偉大なシリーズだと思う。

個人的には安野モヨコさんの作品の最強が「鼻下長紳士回顧録」だと思ってるんだけど、そのくらい!(どのくらい?)その作家さんの旗みたいな記念碑みたいなすごい何かだからいろんな方に読んで欲しいなと思った次第です。

あ、ただこのシリーズ、一冊だけ読むより順番に把握しながら読んだ方がいいと思う。今作に前作、前々作でクローズアップされた人がチラッと出てても前提が思い出せなくてね。。モヤモヤしちゃったよ。テヘヘ。

そんな訳で秋の夜長に、吹上奇譚シリーズぜひぜひ推させていただく次第です。


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