オンナの哲学 -トラウマその1
私が哲学するようになったきっかけのひとつ。
トラウマのひとつについて綴ろうと思う。
数ある中で、まだマシなものを。
学生の頃の彼。
同じ大学で、ごくありふれた出会いで、軽い気持ちで付き合い始めた。
すぐに私たちは、公認の仲良しカップルになった。
彼の、ストレートな愛情表現がとても心地よかった。
言葉でも態度でも、常に私を好きだと言ってくれていた。それを周りの友達に対しても、見せつけるかのように言っていた。
私はそんな彼が好きだった。彼という人間を好きだったというよりは、私をそんなにも好きだと言ってくれる彼のことが好きだった。今思えば。
色々あって2年半ほど経ったある時。
今はもう、細かいいきさつは覚えていないけれど、私たちは別れた。
彼は、私がグチを言ったり弱音を吐くことをとても嫌がった。いつもあからさまに顔をしかめて、「そんな話は聞きたくない」と言った。
別れの時の電話でも、私が仕事を辞めようと思っていると話したのに対し「俺は働かない奴は嫌いなんだ!」と怒鳴って一方的に電話を切った。
私が彼との別れを決めた理由。
それは、“ありのままの私を愛してくれる人ではなかった”から。
彼にとって私は、いわゆる“トロフィーワイフ”だったのだ。
私は当時、部活動でいい実績を残した優秀な選手であり、学生自治会の役員も務めていて、きれいなお姉さんと言われそこそこ人気があった。
私が“私のことを好きな彼”のことが好きだったように、彼も私という人間ではなく、“周りに羨ましがられる彼女”である私のことが好きだったのだ。
別れた後、彼に対する気持ちは自分でも驚くほどすぐに消えた。
でも“ありのままの自分は愛されない”という傷だけは、根深く残った。
いつも前向きで物分かりよくいなければならない。男が連れて歩きたいと思うような見た目で、仕事もできるいい女でなければいけない。私と付き合うことをステータスに感じてもらえるような自分であらなければならない。だって、そんな私でなければ誰にも愛されないから。無意識にそう思い込んでいた。長い間気づかないほどの無意識下で、とても強く。
でも、それ以来男と真面目に付き合うことは無かった。
「30才までは遊ぼう」とバカな決意をして次々と相手をを変えていた。
と言ってもこの彼以前にも真剣交際をしたことはほとんど無かったので、彼との“大実験”が失敗して元に戻った、というだけのことだったのかもしれないけれど・・。
自分の本当の気持ちを押し殺したまま、文字通り殺し続けて、私は何とか生き永らえてきたのだ。15年ほど前、生き方を見直そうと決めるまでは。
その頃には、私は自分で自分の感情を感じられなくなっていたけれど。
その、殺し続けてきた気持ちたちの話は、また別の機会に。
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